本記事は「膨張するソフトバンクの中核にある思想とは？　意外と知らないソフトバンクの歩み」の続きです。

ソフトバンクを支える風土──垣根のないフラットな組織と挙手制度、成果の見える化

　杉田 弘明氏（以下、杉田氏）■われわれの企業風土をまとめると「挙手制度」「成果の見える化」「垣根のない組織」という3つの特色が挙げられると思います。「ソフトバンクイノベンチャー」と呼ばれる社員からユニークなアイデアを募り、優秀な案を事業化する試みも進めています。また後継者の育成も重要な課題です。ソフトバンクアカデミアでは、後継者を目指す300名もの人材による「知の総合格闘技」が行われています。

──一般的に大企業では、どうしてもトップと現場の断絶が起きてしまい、風通しが悪くなりがちですが。

　杉田氏■われわれは、トップと現場の垣根をなくし、社員の意見を広く取り入れられる社風を心がけてきました。実際に営業・マーケティングに関する意思決定を行う会議においても、営業・マーケティング部門はもちろんのこと商品開発、システム、財務部門まで同席の上で、部門を越えたミーティングが行われています。このように全社員の情熱が会社の成長を支えているのです。

「No1」「挑戦」「逆算」「スピード」「執念」に裏打ちされた「努力って＝楽しい」というバリュー

──大企業になったとはいえ、創業当時のベンチャースピリッツも、今なお脈々と受け継がれているようですね。

　杉田氏■それはブランドに対する考え方にも表れていると思います。たとえば2004年に企業ブランドのロゴを2本の“＝”（イコール）マークに変えました。これはデザインもさることながら、社長の孫が坂本龍馬を敬愛しており、その龍馬が設立した日本初の商社とも言われる海援隊の旗をモチーフにし、その志（こころざし）を受け継ごうとしたものです。

　ソフトバンクは同志の船です。その志に共感する人たちが一丸となって激動の時代を疾走し、“平成の海援隊”として「情報革命で人々を幸せにしたい」「30年、300年先の世界の人々が感嘆するような仕事をしたい」という強い願いが込められているのです。

──このような志がベースにあり、社員の行動指針や心構えになっていると？

　杉田氏■はい、それこそがわれわれのバリューとなっています。目標を達成することは辛いですし、本当に大変です。しかし努力なしでは、何ひとつ成しえることはできませんし、逆境や壁、無理難題を乗り越えた先には、達成感やお客さまの笑顔、人々の幸せがある。そのための努力であれば楽しいのではないでしょうか。その努力を楽しむことこそが、ソフトバンクのバリューであり、「努力って、楽しい。」ということなのです。


　そして、このコアバリューとして5つの要素を掲げています。まず、やる以上は「No.1」になること。ボーダフォンのときも、万年業界3位だった企業を純増トップまで引き上げてきました。そして「挑戦」すること。失敗を恐れずに高い壁に挑み続ける姿勢が大事です。「打席に立ったら、とにかくバットを振ろう！　ダメでも、また次の回がある。カーブで空振りしたら、今度はストレートを待ってヒットにつなげよう」──そういう挑戦を何度も繰り返していくということです。

　「逆算」も大切です。仕事を行う際には、目標を見据えて1カ月後にすべきこと、2週間後にすべきこと、その上で今すべきこと、というようにゴールから逆算してプランを決めていく必要があります。そして「スピード」は価値につながります。早いアクションを起せれば、早い成果、早い次のアクションを生み出せます。最後に「執念」を持つこと。脳がちぎれるほど考えに考え抜いて、「難しい」「できない」と思うよりも「どうやってできるか」を常に考えとにかくやり抜くことです。われわれは、そのような志の高い人に仲間になって欲しいと考えています。

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