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  • 2016/04/28 掲載

ソフトバンク人材開発の秘密は、個性、才能、学びを引き出す「知恵マルシェ」にあった

連載:ソフトバンク人材開発の秘密 vol.8

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ソフトバンクグループが社員発信型の学びの場として提供する「知恵マルシェ」。一般の社員が「講師」ではなく「主催者」として社員を集め、社員同士が自分の知識やスキルを共有し合う仕組みだ。2013年7月から約2年半で、開催回数はおよそ140。研修とは異なり、業務外のいわゆる部活動だ。スキルの共有だけでなく、コミュニティ醸成にもつながるという。ソフトバンク 人事本部 伊藤 繭香氏、荒木 舞美氏にソフトバンク流人材育成の秘密「知恵マルシェ」の概要を聞いた。
(聞き手/構成:編集部 佐藤友理)

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ソフトバンクの多様性に眠る才能を発掘し、学びに変える

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ソフトバンク 人事本部
採用・人材開発統括部 人材開発部
伊藤 繭香氏
──ご自身の所属や業務について教えてください。

伊藤氏:私はソフトバンク人事本部 採用・人材開発統括部 人材開発部に所属しています。知恵マルシェには企画段階から携わっており、誕生からいままで知恵マルシェを見守ってきました。

荒木氏:私も同じ部署に所属し、知恵マルシェの企画、推進を担当しています。

──お2人が担当されている知恵マルシェについて、簡単に教えていただけますか?

荒木氏:知恵マルシェは、一般の社員が「教え」、一般の社員が「学ぶ」ことを通して社員同士で学び合う、気軽でカジュアルな学びの場です。「学び合う」ことに主眼を置いているので、知恵マルシェで知識をシェアする社員は「講師」ではなく「主催者」、知識を学ぶ側は「受講者」ではなく「参加者」と呼ばれます。

 開始したのは2013年7月で、始まってから2年半余りが経ちました。これまでの開催回数は140ほどで、開催ペースは週1回程度です。業務の一環としての「研修」ではなく、あくまで業務外の「部活動」のようなものです。業務ではないため、主催するにも参加するにも上長の許可はいりません。当人の気持ち1つで知識をシェアしたり、知識を吸収したりできる、一貫して「自由」な学びの場です。

──社員同士が知識や知恵をシェアする、という発想はどこから生まれたのでしょうか?

伊藤氏:当時、ソフトバンクユニバーシティ(経営理念の実現に貢献する人材育成を目的とするソフトバンクグループ内の教育機関)の方向性などを検討しているときに「学びのスタイルは1つなのか」「新しい学びのスタイルを考えられないか」という問いに直面しました。そして、「今までのソフトバンクにはない新しい学び」というキーワードを起点にアイデアを広げていきました。

 そのときに、「ソフトバンク社員の多様性を活かせないか」という話になりました。ソフトバンクには約1万8,000人の社員がいます。また、ソフトバンクグループの社員数は連結約6万6,000人にものぼります。これだけ社員がいれば、いろいろなバックグラウンドを持つ人がいます。その中には、さまざまなスキル、知識を持っている人がきっと眠っているでしょう。人材は宝ですから、そこを発掘する手段はないのか、学びに変えていくことはできないかと考えました。そこから知恵の共有、シェアということで知恵マルシェの構想がまとまりました。

社員が自分の才能を発見し、コミュニティを作る「知恵マルシェ」

──「気軽でカジュアルな学び」がキーワードの知恵マルシェですが、主催することは「気軽に」できるのでしょうか?

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ソフトバンク 人事本部
採用・人材開発統括部 人材開発部
荒木 舞美氏
荒木氏:もちろんです。主催までの流れも「カジュアル」です。知恵マルシェを主催したい社員は応募フォームを使用して応募します。人材開発部では「ニーズのあるテーマか」「業務につながるコンテンツか」等、応募した社員と内容を確認しながら開催を決めていきます。また、社員自らの応募だけでなく、こちらからのスカウトも積極的に行っています。

 知恵マルシェ1回の開催につき人材開発部から最低1人の知恵マルシェ担当者を付け、主催者と事前に打ち合わせをし、内容をブラッシュアップしてから実施するというフローになっています。そのため、人前で話すことが苦手な人や、「知識をシェアしたいけど何をすればいいのかわからない」という社員も、安心して知恵マルシェを主催できます。

 基本的にソフトバンクグループのイントラネットで参加者を募集し、知恵マルシェ実施後は活動レポートを同じくイントラネットにアップします。知恵マルシェ開催当日、知恵マルシェスタッフは写真を撮影したり、活動レポートを書いたりすることで主催者をサポートします。

──「社員同士で知識を共有する」というのは、非常に面白い試みですが、知恵マルシェの狙い、ゴールはどういうところに置いているのでしょうか。

荒木氏:基本的に2つあります。1つ目は互いに学び合う風土を醸成することです。主催者も参加者も、社員同士が学び合うというのが大きなポイントです。もう1つは社員同士のネットワーク作りです。これだけ会社が大きいと、同じ会社の社員といっても知らない人が大勢いますからね。知恵マルシェを通してコミュニティができ、社内に部活ができるといった動きもあります。

伊藤氏:コミュニティの醸成は、もともとは実現したらうれしいくらいのもので、具体的に狙っていくゴールではありませんでした。実際、プロジェクト化のときに設定していたマイルストーンは、「1年目は知恵マルシェを軌道に乗せる」、「2年目は『知恵マルシェ』という言葉が社内でポロポロ聞こえる状態にする」、「3年目は具体的に知恵マルシェという言葉が会話に出てくる状態にする」というものでした。いま3年目を迎え、まさに立ち上げ当初に描いた通りの状況になっています。

 また、これはゴールとは違うのですが、社員が自分にしかできないこと、自分の才能、自分の知識が他の社員の役に立つことに気づくきっかけを提供する、というのも知恵マルシェの重要な意義です。たとえば「研修の講師になる」となるとハードルが高いですが、知恵マルシェならできる、と思う人は多いでしょう。「誰にでもチャンスがある」というメッセージを言葉だけではなく、「知恵マルシェ」で打ち出すことには大きな意味と価値があると思います

──先ほど、「ネットワークづくり」が知恵マルシェのゴールの1つで、実際に部活動もできた、とおっしゃっていました。これまでにできた部活などを具体的にお教えください。

荒木氏:いままでの例としては、「Pepper部」があります。Pepperが好きな社員が知恵マルシェで出会い、クラブを作ってしまったのです。外部のアプリ開発コンテストにも出場しました。他にも、中小企業診断士の資格を持つ方が知恵マルシェを開催したところ、グループ内の診断士や、診断士を目指す人が集まって「SB診断士」という会を作りました。また、「統計部」もあります。元アナリストの方が統計に関する知恵マルシェを開催し、参加者で定期的に集まって、統計をテーマに語り合ったり、勉強したりしているそうです。

【次ページ】ソフトバンクの人材育成は他社と協力するのか
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