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NHKが行った「食生活に関する世論調査」(2016年)では、出来合いの弁当や総菜の摂取頻度に対し、食べることが「よくある」が17%、「ある」が47%、と料理離れが進んでいる結果となった。消費者の料理離れが進めば、食品流通業界に影響が出る。大手食品卸のプロモーションアドバイザーで家庭料理研究家の冨士田かおりさんは「食品流通業界で抜きんでたプロモーションをするためには、食品のことをもっと知ることから始めなければならないでしょう」と話す。
食品流通業界の隠れた問題点
冨士田さんはプロモーションを手掛ける展示会で、顧客であるスーパーマーケットの担当者向けに「オリジナルの試食販売」を勧めるためのメニューの提案を行っている。
「メニューの提案により、食材の調理方法の幅が広がることを知ってもらいたいと考えています。調理をすることで食材の特性を知ってもらい、より食品のことを理解してもらう。こうして消費者の目線で売ることが可能になるわけです」(冨士田さん)
食品流通業界で食材を扱っている人は、扱っている食材を料理して食べる機会になかなか恵まれない。しかし、食材がどのように調理され、どんな料理になり、どんな味になるのかを知っているのと知らないとでは買い手への訴求効果に違いが出る。
高齢化が進む社会を背景に介護食レシピや話題の甘酒などの発酵食品、海藻、ヨーグルトを使った腸活レシピなど、すぐにスーパーの試食に使えるキャッチ―なメニューも食材の訴求に有効だ。また、流行語大賞にもなった「インスタ映え」を意識したデモも効果がある。展示会ではインスタグラムなどで「萌え断」と呼ばれる美しい断面に焦点をあてた「萌えサンド」を自社の食材で再現し、注目を浴びた。
「消費者はどの食材がどんな料理になるのかに興味を持っています。自社の食材を使って欲しいなら、それを使えば美味しい料理が作れる、ヘルシーになる、見栄えが良くなるといったアピールをすることが効果的ですよね。たとえばアメリカンビーフなら、どう焼けば良いのかをもっとわかりやすく店頭でレクチャーして消費者に伝えることが大事。そうすれば、大きな塊だと焼きにくいけど、一口サイズのパッケージなら使いやすいとか、必然的に売り方も見えてきます」(冨士田さん)
全国の中堅・中小スーパーマーケット217社4091店(2018年1月1日現在)が加盟する日本最大規模の協業組織であるCGCグループでは「お料理する人を応援します!」をスローガンに消費者が料理に興味を持つ販売方法を心がけている。
冨士田さんによると、CGCグループはその一環として社員向けに料理教室を開き、食材の調理方法を一から教えているのだという。
「まったく料理をしたことがない50代の役員クラスも参加されています。たとえば、玉ねぎならメニューに応じた切り方などを教えます。料理に慣れていない男性社員が多いので基本から調理方法を教えるのですが、皆さん楽しんで料理をされていますね」(冨士田さん)
食品流通業界行く末を左右するのは?
冨士田さんは家庭料理に食品流通の可能性を見出している。きっかけは出し巻き卵だった。料理教室の傍ら、ホームパーティーを頻繁に行っていた冨士田さんは好評だった出し巻き卵の作り方を全国で教えることを思いつく。
出し巻き巡業と銘打って、北海道は利尻島から南は沖縄まで、教えた生徒は全国で1050人。実は出し巻き卵を美味しく作れる人は少なく、この2分でできる家庭料理が上手く作れることで自信が沸き、料理の楽しさを実感できるようになるのだという。
「先ごろユネスコに世界遺産登録された『和食』は日本の文化であり、次世代を担う子どもたちが育つ場所でもあります。なのに、子どもを持つ親があまり料理をしないのでは食育だけでなく健康面でも不安が残ります。忙しい中で料理をするのは面倒かもしれませんが、実は簡単にできる方法があるのです。それを提案し、知ってもらうことが私の使命だと思います」
こう語る冨士田さんの元には全国から料理教室の依頼やスーパーなどから惣菜レシピなどの依頼が舞い込む。
料理をする人口が増えれば食品流通業界も活況をもたらすことになるだろう。
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