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  • 2017/11/13 掲載

生前整理「勝手に片づけておきました」はNG、ではどうすれば?

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日本の高齢化問題は深刻さを増している。内閣府の統計では、団塊の世代が75歳以上になる2025年には全人口に占める65歳以上の人口は3,657万人に達すると見込まれ、2035年には33.4%、つまり3人に1人が高齢者となる計算だ。そこで問題となるのは相続問題。20年にわたり家事代行サービスの現場で活躍し、『定年前にはじめる生前整理 人生後半が変わる4ステップ』(講談社)を上梓する古堅純子(ふるかた じゅんこ)さんは「親も子も元気だから、まだ身辺整理しなくても大丈夫と後回しにされがち」だと警鐘を鳴らす。そのうちに親が亡くなり、当事者が揉めるケースも少なくない。そこで、トラブルに巻き込まれないための生前整理のポイントについて解説する。
執筆:中森 勇人
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親も子も元気なうちにモノを整理することは、超高齢化社会を迎える日本に不可欠になりつつある
(© maroke – Fotolia)


捨てる前に「モノにまつわるストーリー」に耳を傾ける

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 一般的に、生前整理というと「自分が亡くなった場合の備え」「自分の親が亡くなった場合の備え」の2つを指すが、古堅さんが提唱する「生前整理」は後者を指している。

 つまり、親も子も元気なうちにモノを整理することで、家を売却しやすくしたり、老後の快適な暮らしを実現するということだ。

 古堅さんは「通常のモノの整理はテクニックが重要な位置を占めるが、生前整理に限っては相手の話を聞くことが重要」だと話す。

 相手の話を聞くとは、高齢者が守ってきたモノの歴史や家族の思い出話などに耳を傾けること。たとえば、赤ちゃんが生まれて初めてミルクを温めた鍋の話や、家族のアルバム、勤めていたころにお気に入りだったスーツなどにまつわる話など。鍋もアルバムもスーツも単なるモノではなく、これらにストーリーが紐づいているため、その物語を聞きかなければ片づけが前に進まないのだ。

 ここに時間がかかることが認識されていないと古堅さんは指摘する。いざ片づけを始めると、モノにまつわるストーリーが踏み絵のように次々と現れ、いつまでも片づかないのだ。

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まずは対話に時間をかけるべきとアドバイスする古堅純子さん。写真は近著『定年前にはじめる生前整理 人生後半が変わる4ステップ』
 そんな面倒くさいことをやるより、さっさと整理すればよいと思われがちだが、ことを焦ってはよい結果にはつながらない。

 古堅さんによると、子どもが巣立ち、夫婦だけになりやがてパートナーを亡くした高齢者の場合、モノに昔の思い出やその日の出来事などを語り掛けながら過ごしていることが少なくない。

 たとえ古びたフライパンであっても、料理をしながら、何十年と一緒に過ごしてきた、いわば戦友のような関係。これを「汚いから捨ててしまえ」とバッサリとやると、相手は心を閉ざしてしまい、整理はストップ。

 そして、あれこれと理由をつけて、捨てることを拒んでしまうようになる。特に、70歳を越えた高齢者の家の片づけには相当な時間がかかると古堅さんは指摘する。

「高齢者の場合は、モノが体の一部のような存在になっています。だからすぐには捨てない、片づかないと腹をくくるべきなのです」(古堅さん)

生前整理の3つのポイント

 では、どの程度時間がかかるのか。古堅さんによると「家一軒丸ごと片づけるのに1年くらいは覚悟が必要」ということだ。しかも、週末ごとに家に通い詰めて、話を聞きながら徐々に進めていくというステップを踏んでようやく片づくというほど手間がかかる。

「さらに厄介なのは実家が物置になっているケース。もう成人している孫に買ってあげた『きかんしゃトーマス』のおもちゃがどっさり出てきたり。家に置いておくと邪魔だからと家に預けている荷物の山が出てくることもあります。思い出があるからと捨てるのを拒まれたり、いざ捨てるにしても、体力が衰えているのでスピードも遅い。これでは時間がいくらあっても足りません」(古堅さん)

 そこで古堅さんは、40代や50代の働き盛りの世代のうちに、老老介護よろしく「老々片づけ」にならないよう、自らの身の回りの整理や実家の片づけに着手することを勧めている。

 古堅さんが推奨する生前整理のポイントは以下の3つだ。

①今あるモノをどうするか?
②親がいなくなったあと、モノはどうするか?
③親が居なくなったあと、家はどうするか?

 これらを親が元気なうちに、親を交えて話し合うのがよいと古堅さんはいう。とはいえ、「死んだ後はどうする?」と切り出すのはなかなか難しい。そこで、まず親と一緒に片づけることから始めるのが得策ではないだろうか。

【次ページ】「勝手に片づけておきました」は絶対NG
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