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  • 2016/01/08 掲載

災害対策と子育てから生まれた意外なヒット商品「ベビースリング」人気の秘密とは

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2011年の東日本大震災から、「災害対策」というキーワードはあらゆる場所で聞こえるようになった。スリングライフアドバイザー 辻 直美氏は、レスキューナースの経験から、災害現場における子育ての安定と親子の安全を可能にするヒット商品「ベビースリング」を開発した。しかし、ヒットの理由は災害対策目的だけではなかった。災害現場発想の商品がヒットした秘密を探る。
執筆:中森 勇人

災害現場発想の製品開発

photo
スリングライフアドバイザー 辻 直美氏
 辻 直美氏は、国際災害レスキューナースとして東日本大震災や御嶽山噴火災害、広島土砂災害などの被災地で救命活動を行ってきた。その中で目の当たりにしたのが、赤ちゃんと親をめぐる2つの状況である。

 1つ目は、夜泣きをする赤ちゃんに困惑する避難所での光景だ。家族はなすすべもなく、非難の的となっていた。2つ目は、親が利き腕側に子供を抱えて避難し、利き腕が使えないため親子ともに命を失ってしまうケースだ。

 そんな時に力を発揮するのが「まぁるい抱っこ」という抱き方である。「まぁるい抱っこ」とは、辻さん自身が2歳違いの兄弟の育児と親の介護、仕事のすべてを熟すべく研究して編み出した、赤ちゃんにとって最も心地よい抱き方だ。

「まぁるい抱っこ」は、赤ちゃんの姿勢を胎内の状態にすることで血流が活発になり、安心して夜泣きは止み、母親自身も楽に抱っこができる。しかも、眠りが深くなり、健康な体躯の成長や将来的には学びの姿勢にも違いが出てくるのだという。

 さらに、辻氏は「まぁるい抱っこ」を広めるべく、看護師として働く傍ら、NPO はぐandはぐを設立し、数万組の母親と赤ちゃんに向き合ってきた。

 それだけではない。この「まぁるい抱っこ」のための抱っこ袋「ベビースリング」の製品化にも着手した。これを使えば両手がフリーになり、災害現場でも活躍することから、一本7,200~20,000円という価格帯にも関わらず、月産600本を越えるヒット商品となっている。

 スリングの利点は、子供を抱っこしながら両手が使えることだ。家事や仕事、外食や美容院にも出かけられ、育児が生活の妨げにならない。人目を気にせずに授乳ができるベールにもなるので、一度使うと手放せないという声も多いのだという。災害対策だけでなく、日常生活においてもスリングは親の自由を拡大するのだ。

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【次ページ】「スリング」販売を拡大した施策とは?
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