• 会員限定
  • 2023/10/23 掲載

元日本代表も愛用、ミズノのスパイク「モレリア」の「一貫性しかない」ブランディングとは

連載:ロングセラー解体新書

  • icon-mail
  • icon-print
  • icon-hatena
  • icon-line
  • icon-close-snsbtns
会員になると、いいね!でマイページに保存できます。
元日本代表やJリーガーなど多くのサッカー選手が着用するミズノのスパイク「モレリア」。初代モデル発売から40年以上経ってもロングセラーとして定着している背景には、ある「一貫性」がありました。一体それは何なのか。変わらないモレリア人気の秘密をマーケティング視点で解き明かします。
photo
ミズノのサッカースパイク「モレリア」が長年愛される秘密を解き明かす
(出典元: Nattawit Khomsanit / Shutterstock.com)

一流選手が着用する「モレリア」とは

 今回ご紹介したいのはミズノのサッカー用スパイク 「MORELIA(モレリア)」 です。

 初代モレリアが発売されたのは1985年。発売から40年近く経っていますが、Jリーガーをはじめとして国内外問わず多くのサッカー選手に愛されてきたシューズです。

 両シリーズとも多くのフットボールプレーヤーから支持され、第101回全国高校サッカー選手権に出場した選手の着用シューズシェアランキングで「MORELIA NEO Ⅲ」は1位、「MORELIA Ⅱ」は2位を獲得しました※1。愛用者の1人である元日本代表の中村憲剛氏が、初めてモレリアを履いた際に「これだ」と他のスパイクとの違いを感じたと絶賛するように、その性能の高さはプロからも折り紙付きです。

 まずはそんなモレリアの開発ストーリーから見ていきましょう。

 モレリアの開発が始まったのは1983年のことです。開発に協力したのは、ミズノと契約していたプロサッカー選手の水島武蔵氏。水島氏はブラジルの名門 「サンパウロ FC」 の下部組織を経て1984年にプロ契約を結んだ「海外組」のパイオニアと言える方でした。

 モレリアの生みの親であるミズノの安井敏恭氏は、水島氏に何十足ものシューズを送り感想を聞いたそうです。受け取った水島氏は当時所属していたブラジルの名門クラブチーム、サンパウロのチームメイトにも試してもらい、同僚のチームメートたちからは 「軽さ、柔軟性、素足感覚が欲しい」 との意見をもらったことをミズノに伝えたといいます。

 ここで意見に出た「素足感覚」とは、足の指で蹴る感覚のことを指します。ブラジルでは子ども時代に貧しさから裸足でプレーしていた選手もいて、足の裏でボールをこねて小指で蹴る傾向があります。そのため指を動かせてボールの感触が分かる製品が求められたわけです。ミズノの安井氏は 「日本では当時、足の裏を使う選手は珍しかったため驚いた」 と振り返っています

 この意見を受けてミズノは、素足感覚の実現へ向けて工夫を重ねました。厚くしないと強度の出ない牛革を素材に使うのではなく、軽くて柔らかく、丈夫なカンガルー革を採用。つま先には高反発の薄いスポンジを入れ、フィット感を高める工夫を施しました。

 こうした工夫を凝らしたスパイクは1980年代前半当時はブラジルで珍しく、現地のプロ選手でもゴムの靴底の粗悪品が履かれていたようです。ミズノがモレリアの試作品を水島氏に送ると、その優れた履き心地が評判となり、サンパウロ FC の多くの選手が欲しがったそうです

注1:講談社ゲキサカ調べ

なぜモレリアのアップデートは「大正解」なのか

 開発過程で生まれた、この「軽量/柔軟/素足感覚」のコンセプトは、今もモレリアの軸として受け継がれています。

 現在、モレリアの公式サイトには 「変わらないために、進化する」 との標語が掲げられていますが、モレリアはまさに、この言葉を体現しながら歩んできたスパイクと言えます。

画像
モレリアはまさに「変わらないために、進化する」スパイクと言える
(出典元: Nattawit Khomsanit / Shutterstock.com)

 ミズノの安井氏が、「何年たってもサッカーはボールを止めて、走って、蹴って、ゴールを決める競技。求めるモノは変わっていないはず」 と強調している通り、着用者から求められる「軽量/柔軟/素足感覚」のコンセプトを変えることなく、機能面ではアップデートを重ねてきました。

 2020年に発売したフラッグシップモデル 「モレリア2ジャパン」 は、靴底を重いポリウレタンから、水に浮くような軽い素材に変更。シューズの中底は不織布製のボードから、樹脂に置き換えて耐久性を高めています。「1グラムでも軽い素材を探した」 と安井氏が言うように、メーカーのたゆまぬ努力が、選手を足元から支えています。

 モレリアはコンセプトは変わらず、選手が求める変わらないもののために、より高いレベルで素足感覚を実現し進化をしているサッカーシューズなのです。

 ではそんなモレリアから、マーケティング視点でどんなことが学べるのでしょうか。 【次ページ】モレリアから学べる「ブランド」の法則
関連タグ タグをフォローすると最新情報が表示されます
あなたの投稿

    PR

    PR

    PR

処理に失敗しました

人気のタグ

投稿したコメントを
削除しますか?

あなたの投稿コメント編集

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

通報

このコメントについて、
問題の詳細をお知らせください。

ビジネス+ITルール違反についてはこちらをご覧ください。

通報

報告が完了しました

コメントを投稿することにより自身の基本情報
本メディアサイトに公開されます

必要な会員情報が不足しています。

必要な会員情報をすべてご登録いただくまでは、以下のサービスがご利用いただけません。

  • 記事閲覧数の制限なし

  • [お気に入り]ボタンでの記事取り置き

  • タグフォロー

  • おすすめコンテンツの表示

詳細情報を入力して
会員限定機能を使いこなしましょう!

詳細はこちら 詳細情報の入力へ進む
報告が完了しました

」さんのブロックを解除しますか?

ブロックを解除するとお互いにフォローすることができるようになります。

ブロック

さんはあなたをフォローしたりあなたのコメントにいいねできなくなります。また、さんからの通知は表示されなくなります。

さんをブロックしますか?

ブロック

ブロックが完了しました

ブロック解除

ブロック解除が完了しました

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

ユーザーをフォローすることにより自身の基本情報
お相手に公開されます