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- 2018/01/10 掲載
アマゾンのSNS、Amazon Spark(アマゾン・スパーク)は何が狙いなのか
連載:米国経済から読み解くビジネス羅針盤
年末商戦で独り勝ちを収めたアマゾンの「課題」
また、全世界でプライム会員の数が400万人も増加し、ブラウザではなくアマゾンアプリから買い物をする人の数が前年比70%増と、「アマゾンアプリを使うプライム会員」が増大したことも大きな特徴だ。事実、2017年には全世界において通年でプライム会員だけでも50億個以上の商品を購入するなど、上得意であるプライムセグメントのさらなる増強がアマゾンにとって重要な目標になっている。
こうした中、アマゾンはSNS戦略を強化している。アマゾンはSNS戦略を強化している。同社は2017年にYouTubeにおいて有力ユーチューバーたちに金銭的な報奨を与えて、アマゾンに出品されている商品のプロモーションを依頼することを始めた。
また、ツイッターやインスタグラムにおいても、インフルエンサーに同じようなインセンティブを与えて、売上増を図った。一部のインフルエンサーは、アマゾンのサイト内に「ショップ」を開いてアマゾンの商品を展示し、そこで販売された商品に対する販売手数料をアマゾンから受け取っている。
だがこれらのプラットフォームは、グーグルやフェイスブック、ツイッターなど、他の米IT大手に握られており、アマゾン自前のものではないため、プラットフォーム間やアプリ間を行き来しなければ、アマゾンでの商品の注文ができない。
YouTubeの月間ユーザー数は15億人、インスタグラムは8億人、ツイッターは3億3,000万人など、規模の巨大さから見て、これらのプラットフォームを活用することは、アマゾンの商品情報の拡散には必須だが、いずれも本来は買い物プラットフォームやアプリではないため、商品の購入には使い勝手が悪い。
そこで2017年7月に北米でローンチしたのがアマゾン・スパークだ。アマゾン・スパークはスマホ向けの「アマゾンアプリ」に内蔵された一機能であり、ほかの巨大SNSに流れていた商品購入をめぐるやり取りの一部を、アマゾンの手に取り戻すのが狙いだ。
買い物できるインスタ風商品レビュー、アマゾン・スパーク
アマゾン・スパークでは、インスタグラムやツイッターのようなフィード形式で顧客の指定した興味に合わせたインスタ風の写真が流れてくる。一見、リア充自慢の写真の羅列のようだが、その中にはアマゾンに出品されている流行商品がちりばめられている。それらをタップすれば商品情報や投稿者のレビューが表示されるばかりでなく、アプリを離れずに、その場で写真に登場する商品が注文できるのがウリだ。ストレスのかかるアプリ間の移動を排除することで、客を逃さない。図1は、米消費者がネットで商品を探すときにどのプラットフォームを使っているか示したものだ。まず頼るのはアマゾン(紺色)。ただし、その割合はグーグル(オレンジ色)に押されて2017年には6ポイントも低下しており、SNSやインフルエンサーを介した商品の宣伝の必要性が高まっている。アマゾン・スパークがそうした需要を満たせるのか、注目されている。
なぜスパークの機能がアマゾンアプリに実装されたのか。それは、インスタグラムが「購入ボタン」を設置して以降、ソーシャルコマースが本格化していることが最大の理由だろう。中でもインスタグラムを有力な顧客誘導ツールとしている、ウェブショップ開設プラットフォーム「Shopify(ショッピファイ)」に触発されたことは間違いなさそうだ。ショッピファイは、インスタにストーリー形式で商品の写真と情報を流し、顧客がアプリを離れることなく、ショッピファイ加盟店の商品を購入できる機能を実装し、売上を大きく伸ばしている。
ソーシャルコマースが急増する中、アマゾンは早急に対抗策を講じなければならなかった。そこで、多くのeコマース競合のSNSアカウント内で商品の購入が完結しない短所を突く形で、既存のアマゾンアプリに「SNS」のスパーク機能を埋め込んだのである。
スパークの利用を始めるユーザーは、「本」「スタイル&ファッション」「テクノロジー」「インテリア」「音楽」「フィットネス」「オモチャとゲーム」など数十のカテゴリーの中から(インスタグラムのように)最低5つの興味ある分野を指定する。
スパークでは、従来の文字による「アマゾンレビュー」がよりファッショナブルに視覚化され、しかも写真の多くがインフルエンサーからのSNS風の投稿であるところが、大きな特徴だ。写し込まれた商品がアマゾンで販売されている場合、ショッピングバッグのアイコンが写真の右下端に表示される。そのアイコンには、その商品がアマゾンで何回購入されたのか、数字で現わされている。
【次ページ】アマゾンが挑む、AI×SNSマーケティング
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