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- 2025/01/27 掲載
ソフトバンクらAI投資、本当に「5000億ドル」調達できる?カギは「孫会長のある能力」
連載:米国の動向から読み解くビジネス羅針盤
マスク氏やアンソロピックCEOが“猛烈”批判
新会社のスターゲートは、AIインフラ整備に向けて、ソフトバンクグループ、OpenAI、オラクル、UAEアブダビ首長国が支援するMGXが共同出資し、南部テキサス州で設立される。ソフトバンクの孫正義氏がスターゲート会長に就任する。向こう4年間で最大5,000億ドル、このうち「直ちに」1,000億ドル(15.6兆円)を投資する計画だ。またOpenAIがChatGPTでおなじみの生成AI技術やエンジニアを提供し、オラクルがテキサス州ダラス近郊のアビリーンですでに建設を開始しているデータセンター10棟を供与。さらにオラクルが別の場所で新たに建設する10棟を追加する予定となっている。
日本側のソフトバンクが財務管理を担いつつ、これまでの対米投資で最大級の資金を注ぎ込む。国家的なAIプロジェクトの資金面で成否を握るのが、わが国のソフトバンクの孫会長であることは疑いない。
そうした中、イーロン・マスク氏が「ソフトバンクが確保できているのは、100億ドル(1.5兆円)未満だ。信頼できる筋から聞いた」「彼らには実際に(雇用や建設費用などをカバーする)お金がない」と、自身が経営するXで発言して注目された。
トランプ大統領直々の指名で、行政の効率化と歳出削減を図る新組織「政府効率化省(別名ドージ省)」トップとして政権入りしたマスク氏。その彼が、直接の「上司」であるトランプ氏ご自慢のAIインフラ計画について、「ソフトバンクの資金不足」を理由に成功の可能性に対して疑義を呈したのだから、穏やかではない。
アンソロピックのダリオ・アモデイCEOも、「スターゲートは資金調達が不透明な、ややカオスの状態」「実際にどれだけの資金が投入され、そのうちどれだけが確約されているのか明らかになっていない」「政府の関与についても不明」と評した。
マスク氏のスターゲート批判の裏には、自身のAI企業xAIの「宿敵」であるOpenAIがプロジェクトの中心となることへの不快感や、OpenAIのアルトマンCEOを貶める意図が隠されていると思われる。資金問題を考える上で、そこは差し引いて考える必要があるだろう。
3社の手持ち金は「1,000億ドル」にも遠く及ばず
一方、ホワイトハウス報道官のキャロライン・レビット氏はFOXニュースのインタビューでマスク氏らのコメントを否定し、「米国民はトランプ大統領とCEOたちの言葉を信じるべきだ」と述べていることは興味深い。トランプ氏自身も、「彼らは資金を拠出する。政府は何も出さない。彼らが資金を出す」と述べ、ソフトバンクや孫氏への信頼を表明した。米CNNも、スターゲートに詳しい情報筋の話として、「ソフトバンクは最新の決算で243億ドル(3.8兆円)の現金を保有しており、この計画を支援するためにさらなる負債を引き受ける用意がある。そのため、マスク氏の批判は事実ではない」との主張を報じた。
加えて、オラクルが110億ドル(1.7兆円)の現金を保有しているほか、OpenAIもベンチャーキャピタルから100億ドル(1.5兆円)以上を調達したことを最近発表。だが、ソフトバンク・オラクル・OpenAIの手持ち現金すべてを足しても、スターゲート初年度に投資が見込まれる1,000億ドル(15.6兆円)には遠く及ばない。
こうした中、米ブルームバーグは1月22日、中東の有力な政府系ファンドであるカタール投資庁のテクノロジー投資責任者、モハメド・アルハルダン氏が、スターゲートへの投資に興味を示していると報じた。アルハルダン氏は「我々のAIデータセンターに対する投資機会を調査するチームが、スターゲート計画を検討中だ」と明かした。
こうした投資家を孫氏が引き込めるのかが、今後のカギとなるだろう。ソフトバンクの米国における投資評価を見ながら、資金調達の実現可能性について考える。
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