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- 2022/01/19 掲載
孫正義はソフトバンク・ビジョン・ファンドの投資にどう関わるのか?投資の5原則とは
AIによる情報革命を実現する「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」
2021年6月に開催された株主総会で、ソフトバンクグループの代表取締役 会長兼社長執行役員の孫 正義は「ソフトバンクグループとは、情報革命の資本家である」と説明しました。特に情報革命の最先端であるAI(人工知能)を使った情報革命に注力しています。ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)は、それを実践するプラットフォームと位置付けています。また、ソフトバンクグループでは成長戦略として「群戦略」を掲げています。この群戦略は、特定の分野で優れたテクノロジーやビジネスモデルを持つ多様な企業群が、ともに進化や成長を続けることを志向するものです。柔軟に業容を変化・拡大させながら300年にわたり成長を続けることを目指す独自の組織戦略です。
この戦略に基づきSVFでは、AIを活用した新技術やサービス、ビジネスモデルを実現できる企業への投資によって、緩やかな共同体を結成することを目指しています。SVFには「ソフトバンク・ビジョン・ファンド1(SVF1)」「ソフトバンク・ビジョン・ファンド2(SVF2)」の2つのファンドがあります。
SVF1は、コミットメント額が986億ドルという超巨大な規模のファンドで、ソフトバンクグループ以外の第三者の投資家もいました。
ファンドの投資先は、未上場で時価総額が10億ドルを超えるユニコーンや100億ドルを超えるデカコーンと呼ばれる超大型スタートアップにフォーカスしています。各事業分野の先頭を走っている企業にベットして、強い企業をさらに強くすることを目指しています。
SVF1によってユニコーン、デカコーンなどに投資する機会を得ることができました。
対して、SVF2は「第三者の投資家はいない」点で、SVF1とは性質が異なります。実質的にはCVC(Corporate Venture Capital)と言えます。SVF1ですでに継続的にプライベートカンパニーへ投資してきたので、巨額投資先の企業候補はそれほど残っていません。そのため、各企業への投資金額は小さくなったり、地域や企業規模などを比較的柔軟に検討できるようになったりしました。
2021年9月時点の1社当たり平均投資額は、SVF1で約1億ドル、SVF2で200万ドルほどでした。あくまで平均投資額で、SVF2でも大きな投資先があります。なので、一般的なファンドはかなり性質が異なるといえるでしょう。
ただ、両ファンドとも投資のプリンシプル(原則)自体はまったく変わっていません。SVF2でもそれを継承しつつ、より柔軟性を持たせたファンドだと思います。
SVFの投資判断の根幹にある5つの原則
現在、私はソフトバンク・ビジョン・ファンド事業のアジア地域の投資責任者を務めています。元々、私の担当地域は中国でした。ほかにグレッグ・ムーンというマネージングパートナーが中国、インドを除く東南アジアや韓国、日本などを担当していました。ただ、孫社長から「日本は健太郎が見てほしい」という話になり、2021年9月から中国に加えて、日本を担当することになりました。SVF2の投資先は、投資額ベースで米国が42%、中国が15%、EMEA(欧州/中東/アフリカ)が28%、インドが9%、その他アジアが6%となっています。より地域別に細かく見ると、2021年は欧州への投資額が増えました。同地域のスタートアップには投資に適するステージに位置する企業が多くあり、分散化が図られています。
欧州での投資額が増えたのは、特定のセクターに絞ったからというわけではありません。基本的にビジョン・ファンドが掲げる投資プリンシパルに適合する企業であれば、特にこだわりなく投資しています。
その投資プリンシパルは、主に5つの指針からなります。
1つ目が「ニューリーダーを創出する大きな市場である」こと、2つ目が「革新的な技術や商品・サービスを創出する企業である」こと、3つ目が「野心的で明確なビジョンを持った起業家、経営陣である」ことです。
そして、4つ目が「データとAIを有効活用して成長を加速できる企業である」こと、最後の5つ目が「持続的な成長の可能性と収益性の道筋をきちんと守っている」ことです。
セクターに限らず特に重視しているのが「データとAIを有効活用して成長を加速できる企業である」点です。ソフトバンクグループ自身がAIという冠を掲げていますので、基本的にAIと関連性のない企業には投資しません。2021年は、投資基準やステージを満たす企業が昨年よりも増えていた点が、欧州における投資額が増加した要因だと思います。
【次ページ】孫社長も参画、独自の投資判断プロセスとは?
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