0
会員になると、いいね!でマイページに保存できます。
日本企業の多くで、グローバル化を背景に人材や働き方の多様化が進み、ジョブ型などの議論が活発化している。こうした中、ソフトバンク 専務執行役員 兼 CHRO(最高人事責任者)の青野史寛氏は「優秀な人材を生かすには年功序列は壁となる」と言い切る。アフターコロナ、デジタル時代の人事戦略について、青野氏に単独インタビューを行った。
ジョブ型雇用で押さえるべきメリットとデメリット
新型コロナによるリモートワークの広がりを受け、従来の「メンバーシップ型」から「ジョブ型」への雇用形態の見直しが大手を中心に国内で広がっています。
ジョブ型雇用の意味するところは広く、一括りには言えないのですが、仮に職務定義書で業務を明確に定め、年齢や経歴などを抜きに最適な人材を充てる職務給型雇用と捉えるのであれば、従業員の能力に見合った仕事と給料につながる点で否定すべきものではありません。社員個々の役割が明確となることで自律的な判断が促され、意思決定の速度もそれだけ速めることができます。
これらのメリットから、実は90年代にも一度、ジョブ型雇用への見直しの動きが盛り上がりました。ただ、当時は最適な人材を社内外から集め、余った人材を解雇するという欧米型の考えが馴染まず、根付くまでには至りませんでした。
また、ソフトバンクの業務は常に変わり続けるため、そのたびに職務定義書で業務を明確に定義していては手間がかかりすぎてしまいます。実際にやるとなると、ドツボにはまるはずです。
また、職務給型ではミッションが明確な分、それ以外の仕事がないがしろにされるリスクもあります。
会社の成長に貢献しながら成果がすぐには見えにくい中長期的な仕事のほか、誰かがやらなくてはならない新たな仕事なども適切に評価できなければ、社員のやる気を削いでしまうでしょう。
それらを勘案し、ソフトバンクでは2007年、社員の「スキル」と「ミッション」を掛け合わせた独自の人事制度「ミッショングレード制」を導入しました。目指したのは社員の挑戦心を引き出し、支える仕組み作りです。
自ら手を挙げ仕事を掴んでキャリアも磨く
責任が重いほど、また、やりたい内容であるほど、社員は仕事にやりがいを感じるものです。従来の年功序列制の一番の欠陥は、入社年次に応じた仕事の振り分けにより、そうした仕事のチャンスがなかなか巡ってこないことです。そのため、優秀な人材を生かしたいのに、年功序列が壁になってしまいます。
対してソフトバンクのミッショングレード制では、社員がやりがいを感じられる仕事に就けるよう、ジョブ型の良いところを取り入れて仕事の中身を明示し、やる気があればそのポジションに誰でも手をあげられるようにしています。つまり、仕事のチャンスが社員に公平に用意されているのです。
もちろん、手を挙げた結果、希望が通るかどうかは社員のスキル次第であり、就きたい仕事に応じて社員には能力を磨く努力が求められます。そうした中、能力の蓄積に応じて応募できる仕事がさらに広がるとともに、ミッションも上がっていきます。
こうした一連のプロセスを、ソフトバンクの社内研修プログラムである「ソフトバンクユニバーシティ」などが下支えします。前編でも述べたデジタルやデータ分析の研修のほか、マーケティング、コーチングなど多様なプログラムが用意されており、それらも自分で選んで利用します。
今の仕事を頑張ることは当然のこと。そのうえで、大小の新たな挑戦によりキャリアを自ら広げる機会が担保され、そのための支援体制も用意されているという具合です。こうした環境を生かし、社員にやりたい仕事をぜひ勝ち取ってほしいというのが人事としての思いです。
【次ページ】新たな人事制度をゼロベースで生み出すことの必要性
関連タグ