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OpenAIで起こった突然のサム・アルトマンCEOの解任・復帰騒動。日本でも大きな話題を呼び、連日報道されたのは記憶に新しい。実はそのOpenAIの創設メンバーに名を連ねていたのが、テスラの総帥として知られるイーロン・マスク氏だ。OpenAIとは根深い因縁があり、現在はOpenAIのChatGPTに対抗して、対話型AIのGrokを開発、12月から提供を開始している。そんなマスク氏は、ライバルとなったOpenAIの一連の騒動をどう見たのか。その言動を追った。
マスク氏とOpenAIの浅からぬ因縁
マスク氏とOpenAIには、浅からぬ因縁がある。
アルトマン氏らが2015年に非営利組織としてOpenAIを設立した際、マスク氏は最大で10億ドル(約1,500億円)の資金提供を約束してそのプロジェクトに加わった。OpenAIの名付け親は、マスク氏その人である。
マスク氏が共鳴し賛同したOpenAIのミッションは、想定外の状況でも自ら学習し、能力を応用して処理できる、人間に近い知能を持つ汎用人工知能(AGI)が全人類の利益となるようにすることだ。OpenAIが金儲けを語らない理想主義的な目的だったという面において、マスク氏自身が2023年7月に設立した
xAIの目的である「宇宙の真の性質を理解する」と似ていなくもない。
しかしxAIはGrokを開発し12月から提供を開始したのだが、これを利用するにはマスク氏が買収したX(旧Twitter)で月間16ドル(約2,400円)のサブスク料金がかかるX Premiumに加入する必要がある。当初からの収益化を目指しており、マスク氏のAIとのかかわりがビジネスと切り離せないことの、1つの証左であろう。
マスク氏の買収提案、辞任、そしてマイクロソフトの参画
マスク氏は2018年、OpenAIのAI開発が競合グーグルのDeepMindに致命的な遅れを取っていると主張し、OpenAIを買収することを
提案する。だがこの動きは、テスラ車の完全自動運転(FSD)など、自身のビジネスにOpenAIの成果を取り込むためだと見透かされ、アルトマン氏らOpenAIの取締役会のメンバーから反対を受けて頓挫してしまう。
孤立したマスク氏は取締役会を辞任し、OpenAIへの寄付も当初約束していた額の1/10に過ぎない1億ドルに減らしてしまった。マスク氏の「兵糧攻め」を受けて資金源に窮したOpenAIは、開発続行のため商業化路線にかじを切ることを決意した。
新たな出資者を求めて2019年に営利孫会社を設立し、アルトマン氏がそのCEOに就任。その可能性に着目したのが、米マイクロソフトのサティア・ナデラCEOだ。やがてマイクロソフトは営利孫会社株式の49%を保有し、総額130億ドル(約1.9兆円)を超える膨大な出資金を提供するようになる。
この商業化路線で息を吹き返したOpenAIが2022年11月に世界の話題をさらった
ChatGPTをリリースし、当時低迷にあえいでいた米テック業界を救うという、マスク氏にとっては何とも皮肉な展開となった。マスク氏の資金引き揚げが、あろうことか大成功を導いてしまったのだ。マスク氏が2018年にOpenAIを去る際に、「(同社が)いずれつぶれる」とまで
語っていたにもかかわらず、である。
米ニュースサイトの
Semaforに情報筋が語ったところによれば、マスク氏はChatGPTの華々しいローンチに激昂し、OpenAIが自身の買収したTwitter(後のX)の貴重なデータを根こそぎ引っこ抜かないように、OpenAIからのアクセスを直ちに遮断した。そうして改めてxAIを設立し、そのxAIにXの投稿データを活用したGrokを開発させ、Xのプレミア付きサブスクプランとして商業的な提供を始めたというわけだ。
【次ページ】「マスク氏vsアルトマン氏」が幕開け
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