- 会員限定
- 2023/09/12 掲載
2027年のテスラ株は“いくら”に? ハイテク株の女王がゲキ推しする「意外な評価」
連載:米国の動向から読み解くビジネス羅針盤
ハイテク株の女王、バフェット氏との「違いと共通点」
米メディアで「ハイテク株の女王」との異名を取るウッド氏はカリフォルニア州出身で、南カリフォルニア大学(USC)では金融と経済を専攻し、1981年に主席で卒業した。卒業後から現在まで数多くの投資企業で40年以上、優秀な成績を上げてきた。テック企業高度成長時代の2014年にアーク・インベストメント・マネジメントを創立し、一貫してディスラプティブ(破壊的)なイノベーションを引き起こす企業に投資してきた。短期的に特定の銘柄が暴落してもブレることなく株式を保持し、ときには逆張りで買い増すことさえある。「善なるものとしてのテクノロジー」の将来性に賭けており、ディスラプター(破壊的企業)への信仰心には強いものがある。
このように同氏の投資哲学は、リスクを積極的に取りに行く肝の据わったものだ。そんなウッド氏は、「ハイテク株の女王」だけでなく「著名投資家ウォーレン・バフェットの女性版(女性版バフェット)」とも呼ばれている。だが、「女性版バフェット」と呼ぶことには抵抗感もある。
バフェット氏が採用する安全追求型の分散投資スタイル「インデックス投資」(市場を構成する複数の銘柄に広範な投資をすること)に批判的で、目安となる指数(ベンチマーク)を上回る成績を目指し、リスクを負うこともいとわない積極的な「アクティブ投資」を奨励しているからだ。安全性を重視し、株主に不要なリスクを負わせることを回避するバフェット氏のそれとは大きく違う。
だが同時に、ウッド氏がバフェット氏の考えと顕著に似た部分もある。それは、長期的な視点で株を持ち続けることだ。最低5年は保有する覚悟で投資判断を行うべきだとウッド氏は考えている。尊敬できる企業の優良株を長期的視野で保有し続けることをモットーとするバフェット氏も、株主への書簡で次のように述べたことがある。
「デート相手の条件と結婚相手の条件は違う。長期的に投資する先(つまり結婚相手)を見つけるためには、まともな企業を素晴らしい安値で買おうとするよりも、素晴らしい企業をまともな価格で買うほうがいい」
もう1つの共通点は、投資にあたっての軸となる「信仰」を持っていることだ。バフェット氏は、米国経済に対するブレない信頼感があるからこそ、長期集中型で投資できるのであり、ウッド氏も同様にテクノロジーの進歩に対する揺るぎない信頼があるからこそ、目先のノイズに惑わされることなくディスラプターに集中投資できるわけだ。
笑われても“ブレない”投資思想
ウッド氏を一躍有名にしたのが、2018年2月に経済専門局CNBCの番組で、当時310ドル(現レートで約4.5万円)であったテスラ株について「4,000ドル(約58.4万円)に達すると信じている」と発言したことだ。当時、資金繰りや生産遅延の問題を多く抱えたテスラや、その総帥である著名起業家のイーロン・マスク氏を信じる人はあまりおらず、ウッド氏は笑いものにされた。ところが、その後テスラ株はあれよあれよという間に急騰し、3年後の2021年1月にはついに4,000ドルを突破してしまったのである。その過程で、ウッド氏のETFには多額の資金が流入するようになり、アーク・インベストメントの資産は一時500億ドル(約7.1兆円)にも達した。
そのテスラ株が2022年に大暴落を演じ、アーク・インベストメントの資産が140億ドル(約2兆円)まで落ち込んだ際にも、ウッド氏はテスラ株を手放さなかった。そうした信仰にも近い投資思想については、2023年1月に公表した「Big Ideas 2023」と題する153ページにも及ぶ報告書で垣間見えることができる。
そしてウッド氏は、動画ストリーミングのRoku、暗号資産取引所のCoinbase、リモート会議のZoom、フィンテックのBlockなどに満遍なく投資しているが、ETF資金の10%以上というダントツの額を投資するのが、テスラである。ただし、単に「EV」「サービスとしてのクルマ」という側面にのみ注目しているのではないところがミソだ。 【次ページ】2027年のテスラ株は現在の〇〇〇%に
関連コンテンツ
関連コンテンツ
PR
PR
PR