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2017年08月10日

新連載:米国経済から読み解くビジネス羅針盤

医療ITでもアマゾンやグーグルが主役に、「AI予防型医療」が直面する問題とは

米医療保険制度改革(オバマケア)をめぐる政治の混乱を後目に、米国ではIT技術を活用した民間主導の医療コスト削減が急速に進んでいる。従来の個別診療報酬支払いから、診療科の垣根を超えた治療成果への支払いへと進み、データ依存型の医療経済が形成される一方、人工知能(AI)による診断迅速化や予防医療も急速に発展している。日本の医療ITにも大きく影響を及ぼすと予想される動きを現地から追う。

執筆:在米ジャーナリスト 岩田 太郎

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米国で進む「コストパフォーマンス型医療への移行」と
「AIによる診断迅速化・予防医療」

(© s_l – Fotolia)


キーワードは「コストパフォーマンス型」と「AI」

 先進のヒト受精卵ゲノム編集による遺伝病発症防止、分子標的薬によるがん療法、腹腔鏡手術、低侵襲心臓手術、投薬によるHIV治療など、世界がうらやむ最先端の診断・治療技術を誇る米国。

 だが同時に、先進国のなかで最も医療費支出の割合が高い米国では、法外に高額な治療費請求、歯止めのかからない薬価上昇、適用される保険商品やプロバイダーによって違う恣意的な治療価格設定、複雑に入り組んだ連邦・州レベルの保険規制に加え、治療費請求の煩雑な処理でコストがさらに膨らむという後進性が併存する。



 年間3兆4,000億ドル(約376兆円)規模の米ヘルスケア市場において、青天井で医療費が高騰を続けるなか、医療保険制度改革(オバマケア)のあり方をめぐる党派的対立により、非効率的な医療提供体制は前に進むことも後ろに退くこともできない状態を強いられている。

 こうしてワシントンが医療保険制度の改革で足踏みを続けるなか、スタートアップから大手まで、多くの民間企業が「もはや政治は頼りにならない」とばかりに、ITイノベーションによる医療費抑制の解決を模索している。

 キーワードは、「コストパフォーマンス型医療への移行」と「人工知能(AI)による診断迅速化・予防医療」だ。

コスト削減イノベーションで先行する医療保険企業

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 トランプ政権が目指すオバマケア改廃をめぐる混乱で、保険商品への政府補助金の先行きが不透明になっている米医療保険企業は、その利潤を守るためにITイノベーションにより「最小の費用で最大の医療を目指す」方向へと一斉に舵を切り始めている。

 医療提供のあり方とそれをめぐる改革の動きは、今やワシントンではなくシリコンバレーがリードしている。たとえば、医療保険最大手ユナイテッドヘルスグループの子会社オプタムは、保険業務のIT化によって蓄積された膨大な保険請求・治療内容と結果・医療費詳細、その他何百種類ものをデータの分析を基幹に据えた低コスト医療商品を開発している。

 シリコンバレーに本拠を構えるオプタムは、親会社ユナイテッドヘルスの保険が使える6000の医療機関に所属する100万人の医師と3000万人の被保険者のデータを分析し、疾病や怪我を最も効率的かつ最低限のコストで治療できる医師や医療機関を割り出す。その上で、患者を治療成績の良いプロバイダーへ優先的に振り向けている。

 これはIT活用により、従来の個別診療報酬支払いから、治療の成果に対する支払いへと、医療経済に関する考えを根本的に見直すものだ。その意味では、オプタムは医療保険会社というより、データサイエンティストが動かすIT企業と呼ぶのがふさわしい。

 事実オプタムは、全米の医療機関との取引で蓄積した医療データを分析加工し、それを治療成績の向上、効率化やコスト削減を目指す病院をはじめ、医師、企業・組織の医療保険運営者、政府機関・自治体、研究者、生命科学企業などに販売している。こうした動きはユナイテッドヘルスやオプタムに限らず、ほぼすべての米医療保険企業で見られる。

【次ページ】アマゾンやグーグルも参入、AIによる分析・診断で医療費削減

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