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  • 2023/04/03 掲載

日本発「胃がん死亡ゼロ」の世界へ、開発者が語る「胃カメラ×AI」の絶大効果

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日本で最も多くの死者を出している「がん」、その中でも3番目に多いのが胃がんです。早期に発見することで生存率を高めることができますが、胃カメラによる検査では実に約2割の見逃しが発生しています。しかし近年、胃カメラにAIを適用することで、検査時の見落としをゼロにできる可能性が高まってきました。つまりは、胃がんによる死者をゼロに近づける日が来るということです。今回は、医療AIの研究開発のトップリーダーであるAIメディカルサービス 代表取締役CEOの多田智裕氏に、医療AIの最前線について紹介してもらいました。
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胃カメラとAIで胃がんゼロを目指せるのか
(Photo/Shutterstock.com)

ステージ1なら「生存率99%」の衝撃

 消化器科は、胃や腸などの消化管を主に扱う医師と、肝臓や膵臓などの実質臓器を扱う医師に分けられます。私は消化管を専門に診療を行ってきましたが、消化管で発生する深刻な病気の1つにがんが挙げられます。特に日本では、胃がんと大腸がんの罹患率が高いです。

 胃がんと聞くと、それだけで命に関わる印象を受けるかもしれません。ですが、実はステージ1で発見できれば、5年生存率(病気と診断された患者さんが、5年後に何%生存しているかの数字)は98.7%と、高い確率で完治が望める病気と言えます。

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ステージ1で胃がんを発見できれば99%で死を避けられるが、現状では検査の見落としも避けられない?
(Photo/Shutterstock.com)

 しかし、そこから進行してしまいステージ2で発見された場合、5年生存率は66.5%、ステージ3では46.9%と、一気に半分近くまで下がってしまいます。要するに、早期発見できるかどうかが、患者さんの命を左右するのです。

 この胃がんを早期に発見・診断できる検査は、胃内視鏡検査(胃カメラ)だけです。皆さんも体験されたことがあるかもしれませんが、苦しい検査という印象が強かったと思います。

 一昔前の検査は、喉に麻酔を打ちつつも太い胃カメラを口から挿入するため、嘔吐反射が起きやすいものでした。しかし、現在は経口内視鏡だけでなく、細いカメラを用いた経鼻内視鏡という嘔吐反射の起きにくい鼻からの検査が可能になりました。医療施設によっては希望すれば鎮静剤を使用した上で検査を受けられるため、検査時の苦痛は軽減されつつあります。

 このように、内視鏡機器そのものや、医師の技術力・内視鏡医療における手法は日々進化しています。内視鏡検査が安全かつ苦痛も少なく受けられるようになってきた今こそ、私は内視鏡専門クリニックの理事長を務める医師として、医療の質をさらに向上して、胃がんの早期発見を増やす必要があると考えています。

日本の内視鏡は世界一! それでも「見落とし2割」

 実は、消化器内視鏡は日本が世界をリードする分野の1つであり、驚くことに消化器内視鏡のシェアは日本のメーカーが世界で98%を握っています。さらに日本消化器内視鏡学会の会員数は3万5000人と、内視鏡学会としては世界最大規模で、内視鏡を扱う医師のレベルも世界トップレベルの評価を受けています。

 しかしながら、世界的に高い能力と技術を持つ日本の内視鏡専門医でも、初期段階の胃がんは胃粘膜との区別が難しく、実に2割前後も見逃してしまっていると言われています(注)。また、検査をする医師の熟練度によっても病変の発見率に差が出てしまうとされています。

注)Hosokawa et al. Hepatogastroenterology. 2007 ;54(74):442-4.

 とはいえ、医師たちも胃がんの早期発見のために多大な労力を費やしています。たとえば、胃がんによる死亡率減少を目的とした施策の「対策型胃がん検診」というものがあります。これは、市区町村が主導して胃内視鏡検査を行うものです。

 1度の検査で撮影する画像は40枚程度ですが、これらの画像を専門医が2人体制でダブルチェックしています。これらの医師は、所属する病院の診察時間後に作業を行っています。

 私が理事を務めるクリニックが所在するさいたま市では、1回当たり約1時間で約70人分、3000枚弱の内視鏡画像をダブルチェックします。このため、年間で確認する画像は数十万枚に上ります。

 しかし上述の通り、一定の見逃しは避けられないのが現状です。そこで私は、がんの見逃しと医師の負担を減らしていくにはどうしたら良いかを考えました。出した答えは、画像認識能力で人間を超えたとされるAIを、内視鏡医療に活用することでした。 【次ページ】研究が示した「内視鏡AIの成果」とは
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