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  • 2022/04/21 掲載

ウォルマートやアマゾン、世界の小売業が「デジタルヘルス」に参入する納得理由と勝算

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世界最大の小売企業として知られるウォルマート。Eコマース事業では過去2年で70%増益となり、アマゾンの大きなライバルに躍り出た。特に食品宅配サービスの分野ではコロナ禍で外出を控える人の利用が急増し、食品小売でも米国一の企業となった。しかし、ウォルマートの今後の成長を支える柱となりそうなのは、医療やヘルスケアにデジタル技術を活用する「デジタルヘルス」の分野だ。なぜ、米国一にして世界最大の小売企業がこの領域に注力するのだろうか。
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新型コロナワクチンの接種を行っているウォルマート内の薬局
(写真:ロイター/アフロ)


ワクチン接種で一気に強まった「小売と医療」のつながり

 デジタルヘルスとは、デジタル技術を活用して医療やヘルスケアを変革する分野を指す。世界最大の小売企業「ウォルマート」と「デジタルヘルス」というと、あまり結びつきを考えられない人が多いかもしれない。


 安売りの量販店として米国だけではなく世界に進出しているウォルマートだが、全米に5000店舗以上を展開し、その多くが薬局を併設している。この利点を生かし、ローカルの顧客に処方箋薬のデリバリーサービスを計画し、自動運転ロボットによる「注文から30分以内の薬の宅配」なども目指していた。

 注目されたのは、新型コロナウイルスワクチン接種に同社の薬局網が最初に名乗りを上げたことだ。米国ではワクチンの打ち手確保のため、看護師、薬剤師などによる接種が可能となった。そこでウォルマートは店舗併設の薬局でワクチン接種を最初に始め、さらに独自のデジタルワクチン証明も提供した。

 今ではウォルグリーン、CVSファーマシーなどの薬局チェーンから、大手小売のコストコまでがワクチン接種を提供しているが、初期には政府による接種会場、大手病院チェーンなどと並び、ウォルマートでの接種が強く推奨されていた。それにより、米国では「ウォルマートと医療」というイメージが強まった感がある。

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コロナ禍での遠隔医療使用率の推移。パンデミック発生以来、遠隔医療の使用は着実に増加している
(出典:CivicScience)

なぜ世界一の小売業がデジタルヘルスに注力するのか

 ウォルマートは元々、未来の成長分野としてデジタルヘルスに注目していた。2021年の時点で「バーチャルケア」「処方箋薬のディスカウント宅配」「統一電子カルテシステム」「デジタルヘルス推進のためのスタートアップとの提携」などを掲げていた。ウォルマートによると、こうした試みは今後数年以内に低コストで信頼性があり、消費者のニーズに見合う複数チャンネルの医療ケア提供の実現を目指したものだという。

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ウォルマートが描く医療エコシステム


 ウォルマートのヘルス部門上級副社長、マーカス・オズボーン氏は「多くの米国人があまり健康に対し熱心ではないという指摘があるが、それは個人というより制度の問題だと考えてきた」と語る。米国にはまだ健康保険未加入の人がCDCの調査によると2021年で9.6%、健康保険を持たない子供は4.4%存在するという。

 また、保険を持っていたとしても、医師にかかるためにはアポイントが必要であったり、医師が求めるX線検査などを受けるためには保険会社からの承認が必要であったりなど、他国と比べると医療サービスを受けるまでが非常に煩雑だ。オバマ政権時代に始まった医療保険制度改革(通称オバマケア)についても、採算が取れないため撤退する保険会社や病院が続出し、機能しているとは言い難い。

 そこで、全米どこにでもあるウォルマートのような店舗に、薬局だけではなく簡単なケアを行う施設で医療活動と処方箋薬の提供を同時に行うことで、米国の医療制度を改革できるという意見は以前から存在した。特に安売りのリテールとして米国のマイノリティーへの浸透が強いウォルマートは、現在の米国の医療による人種的不平等を解決できる可能性がある。

【次ページ】関連事業者と続々提携。ウォルマートの戦略と目指す先は?
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