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  • 2022/02/25 掲載

アマゾンがヘルスケア事業「Amazon Care」開始、1,000兆円市場を狙うGAFAMの動き

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2040年に米国だけで11兆8,000億ドル(約1,369兆円)に達する可能性があるヘルスケア市場。この巨大な市場を狙うGAFAMの動きが活発化している。アマゾンはこのほど、遠隔ヘルスケア&訪問医療を提供する新サービス「Amazon Care」を米国内で開始した。グーグルやマイクロソフトのヘルスケア分野での動きも顕著になってきている。GAFAMはそれぞれどのようにヘルスケア市場にアプローチしようとしているのか、その動向を探ってみたい。
執筆:細谷 元
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アマゾン、グーグル、マイクロソフトがヘルスケア市場で激突
(Photo/Getty Images)

ヘルスケア事業「Amazon Care」を開始

 世界GDPの10%を占めるといわれるヘルスケア支出。その巨大な市場を狙うGAFAMによる動きが今後一層活発化する可能性がある。

 2022年2月、アマゾンは米国でヘルスケア事業「Amazon Care」を開始。2019年に米アマゾン社員を対象に始めたパイロット事業を本格始動した形だ。

 Amazon Careとは、遠隔医療と訪問医療を提供する医療サービス。利用者は、医師による遠隔コンサルテーションを受けられるほか、看護師の訪問によるコロナ検査やワクチン接種サービスを受けることができる。
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「Amazon Care」は元々アマゾン社員を対象に始まった

 物理的な制約を受けない遠隔サービスはすでに米国全土で展開。一方、訪問サービスを利用できるのは現在8都市に限定されている。その8都市とは、アマゾンが本拠地を構えるシアトルに加え、バルティモア、ボストン、ダラス、オースティン、ロサンゼルス、ワシントン、アーリントン。2022年中にはニューヨーク、サンフランシスコ、マイアミ、シカゴを含め20都市まで拡大する計画という。

 米メディアが伝えるところでは、同国の遠隔ヘルスケア市場ではすでに複数の競合企業がひしめき合っており、アマゾンの参入で競争がさらに激化する見込みだ。

 現在、遠隔ヘルスケア市場でリーダー的存在なのがTeladoc Health。ニューヨーク証券取引所に上場しており、大型株指数ラッセル1000の構成銘柄でもある。

 Amazon Care事業がどれほどの規模に成長するのかは分からないが、Teladoc Healthのビジネス規模をベンチマークとして、推測することはできるだろう。

 Teladoc Healthの従業員数は4400人、2020年通期の実績は売上高10億9,300万ドル(約1,268億円)だ。ただし、同年は4億8,513万ドル(約558億円)の純損失を計上している。

 純損失とはなっているが、パンデミックによって高まった遠隔医療需要を着実に取り込んでおり、売上高の伸び率は特筆に値する。2019年の売上高は、5億5,330万ドル(約642億円)だった。2020年は2倍近く伸びた格好だ。

 同社ウェブサイトによると、現時点の米国における有料ユーザーは5150万人。2020年には、1050万回の訪問医療サービスを提供した。

 米国の遠隔医療サービスの拡大のカギとなるのが、法人顧客を取り込み、医療保険のネットワークを拡大することといわれている。Teladoc Healthの顧客数は1万2000社となっている。一方Amazon Careも、傘下のホールフーズや半導体企業Silicon Labs、人材会社TrueBlueなどを顧客として取り込んでいる。

Fitbit買収など、グーグルの動き

 アマゾンだけでなく、他のGAFAM企業でもヘルスケア分野の動きが活発化の様相だ。

 2021年に観察された市場動向からは、特にグーグルの動きが活発であることが見てとれる。

 グーグルは2021年1月に、ウェアラブルメーカーFitbitの買収を完了。Fitbitは、世界のウェアラブル市場で5番目に位置している企業だ。この買収完了により、グーグルによるウェアラブルを通じたヘルスケアビジネスの加速が予想される。

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グーグルが買収したFitbit

 IDCのレポートによると、世界のウェアラブル市場において最大シェアを占めているのはアップルだ。2020年709月期のウェアラブルデバイス総出荷台数は1億2500万台。このうちアップルが4140万台を出荷しており、市場シェアは33.1%に上る。グーグルに買収された後、Fitbitはウェアラブルデバイスで血圧を測定する臨床研究を開始している。

 またグーグルは2021年3月、米ボストンを拠点とする医療機関Beth Israel Deaconess Medical Center(BIDMC)と提携し、医療データ検索ツール「Google Care Studio」の試験運用を実施することを発表した。これは、医療関係者が患者の医療記録にアクセスできる検索ツールで、医療プロセスの効率化・迅速化が期待されるものだ。

 BIDMCは、まず50人の医師・看護師によってこの検索ツールのクオリティ、効果、安全性をテストするという。グーグルを含め民間企業による医療データの取り扱いはしばしば議論が巻き起こるトピック。この発表では、米国における医療記録の取り扱いを定めた「the Health Insurace Portability and Accountability Act of 1996」などの諸規則に準拠することが強調されている。

 さらにグーグルは2021年8月、近くにある病院の場所とレビューなどを検索できるヘルスケア用新ツールを発表。病院の場所だけでなく、レビューや米国の公的医療保険制度であるMedicareの利用可否などの情報も検索できるようになった。また12月には、この新ツールを通じて、各病院で利用できる言語についての情報が提示されるようになるなど、逐次アップデートされているようだ。

 PatientPopが米国で実施した調査では、医療サービスのレビューをどこで調べるのかという質問で、グーグルが69.3%と2位の各病院ウェブサイト(45.5%)を上回り1位となるなど、グーグルのヘルスケア分野における存在感は無視できないものとなっている。

【次ページ】マイクロソフト、史上2番目の大型買収でヘルスケア事業拡大へ
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