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- 2017/11/14 掲載
アマゾンによる「異業種参入」に備える、たった一つの方法
米NBCニュースの東京総局、読売新聞の英字新聞部、日経国際ニュースセンターなどで金融・経済報道の基礎を学ぶ。現在、米国の経済を広く深く分析した記事を『週刊エコノミスト』などの紙媒体に発表する一方、『Japan In-Depth』や『ZUU Online』など多チャンネルで配信されるウェブメディアにも寄稿する。海外大物の長時間インタビューも手掛けており、金融・マクロ経済・エネルギー・企業分析などの記事執筆と翻訳が得意分野。国際政治をはじめ、子育て・教育・司法・犯罪など社会の分析も幅広く提供する。「時代の流れを一歩先取りする分析」を心掛ける。
米国の処方薬市場は64兆円にのぼる
もともとオンラインの書店だったアマゾンは、食品・衣料・クラウド・物流・小売実店舗・コンテンツ制作など、市場規模の大きい業界や業態に次々と殴り込みをかけ、制覇を成し遂げつつある巨人だ。今や、どの業界や業態においても、「いかにアマゾンに食われないか」が経営の合言葉になっている。しかし、アマゾンが攻めにくい分野も存在する。それは、各種の規制で守られたアルコール飲料や医薬品、さらに医療などだ。複雑かつ多岐にわたる規制のため、アマゾンお得意のスケールメリットによるコスト削減の効果が出にくいのだ。
だが、米処方薬市場は年間5,600億ドル(約64兆円)と、アマゾンが放っておく規模ではない。参入は「もしかすると」ではなく、時間の問題だとみられている。米処方薬・市販薬小売業界は、アマゾン来襲を既定路線と受け止め、撃退のため合従連衡や業態の複雑化などの対策を講じ始めている。
アマゾン参入を裏付ける証拠
アマゾンの処方薬・市販薬販売への参入についてはすでに多くの兆候が表れている。オレゴンやネバダなど12州では、処方薬小売のライセンスを取得。さらに、「1492」と呼ばれる医療ITプロジェクトを立ち上げ、アマゾンのクラウドを利用したカルテの電子化や、同社のAIアシスタントであるAlexaやスマートスピーカーのEchoを使った遠隔医療システムの可能性を探っているという。アマゾンは、処方薬・市販薬販売や医療サービスを一体化し、さらにより大きな生活全般をカバーする小売とのデータによるシナジーを狙っているフシがある。
具体的には、アマゾンがブランド衣料より安価なプライベートブランド(PB)衣料で成功を収めつつあるように、有名製薬メーカーが販売するブランド薬よりも安いジェネリック医薬品の製造販売に乗り出す可能性がある。これには、製薬企業の買収が含まれるだろう。
また、ブランド薬品企業と提携して、アマゾンのサイト上で医薬品を販売する可能性が指摘されている。多発性硬化症、血友病、がんなど、利幅の大きい特殊な疾病の治療薬から参入すると見られている。さらには、医療保険の一部である処方薬保険の販売にまで進出を考えているとするアナリストもいる。
【次ページ】見事なアマゾンへの対抗策とは?
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