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米ネット小売大手のアマゾン・ドットコムが、自社プライベートブランド(PB)のアパレル製品の売り上げを大幅に伸ばし、注目されている。下着からドレスまで、有名ブランドへのこだわりが薄れているミレニアム世代を中心に人気を集め、ついにスポーツウェア分野まで進出した。アマゾンに出品される他社製品の売れ筋データを把握し、そのスタイルや傾向をまるごと「パクる」戦略が当たっており、アパレル各社は戦々恐々だ。だが、アマゾンのPBは衣料だけでなく、あらゆる商品分野で若い消費者を同社の生態系に取り込んでしまう、より大きな戦略の一部に過ぎない。
乾電池やサプリからアパレルへ
ネット小売業者にとって、他社の製品より、コストをコントロールできる自社の商品を販売した方が、利潤が高くなることは常識だ。アマゾンは、まず競合よりも安い乾電池や携帯のUSB充電コード、おむつやおしりふき、ヨガマット、ビタミンサプリ、さらに日常用の下着など、消費者がブランドにさほどこだわらないと思われる分野から参入を始めた。
これらの商品は、その意図する使われ方を象徴する「アマゾンベーシック」「アマゾンエレメンツ」のPB名で販売されており、この1年間の売上が
2億5000万ドル(約280億円)と、同社のPB全体の売上の85%を占める。
だが、「アマゾンベーシック」は、自社ブランド展開の“踏み台”に過ぎない。同社が目指すのは、「アマゾンベーシック」以外の各種自社ブランドの拡大で、年間売上
3600億ドル(約41兆円)の米衣料市場を手始めに、小売全体の覇権を握ることであるからだ。
アマゾンはまず2016年2月に、ウィメンズ・アパレルPBの「ラーク&ロー」を立ち上げ、売上が2016年の500万ドルから2017年には
1000万ドルに倍増する見込みだ。これは、2017年の衣料全体売上2100万ドルの1/2近くであり、浸透に時間がかかることが多いブランドのなかで、アマゾンの新ブランドが急速に普及していることを示す。
特に重要なのが、アマゾンのPB衣料売上において、ドレスの売上が43%を占めていることである。消費者が、「アマゾンのPBは決してダサくなく、ファッション性がある」と認知している証拠であるからだ。
PB戦略の主標的は若年層
アマゾンのオリジナルPBアパレルの売れ筋の一つに12ドル(約1350円)の「メンズ・コットン・ポロシャツ」がある。これはメンズ部門でトップブランドである「ドッカーズ」の同等商品の明らかなパクリであり、しかも半額だ。
似たようなデザインで、品質もそこそこ、価格は半分であれば、ブランドへのこだわりが少なく節約志向の若者がPBを選ぶのは当然だ。有名ブランドは、アマゾンに太刀打ちできないわけだ。
アマゾンは「ラーク&ロー」の他にも、「ボタンド・ダウン」や「メイ・アンド・グッドスレッズ」「ソサエティ・ニューヨーク」など数十のPBブランドを、ターゲット顧客層や価格帯に合わせて展開しているが、ここまでの成功はアマゾンにも想定外だったようだ。
事実、2017年7月の「プライムデー」では、PB商品の品切れが相次いだ。アマゾンのPBブランド認知はこうしたイベントを通して確実に高まっており、年末商戦ではさらに認知度と売上が伸びると予想されている。
こうしたなか、アマゾンのPB展開戦略で中心的なターゲットになっているのが若年層だ。
調査会社スライス・インテリジェンスによれば、2016年の米オンラインアパレル売上において、18歳から34歳のセグメントでは、アマゾンは他のどのベンダーよりもパフォーマンスがよかった。
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アンケート調査によると、49%がオンラインショッピングでアマゾンが1位だと回答している。このミレニアム世代こそ、アマゾンのPB戦略の主なターゲットだ。
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