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ヤマト運輸の当日配送撤退を受け、アマゾンが独自配送網の構築に乗り出した。以前から予想されていた通り、アマゾンが組むことになったのは、3PL(サード・パーティ・ロジスティクス)企業だった。今後のネット通販は、物流網がカギを握ることになるが、3PLの形態はますます注目されることになるだろう。一方、米国を見れば「アマゾンフレックス」といったシェアリングエコノミーにも乗り出しており、日本でも展開が予想される。
アマゾンが「ヤマトの後」を依託したのは3PL企業
アマゾンは、有料会員(プライム会員)などを対象に、注文当日に商品を届ける「当日配送サービス」を提供しているが、これまでは荷物の配送を主にヤマト運輸に依託してきた。しかし、ヤマトは人手不足などへの対応から値上げを検討するとともに、当日配送から撤退する方針を示した。
ヤマトの撤退を受け入れてサービス水準を落とすか、新しい配送網を構築するかの二者択一を迫られたが、アマゾンが選択したのは、自社配送網の拡大だった。同社が3PLを使った自社配送網の強化に乗り出すのではないかという予想は以前から存在したが、ヤマトの値上げ表明からほとんど時間が経過していないことを考えると、水面下で準備を進めていた可能性が高い。
アマゾンが、東京都心部の配送網について提携するのは3PL事業者の丸和運輸機関である。3PLは、物流網の構築を望む顧客に対して、最適な物流システムの構築をアドバイスし、場合によってはその業務の一部あるいは全部を請け負う企業のことを指す。
荷主企業(ネット通販や小売店など)が自社にとって最適な物流網を構築するためには、物流システムの設計や物流センターの運営、配送網の構築など多くの業務をこなさなければならない。
一般的に、運送会社は依頼された荷物を指定の場所に届けるのが仕事であり、物流全体に責任を追っているわけではない。
それに対して、3PLは、荷主企業から依頼を受け、物流システム全体を設計し、必要に応じて実務も請け負う。3PLという業態があれば、荷主企業は自社に最適化された専用の物流網を短期間で構築し、実務をアウトソーシングすることが可能となる。
3PLという業態は1990年代に米国で発達したものだが、近年、日本においても規制緩和が進んだことや、物流に対するニーズの多様化によって注目を集めている。
アマゾンからの依頼のほうが条件が良いのか
丸和は、軽貨物自動車運送サービスである「クイック桃太郎便」を手かげており、イトーヨーカドーのネット・スーパーの配送業務やマツモトキヨシの物流システム運営などを請け負ってきた。
アマゾンの配送網構築には、クイック桃太郎便で蓄積されたノウハウが投入される可能性が高い。各種報道によると、丸和が個人の運送業者を組織化し、約1000台の軽貨物自動車とドライバーを確保。早期に1万人体制まで人員を拡大する予定だという。このニュースを受け、丸和の株価は一時、5%上昇するなど株式市場でも大きな話題となった。
最大の注目点は、ヤマトが撤退した業務を丸和がスムーズに受託できるのかという点だが、業界ではそれほど難しくはないとの見方が大半だ。その理由としては、現場で配送業務を担うのが個人事業主であるという点が大きいという。
貨物運送業は政府による許認可事業であり、この業務を行うためには業務の種類に応じて国土交通省の許可などが必要となる。その中のひとつに貨物軽自動車運送事業というカテゴリーがあるのだが、手続きが非常に簡便という特徴がある。軽トラック1台あれば、届け出だけで事業を始めることができるので、脱サラなどで気軽に運送業を始める個人も多い。
2016年3月末時点における全国の事業者数は15万を超えており、関東圏内だけでも6万以上の事業者数がある。こうした個人事業主の運送事業者は、多くが大手運送会社の下請けとして業務を行っているが、一部の事業者は大手運送会社からかなり厳しい条件を課されているともいわれる。
アマゾンから提示されている配送料金は、大企業のヤマトとしてはかなり安い金額であり、それ故にヤマトは利益確保という観点から撤退を決めた。だが、さらに厳しい条件を課されている下請けの事業者にとっては、3PLを経由したアマゾンからの依頼の方が格段に条件がよくなるケースが出てくるという。場合によっては、大手運送会社の下請けで苦しんでいた個人事業主が、一気にアマゾンに流れる可能性もあるわけだ。
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