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このところ物流の分野において、大きな動きが相次いでいる。背景にあるのは、ネット通販ビジネスの質的・量的拡大である。これまでもリアルからネットへという流れが続いてきたが、アマゾンをはじめとするネット通販各社がより積極的なサービスを打ち出し始めたことから、競争は次のステージにシフトしている。リアルとネットの主従関係が逆転しつつある今、物流網をいかに構築できるのかが、勝敗の分かれ目となりつつある。
新しい物流センターが圏央道沿いに集中立地
最近、首都圏では圏央道(もっとも外側に位置する環状道路)沿いに次々と大型物流センターが建設されている。投資を主導しているのは物流施設を得意とする外資系の不動産会社で、REIT(不動産投資信託)と組み合わせた形の開発が多い。
こうした外資系企業のひとつで、シンガポールを拠点とするグローバル・ロジスティック・プロパティーズ(GLP)は昨年12月、2022年をめどに神奈川県相模原市に日本最大の物流倉庫を開設すると発表した。約29万5000平方メートル(東京ドーム約6個分)という広大な敷地に、1300億円を投じて6棟の巨大な物流施設を建設する。延べ床面積は65万平方メートルとなり、日本における物流施設としては最大規模となる。
この場所は神奈川県と東京都多摩地域の人口密集地帯に近く、圏央道を通じて東名自動車道や中央自動車道と容易に接続できる。圏央道がすべて完成すれば千葉県や茨城県へのアクセスも可能となり、関東全域への出荷に対応できる。このため圏央道沿いには、多くの物流施設が作られており、最近ではちょっとした建設ラッシュの様相を呈している。
同社は、神奈川県厚木市、綾瀬市、座間市、埼玉県日高市などにも次々と物流施設をオープンさせている。同じく外資系のプロロジスも都心を挟んで反対側あたる千葉県を中心に物流施設の建設を進めている最中だ。
一連の動きの背景にあるのは、ネット通販サービスの高度化である。近年オープンしている物流施設は新しい世代に対応したもので、ネット通販の事業者が仕分けシステムなどを構築できるよう、ゆとりのある構造となっている。既存の物流施設が数多く存在しているにもかかわらず、これほどの建設ラッシュとなっているのは、新しいネット通販に対応できる施設が思いのほか少ないからである。
アマゾンが先鞭を付けたロボット物流センター
物流センターのシステム化ではアマゾンがもっとも先に進んでいる。同社は昨年8月、最新の物流センターを川崎市にオープンしたが、このセンターには、国内初となるロボットによる商品管理システム「アマゾンロボティクス」が導入された。同システムは、米アマゾンが買収したロボット・ベンチャーである米キバ・システムズの製品をベースにしたもので、米国では16拠点、欧州では3拠点で導入されている。
商品棚の下に薄い形状をした自走式のロボットが入り込み、棚ごと持ち上げて前後左右に移動する。倉庫内での配送と商品の保管を両立できるので、従来の物流センターよりも大幅にスペースを節約できるのが特徴だ。
アマゾンはネット通販企業の中でも自社の物流網に強いこだわりをもっており、約10カ所の物流センターを自前で運営している。その中でも最大規模となっているのが2013年に稼働した小田原の物流センターで、延べ床面積は約20万平方メートルに達する。米アマゾンの物流センターの平均的な面積が11万平方メートルであることを考えると、小田原の施設は世界的に見ても大きい部類に入る。
アマゾンFC一覧 |
| 拠点名 | 所在地 | 開設時期 |
1 | アマゾン市川FC | 千葉県市川市 | 2005年11月 |
2 | アマゾン八千代FC | 千葉県八千代市 | 2007年10月 |
3 | アマゾン堺FC | 大阪府堺市 | 2009年10月 |
4 | アマゾン川越FC | 埼玉県川越市 | 2010年7月 |
5 | アマゾン大東FC | 大阪府大東市 | 2010年11月 |
6 | アマゾン川島FC | 埼玉県比企郡 | 2011年10月 |
7 | アマゾン狭山FC | 埼玉県狭山市 | 2011年10月 |
8 | アマゾン鳥栖FC | 佐賀県鳥栖市 | 2012年5月 |
9 | アマゾン多治見FC | 岐阜県多治見市 | 2012年11月 |
10 | アマゾン小田原FC | 神奈川県小田原市 | 2013年9月 |
11 | アマゾン大田FC | 東京都大田区 | 2015年10月 |
12 | アマゾン西宮FC | 兵庫県西宮市 | 2016年9月 |
13 | アマゾン川崎FC | 神奈川県川崎市 | 2016年8月 |
Prime Now FC一覧 |
1 | アーバンFC世田谷 | 東京都世田谷区 | 2015年11月 |
2 | アーバンFC大阪 | 大阪府大阪市 | 2016年1月 |
3 | アーバンFC横浜 | 神奈川県横浜市 | 2016年1月 |
4 | アーバンFC江東 | 東京都江東区 | 2016年2月 |
5 | アーバンFC豊島 | 東京都豊島区 | 2016年11月 |
主なFCの延床面積 |
アマゾン小田原FC:延床面積 約60,000坪(約200,000平米)
アマゾン多治見FC:延床面積 約24,000坪(約80,000平米)
アマゾン鳥栖FC:延床面積 約19,700坪(約65,000平米) |
(出典:アマゾン提供資料、2016年12月時点) |
これに加えて、アマゾンは有料会員向けサービスである「プライムナウ」の強化を進めている。これは専用アプリから注文を受け付け、1時間以内に配送するというもので、これまで東京や大阪の一部地域が対象だったが、東京については23区すべてが対象エリアとなった。
アマゾンはプライムナウの実施にあたって、既存の物流センターとは別に、消費者に近い場所に小規模な配送センターを複数開設した。拠点となる物流センターの下に、地域密着型の小さな配送センターを置くことで、運送会社を介さない最終顧客への直接配送を実現している。
【次ページ】誰が顧客への最終配送ルートを握るのか?
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