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- 2024/08/28 掲載
ある強敵の侵略で「関東の食品スーパー」大ピンチの理由、生鮮売場が弱いとヤバい?
【連載】流通戦国時代を読み解く
絶好調ディスカウントストア、今何が起きている?
小売大手ドン・キホーテの運営会社であるPPIH(パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス)をはじめ、ディスカウント系と言われる上場小売チェーンの決算(5月期、6月期)が発表されたが、各社軒並み増収増益と好調であった。3月に上場したトライアル、コスモス薬品、クスリのアオキ、ゲンキーといった「フード&ドラッグ(格安食品の売上が過半を占めるドラッグストア)」業態の企業も、「ディスカウント系のチェーン(生活必需品などを取りそろえる小売業)」の仲間として考えると、どの企業も1割からそれ以上の増収や増益を達成している(図表1)。
半期決算となるが、消費者に人気の高い業務スーパーを運営する神戸物産も1割増収を達成、増益となっている。
こうしたディスカウント人気の背景は、言わずと知れた実質的な所得の目減り、である。あらゆるものの値段が上がっていくインフレに転換したにも関わらず、賃上げが十分に追いついていない、ということである。
小売各社の決算内容からも、“低価格”が消費者から評価されていることが伺える。たとえば、イオンの低価格プライベートブランド(PB)である「トップバリュ」の2023年度通期伸び率はプラス10.9%、2024年度1Q伸び率がプラス7.4%となっている。非上場ながら決算開示を行うディスカウントスーパーのオーケーの2023年度既存店売上増減率はプラス8.8%だった。
進出したら確実にシェア奪う? 強すぎる“ある業態”
ここまで挙げた好調企業のうち、ドン・キホーテや業務スーパーと言えば、ほぼ全国にあるため見かけるかもしれないが、トライアルは九州エリア・福岡県出身のため、6割以上の店舗が近畿以西エリアにあるほか、大黒天物産(主要業態はラ・ムー)も岡山県出身であるため、大半の店が近畿以西と日本海側にある。コスモス薬品、クスリのアオキ、ゲンキーなどのフード&ドラッグ3社も地方出身であり、コスモス薬品は宮崎県発祥で今は福岡県に本社を構えているほか、クスリのアオキは石川県、ゲンキーは福井県が本拠地である。
こうした事情から、少し前までこれら企業の店舗は、関東以東エリアではあまり見かけることがなかった。
しかし現在、フード&ドラッグ業態については、急速に店舗数と出店エリアを急拡大しつつある。この動きは、ドラッグストアよりも、食品スーパーの競争環境に大きな変化をもたらしつつある。売上の過半が食品であるフード&ドラッグ業態の企業は、一度進出すると、ひたすらにそのシェアを拡大していくため、地域における食品スーパーの売上を“確実に奪う”のである。
実際に、どれほどの勢いで地方エリアは浸食されているのか。ここからは、九州・中部・関東エリアにおける、フード&ドラッグ業態をはじめとしたディスカウントストア勢と、地場の食品スーパーの攻防を詳しく解説する。 【次ページ】九州から「6,000億円規模」のシェアを奪った“ある会社たち”
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