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2010年頃から横ばいが続き、成長が止まりつつある牛丼チェーン市場。足元では物価高騰により苦戦を強いられており、今後、さらに各社の競争は激しくなることが予想されている。そうした中、現在「吉野家」「松屋」に大差を付け、牛丼チェーン業界の首位を走っているのが、ゼンショーグループが運営する「すき家」だ。同じ商品を扱いながら、なぜこれほどの差が付いているのか。その理由は「味」以外のところにあるようだ。
ロッテリアを買収した「ゼンショーグループ」とは何者か?
2023年2月、ハンバーガーチェーン国内第3位のロッテリアを、ゼンショーグループ(以下、ゼンショー)が買収したというニュースが報じられた。
ハンバーガーチェーン国内3位と言っても、上位企業と比較すると、売上には大きな開きがある。業界1位は日本マクドナルド(3,523億円、2022年12月)、2位はモスバーガーを運営するモスフードサービス(784億円、2022年3月)となっている。一方、ロッテリアの売上は非公開であり、一部では200億円程度と報じられている。
ロッテリアの創業は1972年と業歴50年超の老舗ではあるが、経営再建中という時期も長く、ロッテグループという巨大企業の後ろ盾がなければ、到底ここまでやってこれなかった可能性が高い。一定のファン層を抱えているとはいえ、決して勝ち組とは言えない存在なのだ。
そんなロッテリアを買収したのが、ゼンショーなのだが、この名前を聞いてもピンとこない方は多いのではないだろうか。
実はゼンショーは、誰もが知っている牛丼チェーン「すき家」から発祥した複合的外食グループであり、その売上は6,585億円と外食業界最大手に位置付けられる企業だ。
グループ傘下の企業は、牛丼(すき家、なか卯など)、レストラン(ココス、ビッグボーイ、ジョリーパスタ、華屋与兵衛など)、ファストフード(回転寿司のはま寿司など)、および小売(食品スーパー)など多岐にわたっているが、すき家、はま寿司以外は、そのほとんどがM&Aによって買収した企業で構成されている(図表1、2)。
ゼンショーの「すき家」を起点とした成長サイクル
ゼンショーの戦略をざっくりと表現するなら、下記のようになる。
(1)牛丼チェーンというファストフード業態を通じて磨いたオペレーションの効率化ノウハウを構築
(2)蓄積した効率化ノウハウを背景に業績不振企業を買収
(3)効率化ノウハウの投入によって買収企業を再生
(4)「M&A」→「再生」→「規模拡大」を繰り返し、グループ業容拡大
(5)グループ拡大を背景とした規模の利益により原材料や物流などのコストを低減
ゼンショーは2000年以降、ファミレス、焼肉、ハンバーグ、牛丼とM&Aを進めることで、肉類の調達力を強化しつつ、各社の収益改善を実現していった。そしてそのグループ力を背景に、当時牛丼トップだった吉野家を追い抜き、追い越して、まずは牛丼チェーンのトップ企業となり、その後、外食の最大手に成長していった。
こうした経緯を考えれば、ゼンショーとは外食業界の再生工場とも言える存在であり、長らく停滞していたロッテリアも名前を変えて生き残れる存在になる可能性は高いのだろう。
ちなみに、2000年代初頭までは牛丼と言えば吉野家であり、すき家、松屋は後発組といったイメージだった。店舗数の推移を見ると、2009年にすき家が吉野家を抜き、今では圧倒的にすき家が多くなったことが分かる(図表3)。
その間、吉野家の店舗数はほぼ横這いで推移、松屋にも差を詰められており、松屋の始めたとんかつ業態(松のやなど)を含めると、店舗数ではほぼ追いつかれた。
見事な成長サイクルにより拡大したゼンショーのすき家だが、なぜこれほどの差を付けることができたのだろうか。その秘密は、同社の秀逸な出店戦略にあった。
【次ページ】すき家が圧勝できた理由、秀逸すぎる「出店戦略」
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