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国内有数の優良小売チェーンとして、大都市圏に多くのファンを抱える「無印良品(良品計画)」。そんな良品計画が今、大きな戦略転換を進めている。同社は新たに「食品スーパー隣接エリア」に出店を拡大しようとしているのだ。しかし、食品スーパー隣接エリアの市場には、すでにニトリやダイソーなどの競合企業が多数存在する。良品計画はこれら競合企業に勝ち目があるのだろうか。
国内有数の優良小売チェーン「良品計画」の実力
「無印良品」を展開する良品計画の2022年8月期第3四半期決算は、増収とはなったものの大幅な減益となり、通期見通しも下方修正することが発表された。その要因として決済資料では、不定期開催されるセール「無印良品週間」における値下げの実施による粗利率低下と、円高、輸送費高騰による調達コストが上昇したことにより大幅に減益となった、と説明されている。
ベーシックな商品について「長い目で見てこの価格で販売できる」と決めたものは価格を維持したい、と表明しており、コスト上昇による利益圧迫が当面続くようだ。とは言いながら、2022年8月期の通期業績は、売上高4,700億円(前期比プラス3.6%)、営業利益260億円(前期比マイナス38.7%)という予想であり、良品計画が日本有数の優良小売チェーンであることは揺るぎもない。
ファーストリテイリング(ユニクロ、GU)、ニトリなどと並び、日本を代表する製造小売業(SPA)である良品計画は、日本では数少ない海外進出に成功している小売業でもある。図表1の2022年8月見通しを見ると、国内売上が2,997億円に対して、海外売上は1,703億円と、売上の3分の1以上を海外で稼ぐほどの海外基盤を築いている。
中でも、中国、台湾、韓国の東アジア地域がその中核をなしており、売上1,200億円超、営業利益約190億円と国内事業と並ぶ収益の柱となっている。コロナ禍の影響から近年の伸びは鈍っているものの、今後も海外がこの会社の成長余地となることは間違いなかろう。
なぜ良品計画は「食品スーパー隣接エリア」に出店を決めた?
そんな良品計画は、2021年7月から新たな中期経営計画に取り組んでおり、2024年には売上7,000億円(日本4,500億円、海外2,500億円)、営業利益750億円、2030年には売上3兆円、営業利益4,500億円を目指すという壮大な計画だ。
これ自体は良品計画が目指す姿として驚くにはあたらないのであろうが、その過程における国内店舗網の拡大の戦略が、これまでのイメージとはかなり異なる。それは「地域密着型の事業モデルを作り上げ、全国津々浦々に向け、収益性を担保しながら出店加速する」というものであるが、これを見ると、これまで選んできた出店立地とは大きく戦略転換していることが分かる。
「無印」と言えば大都市部のターミナル商業施設に加え、郊外・地方では大型商業施設という広域からの集客能力がある一等地に絞った店舗網を構成している。そのため、出店地域が3大都市圏に偏在するというイメージがあり、地方への出店は限定的であった。
それが今後は「人口60万人の商圏ごとに、すべての商品・サービスを提供する『生活全部店(2000坪:売上25億円)』を1店舗、食品スーパー横に標準600坪(売上10億円)規模を6店舗、駅前店・コンビニ拠点・新宅配など(5億円)で合計売上90億円」を展開する、というのである。
これは出店の根本的な見直しであるとともに、対象顧客層を大きく拡大するというマーケティング戦略の本源的見直しにほかならない。
これまで広域商圏の立地を選んでいたのは、「無印」の主な対象顧客層が、「MUJI」という世界観に共感する特定層であるという設定による。全体から見れば少数の特定層を広域から集めることで、売上を成立させるビジネスモデルだ、という認識から広域商圏立地に出店していたのである。
しかし今後、食品スーパー隣接にまで出店立地を広げていくのは、歴史を重ねることで、地方、郊外にも特定層は一定数以上存在するようになった、と判断したということなのだろう。
【次ページ】競合ニトリが展開する「デコホーム」が手ごわい理由
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