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  • 2022/01/13 掲載

最強ニトリの凄すぎる「出店戦略」、増収増益を生む「エリアの見極め」とは?

【連載】流通戦国時代を読み解く

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家具業界大手のニトリがホームセンター大手の島忠を買収してから1年が経過した。島忠の買収によりさらなる成長を遂げたニトリだが、そもそも島忠の買収に乗り出した狙いは何だったのか、次にニトリが狙うマーケットはどこか。これらの謎を解く鍵は、小売業の勝敗を決める「立地」のカラクリを理解する必要がある。本記事では、小売業界を制するために必要な立地の考え方を紹介しつつ、増収増益を続けるニトリの優れた出店戦略を解説する。
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なぜ、ニトリは島忠を買収したのか?なぜ、ニトリの新業態「デコホーム」「N+」は勝ち目があると言えるのか?
(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)


ニトリの島忠TOBの評価とは

 2020年12月、ニトリのホームセンター島忠へのTOB(株式公開買い付け)が成立した。それから1年が過ぎて、島忠の店舗は「ニトリホームズ」「ホームズ」に変わりはじめ、「島忠」という社名は残っているものの、その看板は減りつつある。家具売場にはニトリの家具が、インテリア雑貨やホームセンターの売場にもニトリPB(プライベートブランド)のホームファッション製品が数多く並ぶようになった。

 このような変化があったものの、島忠のニトリグループ入りが決まった当初、島忠ファンに懸念されたような完全なニトリ化が進んでいるわけではなく、品添えの幅が維持された売場は島忠のホームセンターとしての機能を十分に残している。

 業界の流れとしても、多様な品揃えは維持しつつも、PB化推進によって収益を確保していこうとするのが主流だ。ニトリ傘下入りによって島忠のPB化は急速に進みつつあり、こうした取り組みを続けていけば、PB化で業界の先頭を走る絶対王者カインズの背中が見えてくるかもしれない。

なぜ、島忠は提携の道を選ぶことになった? 不振の理由とは

 そもそも、大手ホームセンターの一角を占め、収益力も高い優良企業であった島忠が他社とのアライアンスを検討せざるを得なかった背景は、その成長余地の喪失にあったと言って良い。

 埼玉県から出て首都圏16号線の内側エリアを中心に店舗展開していた島忠は、首都圏の人口増加を背景に一戸建てエリアの家周り需要、家具需要を取り込んで成長し、売上1,500億円クラスのホームセンター大手となった。

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国道16号線

 ただ、地方で成長した北関東のカインズやジョイフル本田などの有力ホームセンターに16号線の外側の市場を押えられたことから、出店エリアを拡張出来ず、売上の頭打ちが続いていた。また、家具店出身の島忠の強みであったリーズナブルな家具売場が、ニトリの郊外進出で競争力を失いつつあったことも、外側への進出を難しくしたという見方もある。

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売上が頭打ちの状況が続いていた島忠…
(出典:島忠HP、ニトリIR資料より筆者作成)

 こうした首都圏の16号を境界とした小売立地の棲み分けは、モータリゼーションによってもたらされ、クルマ社会化した外側と、しなかった内側とでは小売立地の構造は分化した。ホームセンター業界は広い駐車場を備えた大型店舗を大量に出店出来る「外側」を勝ち抜いた企業が上位を占めていて、「内側」大手の島忠は「外側」への進出を阻まれていたのである。

 とはいえ、「外側」の業界上位企業にしても、地方、郊外の人口減少による市場縮小傾向が顕著となっている今、人口が保たれている大都市圏の「内側」マーケットの獲得は喫緊の課題であり、ホーマックやコーマ、ケーヨーデイツーを傘下に持つ業界大手DCMホールディングスと島忠の経営統合提案が浮上したのである。

ニトリの島忠TOBの狙い、国道16号「内側エリア」が重要なワケ

 北海道から出て地方エリアから家具インテリア業界の圧倒的トップシェアを獲得したニトリにとっても、国道16号線の「内側」のマーケット獲得は大きな課題だった。ホームセンターという家具やインテリア雑貨など商品面で重複する業界で、かつ、「内側」に確固とした店舗網を築いている島忠は最適のパートナー候補であり、DCMにさらわれることは看過出来なかったのである。

 ニトリ、DCMによる島忠争奪戦が行われてから1年が経つが、その間、大都市圏「内側」マーケットを巡る争奪戦は、ドラッグストア業界でも、食品スーパー業界でも起こった。

 関西の「内側」で大きなシェアを持つココカラファインを、首都圏のマツモトキヨシと中部圏のスギ薬局が争った末に誕生したマツキヨココカラホールディングス。この結果、ドラッグストア「内側」マーケットでは、圧倒的なシェアを持った実質トップグループが誕生した。


 食品スーパー業界では、つい最近、話題となった関西スーパーを巡るH2Oリテイリングとオーケーの争奪戦は記憶に新しい。これも京阪神の「内側」マーケットを東西「内側」トップシェアが奪い合ったというものだ。

 この勝者となったH2Oは、「グループ企業+提携スーパー万代」の合計シェアが45%以上(大阪、兵庫、京都のスーパー販売額が分母、経済産業省商業動態統計より)を占めるようになり、京阪神食品スーパー市場は「H2O+万代」、ライフコーポレーション、イオングループの3社で8割のシェアを持つ寡占化マーケットとなった。

 話をニトリに戻せば、1年前、地方出身のニトリも大都市圏の安定的需要を押えるために首都圏「内側」に展開する島忠の店舗網を傘下に入れ、大都市マーケットにおけるシェアアップを着実に前進させた。

 ただ、ニトリの大都市攻略作戦は島忠争奪戦から始まった訳でもなく、従前から大都市への進出を目指して、業態開発や事業の多様化に取り組んできた。ここからは、ニトリの大都市の「内側エリア」のシェア獲得のために進めてきた戦略を解説する。

【次ページ】ニトリの大都市攻略、「デコホーム」「N+」が“勝算あり”の理由
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