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最近、「まいばすけっと(以下、まいばす)」というミニスーパーの増殖が著しいことに気づく。まいばすとは、コンビニと同程度のスペースに、生鮮から惣菜までの食品スーパーの取り扱い商材を凝縮して提供するミニ食品スーパーだ。イオングループ(以下、イオン)のまいばすは、基本東京23区、川崎市、横浜市にしか出店していないため、馴染みが薄い人もいるかもしれないが、2021年2月期決算で921店舗、売上1994億円と、すでに一大勢力となっている。そんなまいばすが、現在コンビニの近隣に出店を増やしている。なぜ、まいばすをコンビニのそばに作るのか。イオンの狙いを解説する。
打倒コンビニとして登場した「まいばす」
経済産業省の商業動態統計によれば、2020年のコンビニ市場規模は11兆6,423億円ということだが、大手コンビニの2020年度ベースの売上は、1位セブンイレブンで4兆8,706億円、2位ファミリーマートで2兆7,643億円、3位ローソンで2兆3,497億円となっており、上位3社のシェア合計は85.8%という寡占状態だ。
コンビニ業界の陣取り合戦はもう勝負あり、という感じなのだが、この3社の経営資本を見ると、セブンイレブンは「セブン&アイホールディングス」、ファミマは「伊藤忠商事」、ローソンは「三菱商事」であり、2大流通グループであるはずのイオンの名前はない。
コンビニ4位までを見ると、イオン傘下のミニストップが2,909億円となっているが、そのシェアはわずか2.5%だ。はっきり言って、コンビニ市場においてイオングループは完全に敗退したと言えるのである。
しかし、流通の覇者を目指すイオンにとって、こうした状況は看過しがたく、コンビニキラーとして開発した「まいばす」を投入してリベンジを図っているのである。
まいばすがコンビニ市場をターゲットとしていることは、その出店場所を見ても明らかで、コンビニの隣、もしくは、ごく近隣に出店するのが一般的だ。実際、「まいばす」の新店情報の住所を調べてみたが、6月後半~7月の期間に出店された8店舗のうち、7店がコンビニの隣か近隣で、その相手はセブン5店、ファミマ、ローソン各1店となっていた。
出店場所がコンビニ跡地である場合もあるが、そうでなくとも近隣を狙うというイオンの戦略なのだ。コンビニの隣に出して、コンビニの客を奪う、さらに言えば流通覇者としてのライバル、セブンに戦いを挑む、これが「まいばす」に課せられた使命なのである。
コンビニとの違いは?「取扱商品」「価格」を比較
まいばすとコンビニは、一見似たような店ではあるが、置いている商品や、運営の仕組みが少し異なる。
コンビニと違う点を挙げると、生鮮品の取り扱いがある、または、スーパー価格なので値引きしないコンビニより価格が安い、といったところになるだろう。
まいばすは、生鮮品のひと通りの品揃えがあり、近所でちょっと補充をしたいというニーズに十分応えることが出来るので、コンビニとは異なる目的の消費者を呼び込むことが可能である。
また、まいばすはイオンの仕入れ力を背景とした価格設定を行っているため、コンビニで買うよりも、ほぼ確実にトータルでは安く買い揃えることが出来る。イオンのプライベートブランド「TOPVALU」も豊富に投入されているため、かなりお安くお買い物が出来るということもある。
実際に入店してみると分かるが、まいばすとコンビニで重複する商品ジャンルは多く、「ほぼ同じものが安く買える」ということが徐々に認知されれば、コンビニのリピート客のうち一定割合をまいばすは着実に奪うことが出来そうだ。このように、まいばすは、近所で、生鮮がほしい、または、コンビニニーズを安く買いたい消費者を奪おうとしていることが分かる。
【次ページ】まいばす、コンビニの隣に出店する狙いとは
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