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食品スーパー業界は、他の業界とはまったく異なる競争原理が働いている。たとえば、全国の食品スーパー売上トップに君臨するライフコーポレーションですら、全国エリアを制覇しているわけではなく、出店エリア以外ではまったく認知されていない。このように、大手食品スーパーであっても勢力圏が限定的であるために、あまり大手企業同士が直接対決をするような状況は生まれにくいのだ。しかし、関東エリアには、勢力圏が重なり直接対決をしている大手企業が存在する。それが、「ベルク」と「ヤオコー」だ。両社の争いから、食品スーパー業界における戦い方のポイントを解説する。
食品スーパー業界は群雄割拠
コロナ禍の巣ごもり需要の追い風で、上場食品スーパーの売上上位企業は軒並み増収増益となっている(図表1)。と言っても、今回この表を紹介しているのは、食品スーパーの巣ごもり需要の恩恵について見せたかったわけではなく、食品スーパーの業界上位企業は、色々な地域に割拠しているということを示すためだ。
食品スーパー業界は上位企業と言っても、ユニクロやニトリ、ヤマダデンキなどといったほかの小売業態とは違い、全国制覇している企業が存在していないことは、実はあまり知られていない。
たとえば、売上1位のライフコーポレーション(以下、ライフ)は東京と大阪の都市部のみで展開している。2位のユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(以下、U.S.M.H)にしても、首都圏都市部を中心に展開するマルエツと、茨城・千葉中心のカスミなどイオン系食品スーパーを、親会社イオンが統合したに過ぎず、その勢力範囲は極めて限定的だ。
食品スーパーは地域ごとに有力企業が群雄割拠する戦国時代のような状況にあるのだが、上位企業同士は展開エリアが異なるため、必ずしも直接対決しているという訳ではない。たとえば、首位ライフと5位のアークスが直接競合している店舗はないし、展開エリアの異なる上位企業が直接に相まみえる、といった環境にはないということだ。
こうした有力企業は着実にその展開エリアを拡張し続けているため、いつかは勢力圏が重なることにはなるのだろうが、多くの場合、強豪同士の激突はもう少し先の話となりそうだ。
関東圏で争う「ベルク」と「ヤオコー」の実力
こうした地域密着の食品スーパー業界において、ほぼ同じエリアで戦い続けながら、共に業界大手へと成長したという珍しい例が、埼玉県から発祥して大きく成長したヤオコーとベルクであろう。
ヤオコーは埼玉県比企郡小川町という県西部の田舎町から出て、埼玉県全域、北関東、千葉方面へと拡大した企業で、業界6位、営業収益5,078億円にまで大きくなった。前期決算で32期増収増益を達成した、ということだけでも、その勢いはご理解いただけるだろう。
一方、ベルクは秩父から出て埼玉全域、北関東、千葉方面とその展開エリアはヤオコーとかなり重なる。営業収益2,844億円(業界10位)であり、規模ではヤオコーの半分強ではあるが、昔からヤオコーという強力なライバルと一歩も引かない競争を繰り広げ、共に業界屈指のスーパーとなった。
収益力を示す営業収益経常利益率のランキングで言えば、業界4位がベルク、5位がヤオコーと共に上位を競っている(図表2)。巣ごもり追い風以前の2019年はベルク1位、ヤオコー2位であった。
この2社の凄さは、持続的な成長力にもある。特に、業界内のほかの食品スーパーと比較すると、その差はハッキリする。ここからは、関東の主要食品スーパー17社が、2000~2020年の20年間でどのくらい成長したかを比較したい。
【次ページ】20年間の成長率比較、「ベルク」と「ヤオコー」が凄すぎるワケ
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