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  • 2021/07/08 掲載

セブン・KALDIから見る「プライベートブランド(PB)」を口コミ・SNSでバズらせる方法

【連載】儲かる小売店の「つくりかた」

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多くの小売業が扱う自社独自のブランド「プライベートブランド(以下、PB)」は、これまで全国的な知名度を持つ食品メーカーのナショナルブランド(以下、NB)より「安い」というのが基本的なコンセプトにあった。しかし近年、そうしたコンセプトを超え、話題を集めるPBが登場してきている。話題となりヒット商品となったPBには、どのような特徴があるのだろうか。今回は、売れるだけでなく話題として、消費者の“ネタ”になるPBの特徴を解説する。
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セブン&アイ・ホールディングスの「金の食パン」は、プライベートブランド(PB)の位置付けを大きく変えた商品となった…ヒットするPBの特徴とは?
(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)


PBを180度変えた、セブンの「金の食パン」

 今から8年前の2013年4月、「セブンゴールド 金の食パン」が発売され、爆発的なヒット商品となった。この商品は、セブン&アイ・ホールディングスが展開するプライベートブランド(以下、PB)ラインであるが、この「金の食パン」は、日本のPB市場の歴史において2点の革新的なポジショニングを行ったものと考えられる。

 1つ目は、大手メーカーが展開するナショナルブランド(以下、NB)より高単価の商品であったことである。それまでのPBの基本的なコンセプトは、「NBの品質にできるだけ近づけた上で、NBよりも低価格で展開する」ことであった。

 そのため、各小売業がPBを開発する際には、そのPBの商品カテゴリーに属するNBの価格と品質を常にベンチマークとしていたのである。

 それが、この「金の食パン」は、原材料や製法にこだわり、食パンのカテゴリーに属する標準的なNBよりも高品質な上に高単価のポジションで展開された。つまり、先述の「NBの品質に近く、NBよりも低価格」という基本的なコンセプトを大胆に変えたのであった。

 2つ目は、消費者間での話題性を喚起したことである。「金の食パン」のヒットの背景には、発売当初のセブンイレブン各店頭での試食販売が功を奏しているとされている(注1)が、それだけではなく、消費者間で大きな話題となり、それによって多くの消費者が関心を抱き、トライアル購買が発生したのである。

 多くのPBは、そもそもTVなどで広告をすることもなければ、販売ルートを確保するために営業活動をすることもない。また、これらを実施しないことによる広告・販売促進費の抑制によって低価格化を実現するというのが基本戦略にある(注2)

 そのため、これまでのPBは、マスコミに取り上げられることは少なく、店舗を利用する顧客だけが知るという、いわゆる知る人ぞ知るという位置付けの商品であった。それが、「金の食パン」は、今までのPBとは異なり、大きな話題性によって大ヒットしたのである。

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話題を集め、ヒット商品となったPBには、どのような特徴があるのだろうか?
(Photo/Getty Images)

日本と海外、PBが浸透しているのはどっち?

 そもそもPBとは、米国マーケティング協会が1960年に定義したものによると、「製造業者あるいは生産者によって付けられているものと区別して、商人 (merchants)ないしは代理店 (agents)によって付けられているブランド」を指す。欧米では、Private Labelという呼び方が一般的であるが、日本ではPrivate Brandという呼び方が一般的である。

 日本国内でのPBの浸透状況であるが、全国スーパーマーケット協会、日本スーパーマーケット協会、オール日本スーパーマーケット協会の合同調査「2020年 スーパーマーケット年次統計調査報告書」によると、調査に回答したスーパーマーケット企業の73%が何かしらのPBを扱っており、販売額に占める比率は平均で7.4%となっている(注3)。ただし、このデータは、PB販売を強化している大手企業の状況が反映されているかは定かではない。


 販売者側ではなく消費者側の購買実績から見てみると、首都圏在住の約8000世帯におけるスーパー、コンビニエンスストア、ドラッグストアにおけるPBの購入比率は13%である(注4)。一方海外では、米国が18%(注5)、欧州では英国48%、独国43%、仏国38%である(注6)

 日本のスーパーマーケットの7割は何かしらのPBを扱っているが、消費者への浸透度は海外に比べてまだまだ低いことが分かる。


PBを扱う最大のメリットとは

 標準的なPBは、NBに比べて調達コストを下げ、その分、粗利を確保できるという点から多くの小売業で重宝されている。特に、消費者にとってNBに比べて見た目の違い(知覚差異)がさほどない上に、ブランド選択に強いこだわりのない商品カテゴリーでは、PBが積極的に投入されている。

 しかしながら、PBを扱っている小売業の大半は、「カテゴリーの粗利改善に少しは貢献するだろう」という認識の下、PBを品揃えに加えており、競合他社との明確な差別化基盤の1つとして捉えている企業はまだ限られている。

 つまり、「このPBが置いてあるからこの店に行きたい」というように、消費者が店舗を選択する基準の中にPBの存在を根付かせることのできる企業はまだ少ないのが現状である。

 小売業にとって、競争力の高い、ユニークなPBを展開していくことは、自社のブランド力の優位を確立させる上で重要になってくる(注7)。つまり、小売業のPB戦略は、カテゴリーの利益率改善という面だけでなく、多くの競合の店舗がひしめく中で「自社の店舗を選んでもらう」ための大きなフックの1つとして成長させていく必要があるのだ。

【次ページ】どのような特徴のPB商品が、売れるのか?
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