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小売企業にとって“品揃え”は立地戦略と価格戦略にならぶ重要な戦略と言われている(注1)。つまり、いくら立地が良く、魅力的な価格で販売していても、“品揃え”が魅力的でないと競争優位には立てないのである。今回はこの品揃えにおける注意点と効果的な品揃えのポイントについて、海外の先進的な研究事例を交えて紹介する。
品揃えの良さを決める5大要素
学術的に言えば、品揃えは「商品カテゴリー内の異なるアイテムの数」と定義され
(注2)、そうした品揃えの構成要素は大きく5つに分けることができる
(注2)。
■「品揃え」を構成する5つの要素
- (1)ブランド数
- (2)ブランド内のSKU数(在庫管理単位)
- (3)ブランド内のサイズ数
- (4)取り扱い商品全体における各商品の比率
- (5)売れ筋アイテムの取り扱い
1つ目は「ブランド数」である。誰もが知る有名ブランドから知る人ぞ知るものまで、どのようにブランドをセレクトするのかということである。
2つ目は、ブランド内のSKU数(在庫管理単位)である。ブランド1つ取ってもフレーバーや形状など、さまざまなSKUのアイテムがある。その中でどのようにラインアップを組むのかである。
3つ目は、2つ目に関連するが、ブランド内のサイズ数である。小容量から大容量まで幅広くするのか、特定の容量にフォーカスするのかの判断である。
4つ目は、小売業にとってユニークなSKUの比率である。この典型例として、多くの小売業が扱っているプライベート・ブランド(PB)が挙げられる。PBのような小売業各社の独自商品をどのようなバランスで組み込むのかという話である。
そして最後の5つ目は、多くの顧客が好むブランド、いわゆる売れ筋アイテムの取り扱いである。商品カテゴリー内で、「このブランド、アイテムは絶対に外せない」というようなものを着実に組み込むことが重要である。
小売企業各社は、この5つの構成要素を基に、ユニークかつ着実な品揃えを展開することが求められているのである。
やってはいけない品揃えとは?
ただし、小売業各社が品揃えを展開する際に最も注意しなければならないことがある。それは、「アイテム数を増やし過ぎないこと」である。
その主な理由は2つある。1つ目は、小売企業の売場生産性が悪化するからである。小売企業各社は品揃えの重要性を意識するがゆえに、ついつい商品カテゴリー内の陳列アイテム数を増やしてしまいがちである。
こうなると、売れるアイテムと売れないアイテムの二極化が進み、売れないアイテムに対するスペース確保が売場生産性の低下を招いてしまう。そして、売場生産性を上げようとすべく、アイテムの追加を行うと、また先述の二極化を繰り返すという悪循環に陥ってしまうのである。
2つ目は、品揃えに対する消費者の情報処理が追い付かなくなるからである。品揃えに対する情報処理を示す指標として、品揃えの多さを感じる「知覚多様性」と品揃えの判断のしやすさを感じる「知覚処理円滑性」の2つがある
(注3)。
消費者はたくさんの品揃えの棚を見ると、「商品がたくさんあってバラエティ豊富だね」といった気持ちを感じるかもしれない。消費者は、多くの品揃えを目にした結果、知覚多様性が強くなるのである。これは、品揃え数が多くなればなるほど強くなる傾向にある。
しかし、品揃えが多くなり過ぎると、「なんだかごちゃごちゃしていて選びにくい」や「商品が多すぎて、うざったい」という気持ちになる。これは、品揃え数がある程度を超えると商品選択の判断がしにくくなり、「知覚処理円滑性」が低下するからである。
この状態を「選択の過負荷 (Choice overload)」
(注4)と言う。この選択の過負荷の状態になってしまうと、消費者は買い物をする気分が失せてしまい、機会ロスにつながる恐れがあるのである。
このように、売場生産性だけでなく、消費者が抱く気分という点からも、品揃えにおけるアイテム数の扱いには注意が必要なのである。それでは、最適な品揃えとはどのような状態を指すのだろうか。ここからは、消費者の購買を促す品揃えのポイントを解説する。
【次ページ】陳列棚の適切な「商品点数」とは? 不人気商品も並べるべきか?
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