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小売企業にとって売上は当然重要だが、消費者の間での話題作りも非常に重要である。話題が広がればそれだけその企業が注目され、今まで利用していなかった消費者や最近利用していなかった消費者が「ちょっと行ってみようか、買ってみようか」と思う大きなきっかけになるからである。今回は、多くの企業がその活用について試行錯誤しているSNSを取り上げ、SNSで共感を得られる売場作りの在り方について解説したい。
売場の写真をSNSにアップ、2つのメリットとは
スーパーマーケットなどの多くの小売業では、店内での写真撮影を禁止している店舗が多い。その理由はさまざまあるが、1つは、競争の最前線である売場の情報が写真撮影により競合店に伝わると、品揃えや売場作りが模倣されたり、価格対応されたりするということが懸念されるためであるということである
(注1)。
しかし最近になり、写真撮影とその写真をSNSに投稿することを許容する小売業が相次いでいる。たとえば、コープさっぽろをはじめ、100円ショップのダイソー、カメラ系量販店のヨドバシカメラやビックカメラなどである。またワークマンのように撮影場所を限定したうえで推奨する小売業も見られる。
これらの対応によって小売企業が狙っていることは、売場の写真をSNSで広めてもらい、それで消費者間で話題にしてもらい、新規の来店客を促すということであろう。
また、撮影の許容することによってもう1つ考えられる効果としては、売場管理者のモチベーション向上である。売場管理者は自分自身が担当する売場の売上向上を目指して日々の業務を遂行しているが、成果指標が売上のみのままだと、「いつも通り、失敗したくないから新しいことをやらない」という消極的な売場作りが中心になってしまう懸念がある。これに対し、SNSによる話題性というものがそこに加わると、売場作りに対して「盛り上がるための工夫への努力、新しい売り方への挑戦」が期待できるのではないだろうか。
では、どのような売場だと盛り上がるのか。筆者が行っている研究成果を交えながら紹介してみたい。
SNSで“いいね”されやすい「陳列棚(ディスプレイ)」の特徴
SNS上では、店内にあるディスプレイが色々投稿されているが、ここではまず、閲覧者による共感の多いディスプレイの特徴についての分析を紹介したい
(注2)。
リサーチ会社運営のSNSから、「街中、店頭のディスプレイ、ショーウィンドウ」に関する投稿を抽出し、これらの投稿内容(写真に載っているディスプレイの特徴とコメントに載っているテキストの特徴)と閲覧者による“いいね”の数との関係を見た。
その結果、まず、ディスプレイの特徴(写真内容)の方が投稿されているコメントの特徴(テキスト内容)より、“いいね”をもらう上で効果的なことが分かった。
次に、効果的なディスプレイの特徴を見たところ、“いいね”の数の多さに効く陳列のポイントは以下の3つであった。
■SNSで“いいね”される陳列棚の特徴
- 載せる商品構成については、多くの品数による「バラエティ」が、“いいね”にはより効果的
- 載せる商品カテゴリーについては、「生鮮」と「スイーツ」が、“いいね”にはより効果的
- 陳列テーマについては、四季にちなんだ野菜を大量陳列した「季節色」や有名キャラクターのPOPをセットにした「キャラクター色」が、“いいね”にはより効果的
つまり、売場における“旬”の演出、馴染みのキャラクターを活用した演出、“選ぶ楽しさ”の演出というものが閲覧者側の共感を得やすい要素であることがこれらの結果から言うことができよう。
また、コメントの特徴(テキスト内容)でも興味深い結果がある。それは、「ポジティブとネガティブの両方を織り交ぜた内容」がより効果的だということである。ポジティブな話、ネガティブな話のどちらか一方ではなく、ポジティブとネガティブの両方の要素を含めたコメントは、公平な情報提供につながるということで閲覧者側の共感を得やすくなるのではなかろうか。
このようにSNSでより共感を受ける、つまり“ネタ”になるディスプレイの特徴がいくつかあることが分かったが、やはり「これを実践すると、実際に売れるのか」という疑問が当然わいてくるだろう。
ここからは、SNSで“いいね”を多く獲得できるような陳列棚にした場合、売上にどの程度の効果があるのかを解説する。
【次ページ】話題にされて売上もアップする売場の条件
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