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- 2020/11/19 掲載
ローソンのマーケティング組織改革、執行役員が語る日本の“残念あるある”突破法
外資系と日系、マーケティングの役割の違い
コカ・コーラ、キャドバリー(現モンデリーズ)、ケロッグなどの外資系企業でマーケティングを主導してきた大谷氏は、まず外資系企業と日系企業におけるマーケティングの役割の違いを指摘する。日系企業のマーケティングは、ともすると“営業支援”のような立ち位置で見られることがある。しかし、外資系企業のマーケティングは、1つの組織として独立し、社内で重要なポジションを占めている。
「たとえば、外資系企業のマーケティングチームのブランドマネージャーは、そのブランドにおける一国一城の主のような存在といえます。売り上げや利益が出なければ、ボーナスも出ないというシビアな責務があり、高い専門性でスピード感を持って活動しています」(大谷氏)
実際に、外資系マーケティングはジョブ型組織で、CEOの下に他の責任者と並列する形でCMO(最高マーケティング責任者)が置かれる。グローバル企業では各国にCEOがいて、その配下にもマーケティングチームがある。そのため本社マーケティング部門と別にそれぞれの国にマーケターも存在するわけだ。
「各国のマーケティングチームは、本社からのグローバルな方針をカスタマイズし、国内の顧客にマッチさせる必要があります。各国のCMOは自国のCEOにレポートする一方、地域(日本の場合はアジアパシフィック本社)にいるマーケティング担当役員にレポートするダブルハット体制です。彼らの方針が異なると振り回されるので、両者が意思疎通と連携を図っています」(大谷氏)
さらに外資系企業では、マーケターの職務内容も明確に定義され、責任分担もしっかりと分かれており、これらは「Job Description(JD)」にまとめて記載される。具体的には、「主な役割」や「ワーキングリレーション」(どんな部下や同僚を持つのか)、「職務範囲と広がりに関する追加情報」(予算やチームの規模などの情報)、「主な職責」(自分のポジションで求められる仕事と責任事項)などが明記される。
自分の仕事かよく分からないグレーゾーンの仕事も多い日本企業とは対照的な環境といえる。大谷氏は「本来、マーケティングチームは顧客を最も理解して、戦略を策定する中心的な存在です。製品・サービス開発から、広告・宣伝・PR、販売、検証まで、全体プロセスに深く関わり、成功確率が上がるようにリードしてドライブできる唯一の立場でもあります」と力強く語る。
マーケティングチームに求められる「T型リーダー」とは
コロナ禍で不確実性と複雑性が増す一方で、あらゆることがスピードアップする時代になっている。大谷氏は、現在のコロナ禍を見て、企業のマーケティングチームはどうすべきだと考えているのだろうか。「変化が激しいため、『内側の基準を外側・お客さまに当てはめる』よりも『外側・お客さまの変化を中に取り入れて自らを進化させる』ように、考え方と行動を徹底した方が良いと思います。これまで以上に、会社全体で顧客起点と顧客視点を貫く必要があるでしょう」(大谷氏)
企業トップやリーダーは強い信念を持ち、チームごとで孤立した思考を打破し、ステークホルダーをまとめなければならない。大谷氏は、「マーケティングチームも関連組織を横断する全体の指揮者、つまり『T型リーダー』として活動することが重要」と語る。
チームを横断した活動をするためには、マーケティングチームが高い専門性を持ちながら、さらに自身を磨き続けることも重要だ。ただし、日本企業の場合は注意すべき点も多いという。顧客や外部のことが見えていなかったり、部門間の連携が弱く、意思決定ができない組織も散見されるからだ。
「そもそも、マーケティングチームが戦略的なリーダーシップを発揮できる環境になっていないことも日本企業の弱点として挙げられます。たとえば、他部門から人材が集められると、寄り合い所帯的になり、出身部門に利益誘導するなど、全体最適化が難しくなります。ジョブローテーションの場合も専門性や継続性が図りづらく、人材が育成できません」(大谷氏)
コロナ禍を乗り越え、これからの時代で生き残るためには、このような日本的な課題を1つずつ解決していく必要があるわけだ。大谷氏は、一例として自社のマーケティングチームの組織改革について紹介した。
【次ページ】「ローソンはどう組織改革をした?」「強いマーケティングチームを作る3つの方法」
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