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  • 2021/10/12

TikTok運営「バイトダンス」がネット広告で“圧勝”しているワケ。斬新すぎる手法の詳細

中国の2021年上半期におけるネット広告市場シェアは、バイトダンスが45.7%を占める結果となった。ショートムービー投稿アプリ「抖音(ドウイン)」とその国際版「TikTok」の人気により、世界的にも同社の存在感は増している。抖音やTikTokの強さの源泉は、莫大な利用者数にあるが、ネット広告の世界でも従来の検索広告やバナー広告を過去のものにするほどの革新性を持っている。抖音の広告の多くは、素人がスマホで撮影したようなクオリティーで、広告のプロフェッショナルほど侮ってしまいがちだ。だが、この一見素人クオリティーの広告が業界の常識を覆し続けている。抖音の広告の仕組みと業界にもたらした3つの変化とは。

ITジャーナリスト 牧野武文

ITジャーナリスト 牧野武文

消費者ビジネスの視点でIT技術を論じる記事を各種メディアに発表。近年は中国のIT技術に注目をしている。著書に『Googleの正体』(マイコミ新書)、『任天堂ノスタルジー』(角川新書)など。

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ショートムービー広告は何がスゴイのか?
(Photo/VCG/Getty Images)


「ショートムービー」が中国ネット広告収入トップに

 中国のネット広告の主戦場が完全にシフトした。「2021ネット広告市場半年大報告」(QuestMobile)によると、メディア別の広告収入ランキングは、ショートムービー、ニュースメディア、SNS、OTV(動画ストリーミング+ライブ配信=Online TV)、検索広告の順となった。

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中国における2021年上半期のメディア別ネット広告収入。ショートムービーが断トツの結果になった
(出典:「2021ネット広告市場半年大報告」(QuestMobile))

 中国でも5年前は、グーグルと同じ業態の百度(バイドゥ)の検索広告が強く、中国のテックジャイアントを表す際に、BAT(百度、アリババ、テンセント)という言葉が使われた。しかし、検索広告市場の縮小とともにこの言葉は次第に使われなくなり、HAT(ファーウェイ、アリババ、テンセント)やATM(アリババ、テンセント、美団(メイトワン)または小米(シャオミ))という言葉が使われるようになっている。

 ネット広告市場で百度の存在感が薄くなるのと入れ替わるように頭角を表したのが字節跳動(バイトダンス)だ。2012年に創業されたバイトダンスは、AIを使ったリコメンドシステムを中核技術に、ニュースキュレーションメディア「今日頭条」、ショートムービーメディア「抖音(ドウイン)」で成功し、抖音の国際版である「TikTok」で海外進出にも成功した。

 これらのプロダクトは、利用者からも圧倒的に支持をされているが、それだけではなく、圧倒的な広告収益力を持っている。プラットフォーム別のネット広告収入シェアのランキングでは、抖音と今日頭条が1位、2位で、2つのシェアを合計すると45.7%にもなる。バイトダンス単独で中国のネット広告収入のほぼ半分を稼いでいるのだ。

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中国における2021年上半期のプラットフォーム別ネット広告収入シェア。バイトダンスが運営する「抖音」と「今日頭条」を合計すると45.7%のシェアになる
(出典:「2021ネット広告市場半年大報告」(QuestMobile))

 バイトダンスは未上場であるため財務状況は非公開になっていたが、2021年6月に2020年の財務状況を公開した。それによると、営業収入は2,366億元(約4兆円)となり、百度の2倍、テンセント、アリババの2分の1程度になっている。バイトダンスはわずか創業9年で、中国を代表するテック企業に成長した。


“素人クオリティー”でも効果は絶大

 日本では抖音を直接見る方法がないため(国際版であるTikTokがインストールされる)伝わりにくいかもしれないが(抖音広告事例は後述する)、従来の広告、特にテレビCMを念頭に置くと、かなりびっくりされると思う。まるで、素人がさっきスマホで撮影したような内容なのだ。テレビCMのように高級感のある画面づくりや演出がされているCMはほとんどない。

 たとえば、日用雑貨の広告では、ひたすらその雑貨の便利さが紹介される。ナレーションは明らかに素人で、販売会社の手の空いている人がついでにやったような手作り感がある。フルーツの広告では、産地の農家が出演して、方言の強い中国語でそのフルーツのおいしさや栽培方法を説明する。iPhoneの広告も、アップルではなく、取り扱いをしている販売店やEC業者が広告を出すため、洗練されたイメージなどまるでなく、ひたすら他よりも安く、早く手に入ることが訴求される。

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抖音の広告例。投稿ショートムービーの合間に広告ショートムービーが流れてくる(左)。素人がスマホで撮影したような映像で、日用品の利便性が紹介される。カートボタンをタップすると、商品の詳細ページが表示される(右)

 一番考えさせられたのが、冷凍焼き小籠包の広告だ。社員らしき男女2人が、ひたすら小籠包を作り、食べているだけで、商品の説明も何もしない。しかし、見ているだけでおなかがすいてきて、注文したくなってしまうのだ。

 映像広告というより、大昔に店頭で呼び込みや実演が行われていた様子を映像化した感覚に近い。広告制作のプロから見れば、抖音の広告はかなり粗雑な作りに見えると思う。しかし、コンバージョン(購入転換率)という面では圧倒的な効果をあげているのだ。これは一体どういうことなのだろうか。

【次ページ】バイトダンスがネット広告もたらした「3つの変化」

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