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人々の情報消費において動画がメジャーになる中、「ショート動画」がグローバル規模で大躍進している。「TikTok売れ」というキーワードが示すとおり、ショート動画発のヒット商品が続々と誕生するなど、この動きはビジネスパーソンにとっても無視できない。ショート動画がビジネスにもたらした変化の“核心”とは何なのか。「動画の教祖」の異名を持ち、『動画大全』を上梓したワンメディア代表取締役CEO 明石ガクト氏に話を聞いた。
聞き手・編集:本橋実紗、執筆:田邉愛理、写真:濱谷幸江
聞き手・編集:本橋実紗、執筆:田邉愛理、写真:濱谷幸江
「動画3.0」時代突入、企業がまず認識すべき大転換
前著『動画2.0』出版時から5年が経過した今、コロナ禍を経て、動画コンテンツによるコミュニケーションは世の中の当たり前になりました。個人が発信者となり、まさに“1億総クリエイター時代”とも言える現在、世界は「動画3.0」と呼ぶべき新時代に突入しています。
今後のビジネスパーソンの生存戦略、その要になるのは、間違いなく「ショート動画」です。特にマーケティングの観点から重要なのは、企業が「流通力(発信力)」におけるアドバンテージを失いつつあることです。
コンテンツやクリエイティブが世の中に生まれて人々に届けられるまでには、「調達→加工→流通」という3つのフェーズがあります。調達とは、コンテンツの内容や制作手法。加工はコンテンツの編集作業。そして流通は、コンテンツをどのチャネルに出すか。
これまで企業は、最後のフェーズである「流通」において圧倒的なアドバンテージを持っていました。「動画1.0」──つまりインターネットやSNSをはじめとした情報伝達手段が普及する以前には、作ったコンテンツを多くの人に届けるために、テレビCM、新聞広告、電車の中づり広告といったメディアを高額で買わなければならなかったからです。
これに対して「動画2.0」は、YouTubeのような動画共有サイトが台頭し、個人でも簡単に動画をアップロード・共有することが可能になった時代を指しています。これらのプラットフォームのおかげで、個人も「流通力(発信力)」を持てるようになりましたが、まだ参入障壁は残っていました。具体的にはコストの部分で、安くなったとはいえ、撮影するための一眼レフや、コンテンツを編集するためのパソコンやソフトウェアなど、何十万円かの初期投資が必要でした。
そして今、時代はショート動画を中心とする「動画3.0」へと移行しています。この新世界では、「調達→加工→流通」のすべてをスマートフォンで完結できます。その結果、企業にアドバンテージをもたらしていた参入障壁がなくなり、コンテンツ制作に関わる人口が圧倒的に増えているのです。
先月のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)では日本が3大会ぶりに優勝しましたが、日本の強さは競技人口の多さの現れでもあります。プレイヤーの裾野の広さが、その世界の頂点の高さにつながってくる。この現象は、スポーツでもクリエイティブでも変わりません。YouTubeによって動画を作る個人が増えたとき、従来の映像業界は反発し、世間にもYouTuberを軽視する空気がありました。
しかし5年経った今、YouTuberは人々の憧れの対象となり、TikTokのクリエイターはグローバルで8.7億人と言われています。さらに、TikTokはYouTubeと比較すると「見るだけ」のユーザーが少なく、半数以上は自ら動画をアップロードするクリエイターです。
テクノロジーの進化により、資本力のある組織に独占されていたコンテンツ制作が民主化され、影響力の中心が企業から個人へと変わりつつある。それが「動画3.0」時代なのです。
【次ページ】イーロンや豊田章男も使いこなす、動画3.0時代の新・経営資源
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