0
会員になると、いいね!でマイページに保存できます。
米アマゾンが2015年7月末に開始したスタートアップ企業の製品を取り扱う新しいストア「Amazon Launchpad」が順調に展開地域を広げている。アメリカ、イギリス、ドイツ、中国、フランスなどに加えて、2016年12月にはインドでも開始。2週間で400社以上のスタートアップから申し込みが殺到した。スタートアップ企業を支援することで、アマゾンの掲げる「世にあるすべての製品を取り扱うこと」がますます加速しそうだ。
スタートアップに特化したモールAmazon Launchpad
Amazon Launchpadとは、スタートアップ企業が手がける製品に特化して取り扱うストアサービスだ。製品ジャンルは電化製品、日用品、ヘルスケア製品、食品、本、映画、ゲームなど多種多様なものが含まれ、世に出ていないようなものも手に入る。
クラウドファンディングのKickstarterやIndiegogo、ベンチャーキャピタルのY Combinatorら100以上の組織や機関と提携し、製品化にメドがついたスタートアップの販売を支援する格好となる。
2015年7月に発表されたこのサービスは、その後11月にイギリスで開始、ドイツ、中国、フランスなどでも展開。2016年12月にはインドでも開始した。
The Indian Expressによれば、2週間で400以上のスタートアップ企業からの申し込みを受けたという。
Amazon Launchpadをスタートアップ企業が利用する最大のメリットは、ものづくりをはじめとする製品開発以外の煩雑な業務から解放されること。そしてアマゾンのペイメントシステムによって確実な入金が見込めること、そして何と言っても多くのアマゾンの利用者に自分たちの商品をアピールできるという点が挙げられる。
Amazon Launchpadを利用するにはアマゾン側の審査が必要だが、ひとたび採用されれば、動画や写真などを入れた購入サイトをアマゾン内に用意でき、スポンサープロダクトとしての製品紹介なども行われる。また、受注管理や出荷作業といったフルフィルメントサービスの利用など、同社の持つサービスをバックグラウンドにした手厚いサポートが受けられる。
一方、スタートアップ企業の製品を購入したい顧客にとっては、スタートアップの魅力的な製品を安心して購入できるのが最大のメリットだろう。
料金を支払ったが商品が届かない、それぞれの企業の販売サイトにクレジットカードや住所などの個人情報を登録しなければならないといった不安やリスクから解放される。在庫切れなどの場合には返金もされるようだ。
世にあるすべての製品を取り扱う
ではアマゾン側のメリットや狙いはどこにあるのか。筆者が考える理由は3つある。
1つ目は、通常の商流に乗らないようなイノベーティブな製品を取り扱うことができる点。アマゾンの掲げるコアバリューの一つに「世にあるすべての製品を取り扱うこと」がある。現在、この世にある製品はほぼアマゾンで手に入る。であれば、まだこの世にないものも取り上げるAmazon Launchは必然の流れと言える。
ネット通販ビジネスの基本はロングテールにあるので、商品点数が増えるだけでも十分大きなメリットだが、今後はもしかすると爆発的なヒット商品が誕生するかもしれない。
2つ目は、販売支援機能を単体でもっと使ってもらいたいという思惑だ。1月4日発表の同社の
リリースによれば、アマゾンが外部の小売業者に代わって商品の保管と配送業務などを行うサービス「Fulfillment by Amazon(FBA)」の取り扱い量が倍増した。
アマゾンのFBAを利用している小売業者は、日本を含む世界130カ国以上におり、それら業者の商品は世界185カ国の顧客に販売されているとのことだが、利用する事業者数も70%増加したという。Amazon Launchpadを通して、こうしたサービスの利用者をさらに広げていくという狙いもありそうだ。
こうした「機能の切り出し」は、アマゾンお得意のところと言える。実際、自社システムを間貸しするところから始めたAWS(Amazon Web Services)はそれで大成功をおさめた。このときも最初はスタートアップなどの小さな企業の利用から始まり、現在はアマゾン全体の成長をけん引するまでに育っている。
【次ページ】BtoBの分野でも存在感を高めるアマゾン
関連タグ