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今年3月に発表され、ソフトウェアエンジニアの業務を担う「AIエージェント」として注目を集めた
Devin。同ツールは現在もまだ一般公開されていない一方で、Devinの「ライバル」とされるコード生成AI「Codium AI」が注目を集めている。Devinのような「人要らず」のAIとは異なり、人間が段階的に介入するアプローチを特徴とするCodiumAI。その具体的な特徴やDevinとの比較した際の性能について解説する。
「対話」で進めるコード生成AIとは
コード生成に関して注目されるAIツールの1つが、米国のスタートアップ企業Cognitionが開発するDevinだ。自律型の「AIエージェント」であるDevinは、2024年3月に公開された
デモ動画で示した圧倒的な性能が物議を醸したが、現時点ではいまだに一般公開されておらず、私たちはまだその実力を体感することができない。
そんなDevinに先行する生成AIを提供して注目を集めているのが、2022年創業の
CodiumAIだ。
CodiumAIは、開発者がコードロジックのテストを自動的に構築するのを支援する生成AIソリューションの提供から始まったスタートアップである。
CodiumAIの共同創業者兼CEOであるイタマー・フリードマン氏は、テック業界で20年以上の経験を持つ人物。コードロジックをチェックするテストスイートの構築に苦労した
経験が、CodiumAIの創業につながった。
フリードマン氏によると、コードの脆弱性をチェックし、セキュリティを確保するためのツールは豊富にあり、またパフォーマンスをチェックするツールもある程度はあるが、コードロジックを実際に検証するツールは数少ないのが現状だという。コードを行レベルまで細分化し、それが機能するかどうかをチェックするツールはほとんどないというのだ。
この問題を解決するため同社は、生成AIを使用してこれらのテストを自動的に構築するソリューション「CodiumAI」を開発した。開発者は「Generate Tests」ボタンをクリックするだけで、プログラムが自動的にコードを分析し、一連のテストを作成する。さらに、開発者はこのコードと対話しつつ、より具体的なテストを要求することができ、それに基づいて新しいテストが自動的に作成される。
CodiumAIのコアとなるのは、「TestGPT」と呼ばれるカスタム大規模言語モデルだ。コード分析、テスト計画、テストコードの生成が可能なモデルという。
「人要らず」のAIエージェントが現実的でないワケ
CodiumAIは現在、エンタープライズの開発現場をターゲットとする施策の開発に注力している。今年7月にサンフランシスコで開催されたAIイベント「VentureBeat Transform 2024」においてフリードマン氏は「Beyond Devin: Pioneering Autonomous Software Development in Enterprise Environments(Devinを超えて:エンタープライズ環境における自律型ソフトウェア開発の先駆け)」と題したセッションの中で、コード生成ツールの
在り方を語った。
興味深いことに、フリードマン氏はこのセッションで、エンタープライズアプリケーション開発に関して、完全にAIエージェント主導のアプローチは現時点では現実的ではないとの主張を展開したのだ。
Devinに関しても指摘されるところだが、一般的にいくつかの課題があるため完全なAI主導のコード生成は難しいと言われている。
その課題の1つとして挙がるのが、複雑な問題に対するAIの解決能力の限界だ。 エンタープライズソフトウェア開発では、単純なコーディングを超えた複雑な問題解決が必要となる。AIは現状、明確に定義された問題や特定のコーディングタスクには強いが、曖昧さを含む問題や、広範な文脈理解を要する課題には弱いことが指摘されている。
また、ステークホルダーとのコミュニケーション能力の限界もある。ソフトウェア開発プロセスでは、クライアントやほかの開発者との綿密なコミュニケーションが不可欠だ。AIは技術的なタスクは遂行できても、人間同士の微妙なニュアンスを理解したり、複雑な要件を交渉したりする能力は限られている。
さらに、全体的なシステム設計の難しさも挙げられる。大規模なソフトウェアプロジェクトでは、個々のコンポーネントだけでなく、システム全体のアーキテクチャー設計が重要となるが、AIは、このような高レベルの設計決定を自律的に行う能力が不足しているのだ。
加えて、法的・倫理的な事項を考慮する能力にも疑問符がつく。特にエンタープライズのソフトウェア開発では、データプライバシー、セキュリティ、法令遵守などの考慮が必要となるが、AIがこれら複雑な要素を適切に判断し、実装することは現時点では困難とされる。
【次ページ】CodiumAIが開発した「エンプラ向け」AIとは
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