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- 2024/07/04 掲載
いま原宿が「“リアル”ガチ中華」の街と化しているワケ、中国企業の賢い日本進出戦略
中国企業が続々出店、本当の意味で“ガチ中華”の街と化す原宿
ご承知のように、原宿は日本のポップカルチャーの発信地だ。そこに2014年という早い時期に出店をしたのが、台湾の春水堂(チュンスイタン)だ。春水堂は、台湾台中市を拠点とする中国茶カフェで、タピオカミルクティーを発案したことで海外にも名前が知られるようになった。春水堂はその後も銀座、六本木、代官山という高級感のある地域に出店することで、日本でのブランドイメージを確立した。
それに続いて、台湾高雄市を拠点とする貢茶(ゴンチャ)が原宿に出店。この2つのチェーンが、日本での台湾スイーツブームを牽引していった。さらに、遅れて台湾のカジュアルなドリンクチェーン「Coco都可」(ココトカ)も原宿に出店。
ゴンチャは通行量の多いターミナル駅を中心に出店、Coco都可は下北沢や秋葉原といった若者が集まる街を中心に出店するという三者三様の戦略での展開を始めたが、共通しているのは日本人を顧客として考えていたことだ。
日本人のどの層をターゲットにするかで店舗展開の戦略が異なっているが、春水堂の「高級感」、ゴンチャの「通行量」、Coco都可の「若者」というそれぞれの戦略の重なる場所が原宿だった。残念ながら、コロナ禍でゴンチャとCoco都可は、原宿からは撤退をしてしまった。春水堂の表参道店は今でも健在だ。
「スタバ超え」狙う新興カフェの日本店舗の実態
その後も、豆花(ドーファ)やかき氷、台湾カステラの店舗が日本に出店し、台湾スイーツとして多くの愛好者を生んでいる。同時に、日本の寿司、カレー、牛丼、ラーメンなどが台湾に進出し、ほぼ味を変えることなく受け入れられている。
一方、中国と日本は近いようで遠い。好まれる味もかなり異なる。日本の町中華とガチ中華は、源流は同じでも別ジャンルの料理だ。さらに、互いの国を好ましく思わない人も一定数いる。
そのため、中国チェーンの日本進出は、日本人ではなく在留中国人をターゲットにする“ガチ中華フォーマット”の戦略が有効だった。その好例が、2023年8月に東大赤門店を皮切りに出店したカフェ「COTTI COFFEE」(コッティコーヒー)だ。
中国では「庫迪」(クーディー)という名称で、2022年10月に創業し、わずか1年半の現在6500店舗を超え、スターバックス中国の7000店舗に迫りつつあるというカフェチェーンだ。
現在、中国で売上、店舗数ともNo.1のカフェチェーンは「瑞幸珈琲」(Luckin Coffee:ラッキンコーヒー)で、1万9000店舗に上る。ラッキンの創業者である陸正耀氏と銭治亜氏の2人が、不正会計問題で辞職し、ラッキンの創業チームを再集結して起業をしたのがコッティなのだ。
コッティは古巣のラッキンに対してライバル意識をむき出しにし、大幅割引セールを仕掛けていき、この同門対決が大きな宣伝効果となり急成長。中国では大きな話題になり続けている。
在留中国人もその話題は耳にしているが、中国に帰らなければ、実際に飲んでみることはできない。そこにコッティは日本進出をした。現在の東京での店舗展開は、池袋、大久保、上野、高田馬場、早稲田、神保町、渋谷で、中国人コミュニティのある場所、留学先の大学がある場所、中国人が働くことが多いテック企業が多い場所である。
実際の店舗経営も華僑(中国籍のまま在留)や華裔(日本国籍を取得)が行うことがほとんどで、働いている従業員も在留中国人が多い。そのため、日本語や英語でも注文ができるが、中国語でも注文ができる。観察した限り、半分以上の来店客は中国語で注文をしている。
つまり、ガチ中華と同じように「中国人の中国人による中国人のため」のカフェになっている。店舗を出すことにより、在留中国人を主な顧客とし、それを見て、徐々に日本人の顧客を獲得していこうという戦略のようだ。 【次ページ】日本進出する中国チェーンが狙う顧客は「日本人ではない」賢い理由
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