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- 2021/02/10 掲載
なぜアマゾンは成長し、米トイザらスは破綻した? 両社経営の「決定的な違い」とは
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「デジタル化」の考え方のキホン
ここ数年、デジタル化を起点とした企業変革の在り方が盛んに議論されるようになったが、その必要性が指摘されるばかりで具体的な考え方はほとんど示されていない。企業はどのようにデジタル化による変革を進めれば良いのだろうか。早稲田大学ビジネススクール 教授 、早稲田大学IT戦略研究所 所長の根来龍之氏は、「現在のデジタル化の流れを作り出している要素は3つあります。それは、人工知能(AI)をはじめとする(1)『ソフトウェア化(ソフトウェアによる機能多様化と制御)』、IoTをはじめとする(2)『ネットワーク化(常時接続)』、そして、それらが促す(3)『モジュール化』です」と語る。
これらを念頭に置きつつ、デジタル化を自社の事業変革に結びつける方法を考える際、ポイントになるのが「製品・サービス自体」のデジタル化と、製品などを作る際のバックヤードの領域、すなわち「プロセス」のデジタル化を分けて考えるということだ。
たとえば、新聞社のデジタル化を製品・サービスとプロセスに分けて見ていくと、新聞記事が出来上がるまでのプロセス(記事入稿、割付、広告入稿など)はデジタル化されてきた一方、商品・サービス自体はまだまだ“紙”の新聞の発行が中心であり、デジタル化が進んでいない。こうしたこともあり、SmartNewsやNewsPicksなど、Webメディアの台頭を受け、新聞の発行部数は減少に向かっている状況がある。
新聞社と同様に、「プロセス」のデジタル化が進む一方、「製品・サービス」のデジタル化が遅れている日本企業は少なくない。なぜ、日本企業にはこうした傾向が見られるのだろうか。
既存企業がデジタル・ディスラプション対応に遅れる理由
なぜ、製品・サービスのデジタル化が課題になっているのか。根来氏は、プロセスのデジタル化は効率化競争であることが多く「日本では積極的に対応を進める企業が多かったし、今後もそうだろう」と述べる。しかし、製品・サービスのデジタル化については「経営者のデジタル・ディスラプション(デジタル化による破壊的イノベーション)の脅威への認識、つまり経営者の主観で切迫度が変わってくるため、対応が遅くなる場合がある」というのだ。
なぜ日本にはこうした傾向があるのだろうか。それを紐解くキーワードとして「破壊的イノベーション」が関係しているという。
一般的に、破壊的イノベーションというのは「これまでの技術を否定するもの」と考えられているが、それは広すぎる定義である。否定技術には、市場に出てきた時点で既存技術を代替することが明確なものと、そうでないものがある。レコードがCDに代ったのは前者だ。デジカメは後者の例だ。デジカメの最初の民生品が登場した1995年直後は、機能面から「デジカメがアナログカメラに取って代わる」とは考えられていなかったが、その5年後にはデジカメが主流となった。そして、2010年頃には、デジカメから、スマホのカメラが使われるよう変化していった。
根来氏は、「デジタル・ディスラプションによる機能の代替というのは部分的に始まり、徐々に拡大していくもので、経営者にはこのスピードを読み解く力が求められるのです」と語る。
しかし、それを正確に読み解くのは難しい。それこそが、破壊的イノベーションへの対応の難しさだ。部分的に代替されていく機能が、完全に旧技術を凌駕するタイミングを根来氏は「完全代替」と呼ぶが、「すべての技術が完全代替にすぐに至るわけではない」ため、完全代替に至るスピード、タイミングが予測しにくく、企業の対応も経営者の主観によって変わってくるのだ。
さらに、すべての新技術が完全代替へと「進化」するわけでもない。たとえば、1988年に登場したISDNは、パケット通信・回線交換データ通信にも利用できる公衆交換電話網として期待されたが、通信速度の遅さなどからADSL、そして光ファイバー回線に取って代わられ、2018年11月30日をもって新規受付を終了した。
「破壊的イノベーションは部分からはじまり、機能の拡大範囲とスピードが読めない点から企業の対応を難しくしており、結果として、既存事業者は破壊的イノベーションに対してネガティブな反応をしてしまいやすいのです」(根来氏)
【次ページ】「経営者が経営戦略を間違えるワケ」、「成長したアマゾン、破綻した米トイザらスの違いとは」まるごと解説
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