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- 2021/01/20 掲載
ドアダッシュ(DoorDash)とはいかなる企業か? なぜ料理宅配でUber Eatsを超えられたのか
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Uber Eatsを抑え、米国で最大の市場シェアを占めるドアダッシュ
新型コロナウイルスの影響もあり、アプリから注文するだけで、レストランをはじめとする飲食店の料理が食べられるフードデリバリーサービスが注目を集めている。日本ではUber Eatsや出前館といった企業が有名で、利用したことがある人も多いのではないだろうか。飲食店側としても、コロナ禍で店内飲食が制限される中の新たなチャネルとして、売上に占める割合が高まっている。また、配送を担うのも業務委託された個人であることが多く、隙間時間でお金を稼げる手段となっている点も話題になった。
そのフードデリバリーサービスにおいて、米国最大の市場シェアを占めるのは実はUber Eatsではなく、今回取り上げる「ドアダッシュ」だ。
Second Measure社が2020年11月に行った調査では、ドアダッシュのシェア50%に続き、Uber Eats(23%)、Grubhub(18%)、Postmates(7%)となっている。特に、サンフランシスコやヒューストンといった都市ではドアダッシュが50%以上のシェアを獲得しているという。
ドアダッシュは何がスゴいのか?
ドアダッシュは米国で3000以上の都市で展開し、人口の85%を網羅するという規模が強みだ。世界的に有名なUber Eatsであるが、米国で対応しているのは実は500を超える都市に留まっている。アプリの使い勝手における違いは少ないが、サービスの規模が市場シェアの差につながっていると言える。レストラン側から見ても、ドアダッシュは登録料が安く、サービス開始時の手数料が割り引きされる利点がある。Uber Eatsに比べると、中小規模のレストラン・商店にも使いやすいという特徴がある。
2012年にカリフォルニアで創業された同社は、2019年末の段階で2600人の従業員を有する規模まで成長した。米国に加え、カナダやオーストラリアに事業を展開し、39万の商店・1800万人のユーザー、そして100万人のドライバーを抱えている。
2019年でのドアダッシュの売り上げは8億8500万ドル、売上総利益は3億3500万ドルに達した。また、2020年9月末の時点では、9か月での売り上げが19億ドル、売上総利益は9億4400万ドルと劇的な成長を記録している。
その理由はもちろんコロナ禍だ。市場シェア上位4社(ドアダッシュ、Uber Eats、Grubhub、Postmates)を合計した売り上げは、2020年4月~9月の間で55億ドルに及び、これは前年同期に比べ、2倍以上となったと言われる。
こうした市場の拡大を背景に、ドアダッシュは2020年12月にIPO(新規株式公開)を果たした。時価総額は684億ドルに達し、前回の資金調達における企業評価額に比べ4倍以上の評価となったことでも大きな注目を集める結果となった。
消費者、レストラン、ドライバーに付加価値を提供するビジネスモデル
ドアダッシュは、消費者・レストラン・ドライバーの3者と利益を分け合って成立するビジネスモデルとなっている。より多くのレストランがドアダッシュのアプリに参加すれば、消費者はより多くの選択肢を持ち、より良いユーザー体験が得られる。アプリを利用する消費者が増えるに従い、レストランに加え、ドライバーにとっても収入が増える。収入を得る機会が増えれば、ドライバーの数も増え、安定して効率的な配送が実現される仕組みだ。
同社は売り上げが分配される例を以下のように説明している。まず、消費者が料理を注文し32.9ドル(料理22.4ドル、税金1.7ドル、チップ3.3ドル、ユーザー手数料5.5ドル)を支払ったとする。レストランは料理と税金から、手数料4ドルを差し引いた20.1ドルを受け取る。そして、ドライバーは配送料として7.9ドルを受け取り、ドアダッシュにとっては残りの4.9ドルが売り上げとなる。
レストランにとって、ドアダッシュを利用するのは、プロモーション施策を通して新たな販売チャネルを加えられるのと同時に、その事業運営を支援するサービスが利用できる点が挙げられる。
自社でドライバーを用意できるレストランであれば、ドアダッシュのドライバーを利用せず、少ない手数料で自前の配送網を用いることもできる。
【次ページ】クラウドキッチンなど料理宅配サービスを拡充
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