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- 2017/08/25 掲載
オムニチャネルが失敗した「3つの誤解」、このままでは小売はアマゾンに敗北する
小売はオムニチャネル化に失敗、EC勢は攻勢
アマゾンをはじめとするECの急速な拡大に伴って、ヤマト運輸が抜本的な宅配サービス見直しを進めており、宅配コストはさらに高騰し、収益が圧迫されていく中で、今後オムニチャネルビジネスはさらに厳しい状況になっていくことが予測される。
一方で、アマゾンによる「Amazon Go」の実験店舗やホールフーズ買収、楽天による楽天カフェの展開、オイシックスによるShop in Shop形態の店舗拡大など、ネットプレイヤーがリアル店舗に進出する動きが拡大しており、リアル店舗とネットを組み合わせた競争は今後さらに激化していくことが予想される。
こうした状況下において、小売各社はオムニチャネルに取り組むべきなのだろうか。また、取り組むとしたらどうすれば成功できるのだろうか。本稿ではこの2点について考えてみたい。
オムニチャネルに対する3つの誤解
オムニチャネルが失敗事例として語られる原因として、3つの誤解があると考えている。それぞれの誤解について、事例を交えて正しい捉え方を解説していくことで、今後の取り組みに対する指針を明らかにしていく。誤:オムニチャネルとは、ECと同じように新たに生まれるチャネルである
正:オムニチャネルとは、ネットを活用したリアル店舗の変化を意味する
eMarketerが2016年8月に発表した「Retail Ecommerce Sales Worldwide, 2015-2020」によると、グローバルでのEC比率は、2015年時点で7.4%に過ぎないが、2020年には14.6%まで増加すると予測されている。急速に成長するECチャネルだが、2020年でもおよそ85%はリアル店舗での売上であり、十分に大きな市場として存在している。
ただし、リアル店舗での売上のうち、スマホをはじめとするネットを通じた影響が大きく拡大していくことになりそうだ。
デロイトのレポート「Navigating the new digital divide: Capitalizing on digital influence in retail」によると、2020年にはリアル店舗の売上のうち、90%がネットから影響を受けたものになると予測している。
オムニチャネルの本質は、顧客のネット活用が変化し、リアル店舗の売上に対するネットの影響が拡大する中で、いかに自社に有利な形で取り組むかという点にあると言えよう。
オムニチャネルを、「ネットで注文する」「家に配達する」といった既存のプロセスの一部をネットに置き換えたものと狭く捉えると、顧客の変化の本質を見誤る可能性が高い。そのため、もっと広い視野で、ネットとリアルを連携して、店舗の魅力をどう高めていくかを考えることが求められる。
小売各社にとって、ECチャネルの成長は確かに脅威ではあるが、EC対リアル店舗として分かりやすい構造で捉えることができた。一方で、これから本格化するオムニチャネルの変化は、顧客のネット活用に基づく「店舗体験の質的変化」である。そのため、顧客の変化に対応できなければ、ネットを有利に活用する他社が徐々に顧客を奪っていく“ゆでガエル”状態となり、「気が付くと立ち行かなくなっていた」という状況に陥ってしまう可能性が高い。
【次ページ】オムニチャネルを成功に導く3つの「問い」
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