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- 2024/12/26 掲載
AIと暗号資産で「電力」争奪戦? 日本も他人事ではない「ヤバすぎる電力不足」の行方
連載:米国の動向から読み解くビジネス羅針盤
2030年、データセンターの電力消費は「全米の11%」に?
米国を世界のAIの首都にする──トランプ次期大統領が米環境保護庁(EPA)次期長官に指名した、リー・ゼルディン元下院議員(共和党)がこう明言したように、AIは連邦政府の後押しを受けたことで、電力消費が急増する可能性が指摘されている。米エネルギー調査企業のウッド・マッケンジーの予測によれば、AIブームにけん引されるデータセンター関連の電力需要は2030年までに毎年10~20%ほど伸び、新たに13~35ギガワットという莫大な発電能力が必要となる。
また、コンサルティング大手マッキンゼーによる2030年までの米データセンターの電力需要予測によれば、全米の電力消費に占めるデータセンターの割合が2023年の3.7%から2024年には4.3%となり、2030年には11.7%にまで達する見通しだ。
これに対し、全米の電力消費に占める暗号資産マイニング施設の割合は、米エネルギー情報局(EIA)の推計によると、2024年1月時点の見通しで0.6~2.3%に過ぎない。しかし、最大2.3%という数値は、ユタ州全体に相当するほど大きなものだ。
こうした中、トランプ次期大統領が「米国を暗号資産の首都にする」と宣言。これによりマイニング業界が活気づき、さらにはビットコインが初めて1ビットコイン=10万ドルを超えた。政府の後押しを勘案すると、暗号資産マイニング施設の電力需要は今後さらに伸びるだろう。
マスク氏のxAI、電力不足で「移動式の火力発電機」設置?
一方、イーロン・マスク氏のxAIが南部テネシー州メンフィスに建設したデータセンターは、エヌビディア製GPUが10万個稼働するという未踏の規模を目指しているが、現時点で50メガワット分の電力供給しか受けられていないという。これは、単純計算で5万個のエヌビディア製GPUしか稼働できないことになる。これでは、せっかく用意した10万個の最先端GPUの半分が宝の持ち腐れになってしまう。この電力不足に対応すべく、xAIは11月にテネシー川流域開発公社から追加で150メガワット分の電力供給を受ける許可を取得した。
さらに同社は、外部電力供給が限られてもAIデータセンターを運用できるよう、天然ガスによる移動式の火力発電機を増設しようとしている。しかし、「ガスタービンを州当局の許可を得ずに電力源として使用している」との批判が巻き起こっており、南部環境法センターなどの環境保護団体から反対を受けている。
問題になっているメンフィスのAIデータセンターは規模が他と比較して桁違いに大きいが、それでも電力供給ひっ迫を象徴している。しかも、電力供給が限られた中でAIデータセンターは、「トランプ相場」に沸く暗号資産のマイニング施設と潜在的に電気を奪い合う関係にある。このような状況において、米国は今後どのような道をたどるのか続けて解説する。 【次ページ】マイニング施設が「AIの下請け」になる納得の意味
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