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  • 2025/02/20 掲載

OpenAIがぶち上げた売上目標「5年で27倍 15兆円」、達成のカギが「軍事と日本」のワケ

連載:米国の動向から読み解くビジネス羅針盤

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中国DeepSeekショックで世界の生成AI市場が揺れる中、OpenAIが非営利組織から営利組織へと変貌を遂げつつある。そのため短期での収益化が求められており、売上目標を2024年の37億ドル(約5,687億円、見込み)から2029年までには27倍となる1,000億ドル(約15.4兆円)に増やす野心的な方針を掲げた。一方、ライバルxAIの総帥であるイーロン・マスク氏は、OpenAIの買収提案や訴訟などを通して営利化阻止に動いている。またビジネス向けの生成AI市場を見ると軟調な需要が続いており、各社、売上の低迷が報じられている。こうした中、OpenAIはどのように営利組織に転換し、売上拡大を狙うのか。
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OpenAIの売上拡大策とは
(出典元: Rokas Tenys / Shutterstock.com)

従業員も望んだ「非営利からの脱却」

 OpenAIは2015年、アルトマン氏らによって非営利組織として立ち上げられた。そのミッションは、想定外の状況でも自ら学習し、能力を応用して処理できる人間に近い知能を持つAGI(汎用人工知)を開発し、全人類の利益となれるようにすることだ。

 同社は、現在ライバルとなっているxAIの創業者、イーロン・マスク氏が名付け親かつ初期の投資元だ。マスク氏は当初、最大で10億ドル(約1,550億円)の資金提供を約束したが、自身が経営するテスラの完全自動運転(FSD)に技術を転用するため、2018年にOpenAIの買収を仕掛けた。この動きはアルトマンCEOら取締役会に阻止される。

 この結果、マスク氏の出資はなくなった。OpenAIは新たな出資者としてマイクロソフトを迎え、非営利の形態を維持。これにより、OpenAIは短期的な儲けのプレッシャーをあまり気にすることなく、「まるで人間のように回答できるLLMを作る」という明確で単純な目的に集中できたのだ。

 さらに、目標に向かって従業員の心をまとめるアルトマンCEOの強力なリーダーシップもあり、ライバルのグーグルやメタ、アンソロピックなどに先駆けて、回答の自然さ、質の高さ、多言語対応で群を抜いた製品をより早く世に送り出すことに成功した。

 一方で、OpenAIの従業員が自社株式を保有しているのは興味深い。アルトマンCEOの下でライバルに勝る製品を開発することが、株式の価値高騰というインセンティブにつながっているのだ。事実、より営利的な経営を目指し始めたアルトマン氏を、非営利組織の理想を追求する旧取締役会が2023年11月に一時的に追放した際、同社従業員770人中747人という圧倒的多数がアルトマン支持に回ったことは記憶に新しい。OpenAIは従業員からのボトムアップの形で儲け主義の経営を選んだのだ。

 OpenAIの時価総額は当時860億ドル(約13.2兆円)と推定されていたが、ソフトバンクグループによる新たな資金調達ラウンドの報道を受け、2025年1月には最大3,400億ドル(約51.7兆円)にまで膨れ上がっている。

倒産危機が一変、マイクロソフトらの投資と「厳しい条件」

 だがOpenAIが営利企業化することは、開発に携わる従業員のインセンティブとなるだけではない。LLM開発とクラウドサービス利用に毎日70万ドル(約1億円)の出費を強いられる中、生成AIを巡り多くの新たなライバルがひしめく市場において、当初の理想主義的な「全人類の利益となるAGI開発」にこだわっていては競争に取り残される。そして、AI開発に投資する資金を確保できなくなる懸念もあった。

 実際に9月27日には米ニューヨーク・タイムズ紙が「OpenAIは50億ドルの損失を抱えて倒産の危機にある」と報じた。米調査企業Similarwebがまとめた2024年12月のChatGPTの月間訪問数は前年同月から138%増加して37億回となり、急速に成長しているものの、サービス課金で経営が成り立つには至っていないのだ。

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2024年の春ごろまでは横ばい傾向だったが、その後の半年間でほぼ倍増した
(出典:SimilarwebのX

 こうした中、生き残りを模索するOpenAIの方向性を一変させる出来事が起きた。まず2024年10月に、OpenAIを一貫して支援してきたマイクロソフトをはじめ、AI向け半導体大手のエヌビディア、日本のソフトバンクを含む出資者から新たに66億ドル(約1兆円)の新規投資を受け入れた。マイクロソフトは10億ドル弱を新たに出資することで、OpenAIへの総投資額がおよそ14億ドル(約2,151億円)となる。

 これを最初に報じた米ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、投資に当たって、OpenAIは「2年以内に完全な営利企業に転換すること。それが実行できなかった場合、出資者は資金を引き揚げることができる」という厳しい条件が付けられた。

 また2025年1月には、同月に発足したトランプ政権の国家的なAIプロジェクト「スターゲート計画」で、OpenAIが中心的な役割を担うことが発表された。ソフトバンクやオラクルと最大5,000億ドル(約78兆円)を共同で出資し、中国とのAI競争に勝利することを目指す。

 ここでもまた、OpenAIには短期収益化の使命が課せられたのであり、なりふり構わぬ利益追求に走ることが予想される。そうした中、同社は2024年に37億ドル(約5,687億円)の売上を見込んでいるが、2025年にこれを116億ドル(約1.8兆円)にまで一気に伸ばすことを掲げている。2029年までには、売上を1,000億ドル(約15.4兆円)に増やす野心的な計画を持つ。

 では同社は、どのようにしてその目的を達成するのか。 【次ページ】売上爆増のポイントは「軍事」と「日本」?
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