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生成AIをはじめとした空前のAIブーム。9月9日に発表されたアップルの「iPhone16」シリーズはAI機能の搭載で注目を集めた。一方、エヌビディアなど優良AI銘柄の株価は、7月から不安定さが見られ始め、投資家の不安をあおっている。市場では、「そろそろAIバブルがはじけそうだ」という見解と、「踊り場の後さらに上げてゆく」との相反する見方が対立している。本稿では、AIブームの終焉がいつ到来するのか解説する。
AIブーム「当面続く」が支配的
米国を代表する優良銘柄を集めたスタンダード・アンド・プアーズ500種指数(S&P 500)と、AI大手を含む「マグニフィセント・セブン」の株価の動きを2023年6月から見ると、2024年からAIブームに乗ってマグニフィセント・セブンが急騰し、S&P 500をはるかに上回るパフォーマンスをたたき出していたことがわかる(冒頭の図1)。
しかし、7月からは価格変動の大きさが目立つようになり、9月3日にはAIブームをけん引してきたエヌビディア株が9.5%下落、2,789億ドル(約40.5兆円)が吹き飛んだ。これは、8月28日発表の5~7月期の売上が市場予測を上回ったにもかかわらず、売上見通しが投資家の高い期待に届かなかったためだ。
こうした中、名物アナリストである米ウェドブッシュ証券のダン・アイブス氏は押し目買いを推奨。「エヌビディアはITや世界の状況を変えた。このIT勢力図において、同社のAI向けGPU(グラフィックスプロセッシングユニット)は新たな石油となり、ゴールドとなっている」との
見解を表明している。
事実、英フィナンシャル・タイムズの8月上旬における
集計では、GPU関連投資が2024年に1,000億ドル(約14.5兆円)を超えるペースで進んでいる。アナリストの間では、「エヌビディアやその顧客、彼らの支出計画について、ストーリーが変わるようなことは
何も耳にしていない」「生成AIの投資サイクルは現在も
続いている」など、AIブームが当面続くとの見方が支配的だ。
iPhone16に大注目も…「AIは使い物にならない」ワケ
AI楽観論は主に、データセンター向けGPUやサーバなど「上流」におけるハードウェアの好調さに重きを置いている。
具体的には、AI需要の大部分が、クラウドインフラを担うマイクロソフトやメタ、グーグル、アマゾン、オラクルをはじめ、エンタープライズ向けソフトウェアやSaaSを提供するセールスフォース、SAP、マイクロソフト、パランティア・テクノロジーズなど、上流のインフラと中流のソフトウェアサービスによって
生み出されている。
対して下流の金融・製造業・医療などの業界はもちろん、一般消費者の間では現状、生成AIが浸透しているとは言い難い。なぜならブームの最中にあっても、多くの場合、AIが現行のソリューションや人間の労働の「上位互換」であると認識されているわけではないからだ。つまり、AIによってどんな価値が生まれるのか、まだ見出せていないのだ。
こうした中、AI機能「Apple Intelligence」に対応するiPhone16シリーズが9月9日発表された。文章作成や画像生成、Siriとのテキスト会話などが可能になるとして大いに注目を集めている。米国では10月に提供され、日本語版は2025年となる予定だ。
しかし、米国の有識者の間では「AIは経済全体に普及していない」(米資産運用企業マーフィー&シルベスト・ウェルス・マネジメントのポール・ノルティ氏)という
認識が支持を増やしており、データセンター向けGPUを除けばAIに対する実需要はほぼ存在していないという。
米金融大手ゴールドマン・サックスで株式調査責任者を務めるジム・コベロ氏は7月に、「AIの重要な用途が明らかにならなければ、(ブームに沸く)市場の流れは変わる」と
語った。つまり、「現段階ではAIは使いものにならない」ということだ。
ではAIブームは今後どう変化していくのだろうか。
【次ページ】2025年末までに「生成AIプロジェクトの30%」が中止か?
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