- 2025/01/31 掲載
DeepSeekが「引き金引いた」AIバブル崩壊…エヌビディアなどではない「生き残る2社」
連載:米国の動向から読み解くビジネス羅針盤
AI市場は2028年に「100兆円」が目前に
テック大手は「生き残りをかけたAI戦争」に打ち勝つべく、採算度外視でAI向けGPU(グラフィックプロセッシングユニット)や、それらを収容するデータセンターへの大規模投資を続行している。それを投資の好機と捉える大型投資案件としては、2025年1月にソフトバンクやOpenAI、オラクルらによる共同出資で、AI開発の新会社、スターゲートの立ち上げ、および最大5,000億ドル(約78兆円)の投資を発表。さらに同月、ソフトバンクがOpenAIに対し、最大250億ドル(約3.9兆円)の投資を検討していると英フィナンシャル・タイムズが伝えた。実現すれば、OpenAIに約140億ドルを投資しているマイクロソフトを上回り、最大の株主となる可能性がある。
またOpenAIのライバル、イーロン・マスク氏率いるxAIも2024年5月に60億ドル(約9,250億円)の資金を調達している。
こうした大規模投資が続く中、米スタートアップ調査企業のCrunchbaseは、米ベンチャーキャピタル(VC)の投資額全体に占めるAI企業向けの割合が、2020年の14%から、2024年1~9月時点で33%にまで成長したと発表した(図1)。
英HSBCイノベーション・バンキングによれば、この割合は2024年12月時点で42%に達したという。もちろん市場規模も拡大を続けており、米市場調査企業のIDCによれば、2024年の世界AI市場の規模を2,350億ドル(約36兆円)と推定。2028年には、これが6,310億ドル(約97兆円)にまで拡大すると見ている。
「AIバブル崩壊」を警告する納得理由
しかし、市場ストラテジストのエド・ヤルデニ氏をはじめ、米金融大手ゴールドマンサックスでAI市場分析を手掛けるジム・コベロ氏、米資産運用大手シタデルのヘッジファンドマネージャーを務めるケン・グリフィン氏など著名な有識者が「AIバブルがはじける可能性がある」と警鐘を鳴らし始めている。バブルとは、モノやサービスの価値が一時的な過熱状態に入り、実体経済から大幅にかけ離れ、いずれは投機によっても支えきれなくなる経済状態を指す。多くの場合、信用膨張を伴うのが特徴だ。利用者や購入者が対象に価値を感じなくなると、バブルははじける。米ポモナ・カレッジ経済学部のギャリー・スミス教授などは、以下のように解説する。
「生成AIがもたらす経済的な価値や労働生産性の向上は、利用者数や利用料金がどれくらい高いか、あるいは生成AIシステムを創造、維持する価格がどれほど大きいかで測られるものではない。むしろ、AIの価値はどれほどの経済的利益を生み出し、労働生産性を改善させたかで判断されるべきものだ。この面において、生成AIが多大な貢献をしたというエビデンスは非常に乏しい」
生成AIの回答は自信に満ちており、大変有能な印象を与える。だが実際に仕事をさせると、的外れな回答や間違った結果を吐き出すことも多く、実用の域に達している分野は少ない。そのため、AI採用率は図2のように全産業平均でなお10%を下回る状態だ。
こうしたことから、一部の研究者やアナリストには、AIに対する投資熱が実体経済から乖離しており、AIが生み出す価値は誇張されているように映っているのだ。にもかかわらずAI分野に対する投資はさらに膨張を続けており、彼らは「AIバブルがはじける可能性がある」と警告している。
これに加えて、DeepSeekが謳う低コスト体質や省エネ効果が開発者の主張通りであれば、熱を帯びるGPUやデータセンター、発電施設などへの投資の多くは不要となり、AIバブルは弾けてしまう。ではバブル崩壊後、どのような企業が勝ち組として生き残れるのだろうか。 【次ページ】AIバブル崩壊後も「生き残れる」あの2社とは
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