- 2025/01/31 掲載
DeepSeekが「引き金引いた」AIバブル崩壊…エヌビディアなどではない「生き残る2社」(2/2)
生成AIサービスは「Netflixなどより価値はある」のか?
米ベンチャーキャピタル大手のセコイア・キャピタルでパートナーを務めるデイビッド・カーン氏は、2024年6月に発表した論考で、「現時点では(AI大手やスタートアップが投資家に向かって)『あなた方が好む好まないに関係なく、我々はAI向けGPUを積み増します』と言っている。だが、本当に押さえるべき点は、『AIが生み出す売上はどこにあるのか』だ」と指摘。その上で、「OpenAIのChatGPT以外で、一般消費者が日常的に使っている生成AIサービスがどれほどあるだろうか。生成AIサービスは、月額利用料が15ドル49セント(約2,400円)のNetflixや、11ドル99セント(約1,800円)のSpotifyと比較して、価値のあるものなのか」と問うた。
カーン氏は「一時はGPUの供給不足が叫ばれたが、需給は改善に向かっており、入手できるまでの待ち時間も短くなった」と述べ、末端の消費や利用が伸びない生成AI市場が過熱から冷めつつあると語る。
その上で、「多くのテック大手がAI事業を拡大する中で、AI向けGPUで提供されるサービスはどんどんコモディティ化しており、独占的なうまみを享受しにくくなっている」とカーン氏は指摘。大型のAIデータセンターを運用するマイクロソフトやアマゾン、メタやグーグル、オラクルなどに悪影響が及び得ると示唆した。
AIバブル崩壊後も「生き残れる」あの2社とは
カーン氏はさらに、「AI向けGPUによる演算サービスの単価が下落することは、長期的に新規スタートアップのAI利用料金を下げ、イノベーションをもたらすだろう。一方で、テック大手のAIデータセンター建設に出資した投資家たちは損害を被りそうだ」との見立てを示した。こうした見方を裏付けるのが、セールスフォースのマーク・ベニオフCEOの発言だ。ベニオフ氏は2024年12月9日、名物IT評論家カラ・スウィッシャー氏のポッドキャスト番組に出演し、「競合他社の一部は(投資回収の見込みが薄い)AIへの支出を続け、それが高コストになり、利益率を圧迫するだろう」と語る一方で、「私は彼らの出費を利用して、自社製品をより優れたものにし、低コストで、顧客にとって扱いやすいものにしていく」と述べたのである。
つまり、費用がかさむAIデータセンター建設や運用のリスクをマイクロソフトやアマゾン、メタやグーグルにシフトしてしまうことで身軽になり、自社はAIを用いた製品改善に専念するということだ。
米ニュースサイトのビジネスインサイダーによれば、生成AIスタートアップのPerplexity AIでCEOを務めるアラヴィンド・スリニヴァス氏も、スタンフォード大学における最近の講演で、「独自のAIモデルを構築するためには膨大な資金を持ち、毎年何十億ドル(何千億円)もの損失を出し続けても平気な企業でなければならない。それは非常に膨大なコストがかかるため、弊社は他の企業のモデルを活用し、それを顧客が使いやすいように最適化することが望ましいと考えている」と語った。
ちなみに米TikTok禁止法の下で中国側から米国側への身売り先に名乗りを上げているPerplexity AIが現在、自社のAI検索に中国のDeepSeekを組み込んでいることは興味を引く。他社の投資の実を最小限の出費で利用して成功しようとしているからだ。
このように見ると、現在の「AIバブル」では、生成AIのLLM(大規模言語モデル)やAIデータセンターに巨額の投資をしたテック大手や、それらの企業に出資した投資家の多くが、投入した元手から得られるリターンは少なく、バブルがはじけた際に「負け組」になる可能性がある。
一方で、そうした既存モデルやインフラをうまく利用したセールスフォースやPerplexity AIなどがAIによるコスト削減や価値創造に成功し、たとえバブルがはじけても「勝ち組」となる未来があり得るのではないだろうか。
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