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  • 2017/11/28 掲載

西の地場スーパーが絶好調、なぜイオンを上回るのか

イズミやマルキュウ、トライアルなど

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小売業の第2四半期(3~8月)の中間決算で浮かび上がったのは、西日本、特に中国・四国地方と九州・沖縄地方での、地元小売企業の好調さだった。スーパーでは広島のイズミや山口のリテールパートナーズが通期で大幅な最終増益を見込み、福岡のトライアルカンパニーとともに進境著しく、地域の大手流通系企業の苦戦ぶりとは好対照になっている。九州はスーパーだけでなくドラッグストアにもディスカウントストアにも成長企業があり、大消費地の東名阪へ「東上」している。人口減少が全国に先駆けて始まり環境には決して恵まれていない西日本の小売企業は、なぜ強いのか?
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福岡に拠点を構えるトライアル。すでに東北や北海道まで店舗網を広げている(写真はトライアル福岡空港店)

大手流通グループの苦戦を尻目に西日本の「地域一番チェーン」が好調

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 西日本の中国・四国、九州・沖縄の17県は、人口は平成27年(2015年)10月の国勢調査によると全国の20.2%、GDPは平成26年度(2014年度)の県民経済計算によると全国の17.6%を占めるにすぎない。中央部の関東、中部、近畿の3地方を合わせたGDP70.9%の、ちょうど4分の1という経済規模である。

 だが今、この地域の小売業は地元企業の元気ぶりが目立ち、業績は大消費地の首都圏の小売企業にもひけをとらない。

 第2四半期(3~8月)の中間決算を見ると、スーパー業界ではイズミ(本社:広島市)が前年同期比で最終利益3.7倍、リテールパートナーズ(本社:山口県防府市)が最終利益13.6倍だった。

 一方、この地域で流通大手のイオングループに属する企業の業績を見ると、マックスバリュ西日本(本社:広島市)の最終利益は前年同期比14.7%の減益、マックスバリュ九州(本社:福岡市)は黒字転換したが最終利益額は3.82億円でイズミやリテールパートナーズより2ケタも少なく、イオン九州(本社:福岡市)は最終赤字に転落していた。

 今期上半期、中・四国と九州の商圏では、流通大手のイオングループは地元のスーパーに、業績面で完敗を喫していたと言える。

 「地元の小売企業強し、イオン弱し」は、今期から始まった話ではない。イズミとリテールパートナーズに、スーパーやディスカウントストアを運営するトライアルカンパニー(本社:福岡市)を加えた地元系3社とイオン系3社の業績を比較すると、それはよくわかる。

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九州、中・四国流通企業6社の営業収益と当期純利益の推移

 営業収益(売上高)では、地元系3社の順調な伸びに対し、イオン系3社は停滞が続いている。当期純利益(最終利益)では、イズミとリテールパートナーズの今期見通しが大幅増益(トライアルカンパニーは非公表)なのに対し、イオン系3社は今期は揃って減益見通し。イオン系は以前から売上規模が大きい割には利益率が悪く、赤字や赤字スレスレの年度もあった。

 中・四国や九州では、あのイオンでさえも地元のスーパーとの商戦で苦戦を強いられているのだ。それは当事者であるイオングループの現場も、トップも認識しているようだ。「地場の生産物の調達や、現地のニーズを汲み上げについては、なかなか地場のスーパーにはかなわない」とはイオン関係者の言葉だ。

 イオングループは幹部クラスが今年、何度も何度もこの地域に乗り込んでは状況を視察し、現場にハッパをかけているという。それだけ危機感を持っているということだろう。

小売の各業態に元気印の企業があり、近畿、中部、首都圏へ「東上」

 中・四国、九州の「地元の地域一番チェーンは大手流通チェーンより強し」は、スーパー業態では他に沖縄県のサンエー(本社:宜野湾市)も好例だ。前年度の売上高では沖縄電力をしのぐ県内最大企業。イオン琉球(本社:南風原町)は小売業では県内第2位に入るが、売上高はサンエーの半分以下にとどまっている。

 サンエーの当期純利益は、2016年2月期は15.9%増、2017年2月期は11.5%増で、連続2ケタ増益。沖縄県ではいまだに人口増が続いていることもあり、サンエーの成長はなおも続くのではないかと、兜町でも期待を集めたことがある。

 ドラッグストア業態ではコスモス薬品(本社:福岡市)が「西日本の風雲児」として同業大手だけでなく、スーパー業界からも恐れられている。

 1983年創業と後発で、最も東にある店舗が岐阜県なので首都圏、東日本での知名度は乏しいが、東京商工リサーチの九州・沖縄の小売業ランキングでは4年連続で首位。ドラッグストアでありながら食品の安売りが大当たりして九州から西日本一帯の商圏を席巻した。

 2017年5月期の業績は売上高12.4%増、営業利益19.2%増、当期純利益46.5%増の2ケタ増収増益。今期の会社予想は最終減益だが、売上高は前々期並みの9.4%増を見込み、勢いは衰えない。その同業では九州と山口県、四国に店舗展開するドラッグストアモリ(本社:福岡県朝倉市)も、2017年3月期の売上高は1,248億円で前年同期比8.9%増の成長をみせている。

 大黒天物産(本社:岡山県倉敷市)はディスカウントストア「ディオ」「ラ・ムー」、100円ショップ「バリュー100」などを西日本一帯で展開し、PB(プライベートブランド)もある。2016年5月期に当期純利益25.2%の大幅増益で注目され、2017年5月期も5.2%の増益だった。ディスカウントストアでは九州にもサンドラッグ傘下のダイレックス(本社:佐賀市)という成長企業がある。2017年3月期の売上高は1,799億円で前年同期比9.8%増だった。

 そうした九州、中国・四国地方が地盤の好調小売チェーンは、地域で一番の好業績の余勢をかって近畿、中部、首都圏への「東上」も図っている。

 イズミは1996年に兵庫県丹波市に進出。トライアルカンパニーはすでに東北、北海道まで店舗網を広げた。リテールパートナーズの店舗は広島県どまりだが、コスモス薬品は岐阜県まで進出。大黒天物産は中国、近畿を中心に東海、北陸、さらに2012年に長野県松本市が本社の西源を傘下におさめ長野県、新潟県にもラ・ムーの店舗網をひろげている。ダイレックスは九州、中国・四国だけでなく、兵庫県、新潟県、長野県、山梨県、埼玉県にも出店している。

中・四国や九州は決して景気が良いわけではない

 大手の全国チェーンをしのぐような好業績をあげる元気な小売企業がどんどん出現中とは言っても、中国・四国地方、九州地方は、リーマンショック後に全国に先駆けて個人消費が回復し景気がテイクオフしたかと言えば、実態はまったくの正反対である。地方経済は上昇できるのは大都市圏の後、下降・着地するのはそれより先という意味で「旅客機の後輪」によくたとえられるが、この地域は典型的なそれである。

 昨年9月から今年9月までのデータでも、たとえば食品スーパー3団体が合同集計する月次の「食品スーパー売上高」の対前年同月比伸び率が全国平均より良かった月は、九州は昨年9月と今年9月の2回、中国・四国は昨年10月の1回だけで昨年12月から10ヵ月連続でマイナス圏に潜り込んでしまった。

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食品スーパー売上高の地域別増減率

 販売統計を見ると、食品スーパーに限らず小売業各業態とも、この地域はおおむね消費の盛り上がりを欠き、首都圏に対して遅れをとっている。そのため九州や中国・四国地方が本拠の小売業も、調子がいい企業ばかりではない。

 たとえば2016年度の売上高は、鹿児島県のスーパーのタイヨーや、福岡市が本社で全国的に名を知られるものの「旧勢力」に属する百貨店の岩田屋三越、家電量販店のベスト電器、ディスカウントストアのミスターマックス・ホールディングスは減収だった。コンビニのポプラ(本社:広島市)は2014年にローソンと提携し、その傘下に入った。成長している企業はどちらかと言えば、チェーン展開を始めてからの歴史が浅い「新興勢力」に属する。個人消費の不振が続く中、新興勢力が旧勢力の養分を吸い取って成長していると言ってもいいかもしれない。

【次ページ】中国、四国、九州は「マイナスサム・ゲーム」の先進地域
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