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主要電子マネーの決済金額が5兆円を突破した。国内では、取扱額トップのイオンの「WAON」と決済件数トップのセブン&アイ・ホールディングスの「nanaco」の流通系電子マネーがその成長を牽引しており、JR東日本の「Suica」をはじめとする交通系電子マネーも大都市圏を中心に決済件数が伸びている。一方で、流通系電子マネーの中には、グループ内での成長に陰りが出ているところもあり、今後はグループ外での利用をいかに加速できるかが成長の鍵となるだろう。今回は、主要電子マネーの現状と今後の個人的な注目ポイントについて紹介したい。
「WAON」と「nanaco」はグループ内での浸透が進む
日本銀行が公表している「決済動向(2017年1月)-PAYMENT AND SETTLEMENT STATISTICS (January 2017)」によると、2016年1月~12月の電子マネーの累計決済額が5兆円を突破した。
同データは、プリペイド方式のうちIC型の電子マネーが対象で、調査対象は8社。具体的には、楽天Edy(楽天Edy)、鉄道会社などが発行する交通系(JR九州の「SUGOCA」、JR西日本の「ICOCA 」、パスモの「PASMO」、JR東日本の「Suica」、JR北海道の「Kitaca」)、イオンの「WAON」、セブン・カードサービスの「nanaco」から提供されたデータを集計したもの。また、交通系は、乗車や乗車券購入に利用されたものは含んでいない。
国内の決済額の4割以上を占め、国内の電子マネー市場を牽引するイオンの「WAON」は、発行枚数6,400万枚、約28万6,000カ所で利用可能と発表されている(2017年2月時点)。
イオンにはグループ企業のイオン銀行が発行する「イオンカード」があり、「WAON」同様に、よりお得な買い物ができるよう各種施策が展開されていることから、顧客への「WAON」、イオンカードの浸透率は高く、イオン店頭でのキャッシュレス化につながっている。実際、グループ内でのキャッシュレス化は「WAON」スタート後、さらに加速。現在、7割ほどの決済比率となっている。
「WAON」では、かねてから「地域カード化」にも注力。現在約130種類の「ご当地WAON」を発行している。「WAON」を通じて、地域の活性化や観光振興などに役立ててもらう取り組みを全国各地で強化している。「ご当地WAON」は、全国どこで利用しても0.1%が自治体や地元の団体に寄付され、地域の振興や活性化に貢献するモデルだ。イオンでは、香川県高松市の「めぐりん」、北海道苫小牧市の「とまチョップWAON」などの活用事例をPRしてきた。
「nanaco」は地域の金融機関と連携した取り組みを実施
一方、もっとも利用件数が多い「nanaco」は、2016年12月末の月間利用件数が1億7,600万件となり、2015年12月の1億5,900万件から増加している。
販促もセブン-イレブンやイトーヨーカドーの店舗のスタッフを中心に積極的に展開。「nanaco」利用者はサービス開始当初、若年層を中心に広がったが、現在はより幅広い年齢での利用が進んできていると思われる。
独自カードの発行は、イオンの「WAON」で積極的に行われているが、「nanaco」でも2016年10月28日より、全国46都道府県において、各都道府県限定でセブン-イレブン店舗のみで申し込みできるオリジナルデザインのご当地限定「nanaco」カードを順次発行。
また、中国銀行の「晴れの国カード」、福井新聞社と福井銀行が共同で展開する「JURACA(ジュラカ)」、中部しんきんカードと提携した「CHUBUCA(チュブカ)」など、金融機関と連携した取り組みも目立つ。
交通系電子マネーのJR東日本の「Suica」の2017年1月末現在の月間利用件数は約1億3,629万件となり、対前年111.8%の成長となっている。また、利用可能な場所は、約68万2,010カ所(端末台数)となり、2015年12月末の約61万4,600カ所よりも着実に増えていることが見て取れる。
「Apple Pay」開始で注目の「モバイルSuica」会員数は、2016年8月末時点で約380万人だったが、2017年1月末で約428万人となっており、50万弱の増加となった。
2016年10月のiPhone開始当初の注目度の高さから伸び率は堅調に推移しており、現在も大きな予算を投下したPRを継続しているが、その数がどう推移するか、注目されるところだ。
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