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  • 2016/01/07 掲載

世界最大のICカードイベント「Cartes」で、世界中の企業が注力していた分野があった

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世界最大のICカードのイベント「Cartes Secure Connexion(カルト・セキュア・コネクション)2015」(以下:Cartes)がフランス・パリのノール・ヴィルパント見本市会場で開催され、現地を取材する機会を得た。ICカードの世界的なイベントとあって、国際的な決済端末ベンダーが精力的に展示を行ったが、近年は端末の価格競争も厳しくなっており、グローバルで展開するプレイヤー自体の差別化は難しくなっている。今回は、Cartesで見えてきた世界の決済端末事情について紹介する。
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フランス・パリで開催されたCartes 2015の様子。2015年は、135カ国から1万5,090人が参加した(2014年は1万9,156名)。海外からの来場者は77%となるなど、テロの影響は受けたが、国際的イベントというのは変わりがない

日本の№1企業パナソニックでもトップ10には入らず

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 ICカードやカードビジネス関連で世界最大のイベントと言われるCartesだが、近年は欧州におけるICカードのイノベーションは落ち着きつつある。また、VisaやMasterCardといった国際ブランドはスペイン・バルセロナで開催されている「Mobile World Congress」の方に重きを置き、秋には米国・ラスベガスで「Money20/20」が開催されるため、出展企業の数はやや寂しくなっている。

 筆者も節目の30周年ということで、主催者へのインタビューなどを含めて参加を決断したが、渡航前の段階でも例年視察に訪れていた人が見合わせるなど、イベント自体も過渡期を迎えているようだ。そういった状況にさらに追い打ちをかけたのは11月13日にパリで発生した悲劇的なテロだ。これにより、ブース出展予定の複数の企業が参加を取りやめた。ここでは名前を伏せるが、日本や韓国の企業がパリへの渡航やブースでの人員配置を見送っている。

 そうした状況の中、精力的に出展を行ったのは決済端末ベンダーだ。日本における決済端末ベンダーのシェアを見ると、パナソニックが圧倒的で、オムロンソフトウェア、東芝テックなどがこれに続く。国産メーカーが強いのが日本なのだ。

 一方、世界的な決済端末ベンダーがこぞって出展を行ったCartesをみると、日本企業の参加はみられない。Ingenico(インジェニコ)、Verifone(ベリフォン)、PAX Technology(パックス・テクノロジー)、Castles Technology(キャッスル・テクノロジー)、Spire Payments(スパイア・ペイメンツ)など、国内の企業にはそれほど馴染みのない企業が大きなブースを設けていた。

 The Neilson Reportによると、日本メーカーの最上位であるパナソニックですら世界で13位となっており、世界的には前述のような企業のシェアが高いのが現状だ。

アプリと連携する決済端末、ウォレット、ギフトカード、プリペイドカード機能など

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IngenicoはOS「Telium Tetra(テリウム・テトラ)」をPR。QRコードの読み取りも可能
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VerifoneはApple Payの読み取りが可能な端末を展示
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PAX TechnologyはスマートフォンとBluetoothで接続する「KDC500」を展示。EMVコンタクトレスの読み取りに対応
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Castles Technologyの多機能端末「SATURN1000」
 Cartesの視察で感じたことは、端末ベンダーの多くが「オムニチャネル」に力を入れていたことだ。業界最大手のIngenicoでは、カード端末機のシステムと統合されたOS「Telium Tetra(テリウム・テトラ)」をグローバルで発表している。

 端末はDesk、Lane、Moveの各シリーズがあるが、すでに提供を開始。アプリケーションについては、2016年から本格的な提供を開始する予定だ。加盟店は、ウォレット機能、ギフトカード、プリペイドカード、会員機能など、数多くのサービスをマーケットプレイスから入手して提供することが可能だ。Ingenicoでは、開発者向けのハッカソンを開催し、ベンチャー企業をサポートしている。

 Ingenicoのグローバルにおける最大のライバルであるVerifoneでは、オンラインとオフラインを統合したソリューションをPRしていた。同社が次世代の製品として展示した端末はインターネットに接続され、利用者のモバイルデバイスと同期させることができるという。また、広告や販促メッセージを提供するソリューションもCartesに合わせて紹介した。

 近年、グローバルで急成長しているのが中国のPAX Technologyだ。同社では、中国をはじめ、北米や欧州、南米など、グローバルに端末を提供している。決済端末としての機能は他のメーカーと比べて大きな違いはないが、各市場において、サービス、決済端末のクオリティ、顧客の要求に応えるフレキシビリティを重視して取り組んでいるという。

 日本市場への展開を強化するのはCastles Technologyだ。日本では、マクドナルドにおいてNTTドコモが開始した「dカード」のポイント端末、イズミのゆめタウン、ディズニーストアなどで採用があり、FeliCaへの対応など、ローカライズを図っている。

 Cartesでは、磁気ストライプカード、EMVコンタクト(接触)、EMVコンタクトレス(非接触)等の読み取りが可能な多機能端末「SATURN1000」を展示。米国では、同コンセプト的に近い「Poynt」が299ドルで提供され話題となっているが、決済端末ベンダーとしてのノウハウがあるため、機能や価格の競争力はあるそうだ。

【次ページ】グローバルプレイヤーにとっての日本市場の特殊性
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