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スマートフォンに「QRコード」を表示させて決済する「QRモバイル決済」が本格化している。中でも加盟店のPOSやタブレットなどで決済させる、アリババ傘下アントフィナンシャルの「Alipay(支付宝)」とテンセントの「WeChat Pay(微信支付)」の導入店舗は広がりを見せた。特にAlipayはローソンが全店舗で導入したことでも話題を集めた。「爆買い」が衰えたとはいえ、日本を訪れる国別観光客数で中国は依然としてトップ。そこで今回は中国人向けインバウンド決済サービスの現状から、その消費動向を読み解いていこう。
日本国内でも火花を散らす「Alipay」と「WeChat Pay」
日本でも「Alipay」や「WeChat Pay」が、コンビニエンスストア、百貨店、ディスカウントストア、家電量販店、ホテルなどで導入が目立つ。
「Alipay」は、ユーザー数4.5億人強、中国国内で200万以上の加盟店で利用可能なサービスだ。海外でもクロスボーダー決済、免税、対面決済などのサービスを、70以上の国と地域で10万以上の加盟店に導入している。
「Alipay」は、O2Oプラットフォームとしての役割も果たしており、預金サービス「Yu'ebao(余額宝)」、個人の信用がスコア化される「芝麻信用」、トップ画面から利用者がジャンルを選んで来店すると特典が受けられる「Koubei(口碑)」なども展開している。
一方、テンセント(騰訊控股有限会社)のグループ会社であるテンペイ(財付通)が提供する決済サービスが「WeChat Pay」だ。中国で月間8.49億人以上のアクティブユーザーを誇るSNS「WeChat(微信)」のユーザー向け支払いサービスで、同国でのトランザクション数は1日5億回以上と言われる。
たとえば総合ディスカウントストアの「多慶屋」では、2015年の「Alipay」の最大のリアルイベント「W12」(アリペイのフェア)に合わせる形で「Alipay」決済を導入した。
2015年12月は同店全体で推定2万5,000人の中国人客が来店し、免税手続件数は約8,300件、免税基準額を超える「Alipay」決済は約3,900件にのぼり、免税販売件数のうち46.98%を占める結果となるなど、想定以上の結果となった。
また、続く2016年の「W12」ではKOL(Key Opinion Leader)による送客で想定以上の来店があったという。さらに、2016年12月、2017年1月に「Alipay」で決済した人に対し、割引施策を実施。その成果もあり、両月の「Alipay」の決済実績は各1億6,000万円となり、中国の旧正月(春節)にあたる2月の5日間でも3,700万円の実績を記録している。
1日約800人来店のローソンでのAlipayの平均利用件数は?
こういった事例を見ると、「Alipay」や「WeChat Pay」を導入した多くの店舗が売上アップにつながっていると思うかもしれない。
しかし、実際はこれから利用を伸ばすフェーズになると言えそうだ。たとえば、全店で「Alipay」を導入したローソンでは、2017年1月24日~2月5日までの13日間の利用状況を集計して発表。累計利用件数が5万2,000件を超えたと発表している。
数字だけをみると非常によく利用された印象を受けるかもしれないが、1日あたりの平均は4,000件、店舗あたりでは1日0.3件であり、店舗平均で1日800人前後が来店することを考えると、その比率はとても高いとは言えない。
「Alipay」利用者が決済している店舗については、おそらく特定の地域やエリアに偏っており、局地的な売上だろう。
また、店舗からは気になる声も聞こえてくる。たとえば、「WeChat Pay」は国内の複数の店舗が導入しているが、現状、多くの店舗が売上に結びついていないというのだ。
また、WeChatでは店舗にビーコンを設置することにより、利用者は信号が出ている付近でシェイクすれば、その中に入った人に情報を届けることができる「シェイク」機能を提供しているが、導入している店舗からは「ほとんど振られていない」という声も聞こえる。
【次ページ】日本の大手カード会社がAlipayやWeChat Payの開拓をしない理由
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