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ゴールデンウィーク真っ最中。レジャーや旅行でも、通勤・通学でも、鉄道に乗ったらけっこう利用するのが「駅ナカコンビニ」だろう。ほとんどはJRや私鉄の関連会社が運営しているが、最近ではセブン-イレブン、ローソン、ファミリーマートのコンビニ「ビッグスリー」が、駅ナカコンビニの「看板」を激しく奪いあっている。その中で、どの陣営にも属さず“独立独歩”を貫いているところもあり、駅という絶好の立地を活かし、その販売成績がビッグスリーにまさるとも劣らない、隠れた優良企業もある。
駅の屋根の下の「駅ナカ」はコンビニにとっては絶好の立地
駅の改札外、改札内の「売店」というと、畳2~3畳分(3.3~5.1平方メートル)ぐらいの狭いスペースに従業員1人が入って、新聞や雑誌や飲み物を売っているタイプは、以前からよく見かける。
中には有人改札口に隣接し、駅員が販売員を兼ねているところもある。これを専門用語で「カウンター型」といい、たとえばJR東日本では「キオスク」、それ以外のJRでは「キヨスク」という名称。1987年の国鉄民営化以前は「鉄道弘済会」が運営していた。
それとは別に、近年はJRでも私鉄でも、構内に食品や日用品の陳列棚があり、カウンターに複数の店員がいて、セルフサービス方式で接客するコンビニや、そのミニタイプの店が入る駅が増えている。どちらも一般に「駅ナカコンビニ」と呼ばれている。
経済産業省の分類では売場面積30平方メートル以上が「コンビニエンスストア」だが、そのように売場が比較的広く、誰もがイメージするようなタイプを専門用語で「ウォークイン型」という。
一方、売場面積が30平方メートル以下で、商品も食品や飲料、雑誌や傘やパンストなど緊急性のある商品に絞り込まれたミニ・コンビニを、専門用語で「ステップイン型」という。駅ナカコンビニにはその両方のタイプがあり、カウンター型も含めて統一ブランドになっている場合もある。
駅ナカコンビニはなぜ「有利」なのか
駅にコンビニがある位置は、その大部分が自由に出入りできる改札外。もともとは通路上か、待合所、手荷物預かり所、事務室、駅長室、物置、自転車置場などだったところ。鉄道会社が駅のスペースを有効活用して収益化しようと場所を提供し、ほとんどはグループ内の物販子会社が店舗を運営している。
地代やテナント料は無料か格安。光熱費も鉄道会社経由で安くできる。開店時間は早くても5時前後の始発列車から。閉店時間は遅くとも0時すぎの最終列車まで。24時間営業ではない分、いま高騰している人件費コストも節約できる。とはいえ、店の前にトラックがつけられず、駅前広場から人力で商品を運ばねばならないが、市街地にあるコンビニに比べれば、ランニングコストは確実に低くなる。
しかも、駅構内は人の通行が多い絶好の商業立地。通勤・通学客が多い大都市圏はもちろん、駅前商店街が「シャッター通り」と化した地方都市でも、駅の中には病院の行き帰りの高齢者や登・下校中の高校生など、いつも人がいる。温泉のような観光地があれば、なおよし。新幹線の駅、特急が停まる駅、新幹線開通前は特急が停まっていた駅なら、駅ナカコンビニの損益分岐点はまずクリアできるだろう。
この好立地を、新規出店戦略を進めてきたセブン-イレブン、ローソン、2018年8月にサークルKサンクスを統合するファミリーマートという「コンビニ業界ビッグスリー」が見逃すはずがない。
駅ナカコンビニは鉄道会社の物販子会社がビッグスリーのフランチャイズに加盟し、その看板を掲げる動きが急速に進んでいる。たとえば2010年以降、JR西日本は「ハート・イン」からセブン-イレブン・ハートインに、東急は「トークス」から「ローソンプラストークス」に、名鉄は「サンコス」から「ファミリーマート・エスタシオ」に、近鉄は「K-PLAT」からファミリーマートに、店の看板が順次掛け替わっている。
「駅ナカコンビニ」 一覧表 |
JR |
JR東日本 | 「ニューデイズ」 JR東日本リテールネット | 独立系。小型店は「ニューデイズ・ミニ」、駅売店は「ニューデイズ・キオスク」 |
JR東海 | 「ベルマート」 東海キヨスク | 独立系。オフィスビルや病院にも出店 |
JR西日本 | 「セブン-イレブン・ハートイン」 ジェイアール西日本デイリーサービスネット | 2014年にセブン-イレブンと提携し転換中 駅売店は「セブン-イレブン・キヨスク」 |
JR九州 | ファミリーマート JR九州リテール | 2010年から旧am/pm、「生活列車」をファミリーマートに転換 |
JR四国 | セブン-イレブン JR四国 | 2014年にセブン-イレブンと提携 |
JR北海道 | 「セブン-イレブン北海道ST」 北海道キヨスク | 2010年に提携先をサンクスからセブン-イレブンに変更。札幌市営地下鉄駅も出店 |
首都圏私鉄 |
東急 | 「ローソンプラストークス」 東急ステーションリテールサービス | ローソンと提携。駅売店は「toks」、コンビニは「LAWSON+toks」だが、一部駅ホーム売店もローソンプラストークス |
西武 | 「トモニー」 西武鉄道 | 小型の駅売店も含めて2007年にファミリーマートと全面提携 |
京急 | セブン-イレブン 京急ステーションコマース | 小型の駅売店の一部もセブン-イレブン京急ST。店名に「京急ST」とつく |
東京メトロ | 「ローソンメトロス」 メトロコマース | ローソンと提携。従来型の駅売店「メトロス」も多数ある |
東武 | ファミリーマート 東武商事 | 食品が中心の小型店舗の店名は「アクセス」 |
小田急 | 「オダキューマート」 小田急商事 | 独立系。スーパーと融合した業態の「オダキューOXマート」もある |
京成 | ファミリーマート コミュニティー京成 | 北総線、地下鉄東西線の駅にも出店。 |
相鉄 | ファミリーマート 相鉄ステーションリテール | 旧am/pm。店名が「ステーションイスト」の小型店舗もある |
京王 | 「K-Shop」「コミュニティストア京王ストアエクスプレス」 京王ストア | 独立系。酒類卸の国分系の中小コンビニ「コミュニティストア」との共同出店もある |
関西圏私鉄 |
阪急 | 「アズナス」 エキ・リテール・サービス阪急阪神 | 独立系。ミニ・コンビニの店名は「アズナスエクスプレス」 |
阪神 | 「アズナス」 エキ・リテール・サービス阪急阪神 | 独立系。阪急、阪神の経営統合に伴い2008年にアンスリーから転換 |
京阪 | 「アンスリー」 京阪ザ・ストア | 独立系。ミニ・コンビニの店名は「アンスリーSAM」 |
近鉄 | ファミリーマート 近鉄リテーリング | 愛称「近鉄エキファミ」。旧am/pmの店舗もあった |
南海 | 「アンスリー」 南海フードシステム | 独立系。一部店舗は「ナスコプリュス」。駅売店は「ポプラ」 |
中京圏、福岡圏私鉄 |
名鉄 | 「ファミリーマート・エスタシオ」 名鉄産業 | ファミリーマートと提携。金山駅には成城石井もある。 |
西鉄 | ローソン 西鉄ステーションサービス | ペットボトル入り「八女茶」などオリジナル商品あり |
ポプラの「生活彩家」(都営地下鉄)、「ポプラ」(大阪市営地下鉄)や、酒類卸の国分系の「コミュニティ・ストア」(京王)のような中小コンビニも駅ナカに参入しているが、少数派。大阪市営地下鉄にはポプラがファミリーマートとともに出店していたが、契約がローソンに乗り換えられ、今年3月から順次転換中である。
【次ページ】独立系の一番星、JR東日本「ニューデイズ」の実力
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