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  • 2014/11/13 掲載

日本が誇るフェロー・CTOに学ぶノウハウ定義書 「誰かがやらねばならないなら自分がやる」安川電機

安川電機 取締役常務執行役員 技術開発本部長 小笠原 浩氏

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フェロー、CTOの高い業績の背景には、独自の考え方、思考・行動の原則=ノウハウがある。これらのノウハウには、企業の創造力、イノベーション力を高めるパワーがある。そして、日本を元気にするヒントがある。本連載では、フェロー、CTO自身に、自らのノウハウを語っていただく。第13回は、安川電機 取締役常務執行役員 技術開発本部長 小笠原 浩氏に聞いた。小笠原氏は、同社のモーションコントロール事業を牽引し、産業自動化プロトコルで業界標準を作り上げ、安川電機の研究開発全体をリードしてきた。
これまでの連載


挑戦的な仕事に手を挙げる

――産業用ロボット生産台数世界1位、モーションコントロールでも世界首位の製品を有する企業で、技術開発をリードされてきました。また産業自動化プロトコル-メカトロリンクで、業界標準を確立してこられました。このような高いパフォーマンスを上げるため、日ごろ意識していることはあるのでしょうか。

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安川電機
取締役 常務執行役員
技術開発本部長
小笠原 浩氏
【小笠原 浩氏(以下、小笠原氏)】
若いうちは、チャンスは平等に回ってきます。それを見逃さないこと。自分の役割を自分で規定することなく、挑戦的な仕事に手を挙げることが重要ではないかと思います。

 私は1979年入社ですが、それよりも前の4、5年、当社は新入社員を採用していませんでした。そのため新人のころは、背伸びしないとできない仕事もやらされました。このような仕事には、「誰かがやらなければならないならば自分がやる」というつもりで挑戦しました。

――挑戦的な仕事、背伸びしないとできない仕事で、力は伸びましたか。

【小笠原氏】
伸びました。私の同期は、新人の頃に、皆、先ほどお話した環境で、挑戦的な仕事をしてきました。実はその内の半数近くが、現在役員や関連会社の社長になっています。背伸びしないとできない仕事に挑戦することで、能力が高められる左証になるのではないかと思います。

 「誰かがやらなければならないならば自分がやる」ことで能力が高まるメカニズムがあります。まず「誰かがやらなければならないならば自分がやる」と考えれば、無理だと思うことも、どうすればできるかと発想できるようになります。また、誰かがやらなければならないことは、必ず周りが助けてくれます。そして、そういう挑戦的な仕事は、必死で考えますから自分を育ててくれます。このようなことを続けていれば、次からそのテーマは、自然と自分に回ってきて、その分野を深められます。

――なるほど。確かにそうですね。ご自身の実践された「誰かがやらなければならないならば自分がやる」仕事で、印象に残っているものはなんでしょう。

【小笠原氏】
メカトロリンクなど、その1つです。これは、産業自動化のオープンプロトコルで、業界標準であるIEC(国際電気標準会議)の規格を取ることができました。メカトロリンクでは、これを公開するかどうかという課題があり、自分がそれをできる立場にありましたので、公開によって社会やお客様にメリットを与え、また当社がビジネス的にも意味があるという見通しを立て、公開を進めました。

――「誰かがやらなければならない仕事」だったのですね。

【小笠原氏】
そうです。技術の公開ですから、社内でいろいろと議論もありました。しかし、顧客にも自社にも貢献すると考え、手をあげた訳です。公開となると、単によい技術を開発するだけでは済まなくなる。賛同者を増やし、必要な金や人材を獲得し、また、当社が全面に出ずに行うべきことを進めるといったことが求められます。こういうことを、一つ一つ確実に進めていきました。

――手を挙げた後は、何から始めればいいのでしょう。

【小笠原氏】
先ほども言いましたが、まず「誰かがやらなければならないならば自分がやる」と考えること自体が重要です。このように考えると、無理だと思っていたことも「どうすればできるだろう」と考えるようになります。極端な話ですが、仮に技術者が経理部門に行けと言われたとします。自分の役割は経理ではないと考えればそれで終わりですが、「誰かがやらなければならないなら…」と考えれば、研究開発テーマのマネジメントで日頃から数字を詰めている。だったら、管理会計なら何とかなる、と考えるでしょう。会社の中での話です。無茶な話はありません。また、誰かがやらなければならない仕事ですから、スタートさせれば、周りが助けてくれます。チャンスを逃さず、挑戦すべきです。

――それ以外に、手をあげた後の進め方で重要なことはありますか。

【小笠原氏】
どうやって進めるか、必死で考え、見通しを持つことが必要です。研究開発は、ファクトを積み上げ、不足するところはジャンプし、成果を上げなければなりません。今どのようなファクトがあり、どこをどうジャンプさせるか、考え抜いて見通しを持つ。そしてそれに従って進め、新たなファクトがわかれば軌道修正することです。また、絶対できないことが何かを証明することも重要です。これは、早くやらなければならない。たとえば産業用ロボットは6軸ですが、6軸では実現できない動きがあります。これは理論的に証明できる。そうすると、目的達成のために近似するなど、手段が考えられるようになるのです。

――なるほど。

【小笠原氏】
また、知っている人に聞く、できる人にやってもらうことも重要です。一人でできることは限られている。私は若い頃、プラントのシステムをやっていましたが、図面で考えたことが現場にどういう影響を与えるか、常に現場と議論しながら進めました。下手な設計をすると、現場から怒られてしまいます。そんな中で、色々な人の力を借りることを会得できたと思います。

 社外の知見を活用することも重要です。たとえばモーションコントロールの世界は意外に狭いものです。テーマや課題によって、行きつくところは決まっている。競争相手の動向や特許、関連する大学の研究テーマなどの情報に着目していれば、どこにどのような情報があるかわかるようになります。一方で、ロボット用のコントロールは世界中が研究していますから、どのような顧客の課題解決に、どのような技術を用いるかという視点で見ることが必要です。

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