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  • 2012/03/05 掲載

小売業の生き残りが本格化、「客単価アップ」から個店単位の「来客アップ」強化へ

流通経済研究所 研究員 池田満寿次氏インタビュー

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生活者の価値観が多様化し、なかなかモノが売れなくなったといわれる現代社会。さらに少子高齢化が進み、市場自体が縮小傾向にあるという厳しい現実の中で、日本の小売業はまさに生き残りをかけた事業展開を迫られている。そうした中、ソーシャルメディアやビッグデータといったIT武装でこの苦難を乗り切る企業も増えてきた。日本の小売業の課題とその解決策のヒントについて、食品/日用雑貨など消費財製品を扱う小売業の流通に詳しい財団法人流通経済研究所 研究員の池田満寿次氏にお話を伺った。

小売業が抱える3つの課題

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財団法人流通経済研究所
研究員
池田満寿次氏
──食品中心のスーパーマーケット(以下、スーパー)や衣料・家電・おもちゃなどの商品も取り扱う総合スーパー(GMS:General Merchandise Store)、ドラッグストアやコンビニエンスストアといった事業者が抱えている課題について、お聞かせいただけますか。

 やはり何といっても国内の人口構造が転換期に来ていることです。いわゆる少子高齢化ですが、この状況をもう少し詳しく見てみると、人口が減り、一方で高齢化が進むということは、消費のボリュームゾーンである若年層、たとえば若い主婦層などが徐々に減っていくということです。つまりは需要そのものがシュリンクしていきます。

 2048年には国内人口が1億人を割り込むことが予測されていますが、こういうトレンドが見えている中で、各事業者は戦っていかなければなりません。これが今の小売業が抱える大命題です。

 一方、特にチェーンストアを展開するスーパーやGMSの場合、1980年代から2000年初頭にかけて、既存店の売上だけでは業績を大きく向上させることが難しくなってきました。そこで新規出店数を積極的に増やし、その新規店の売上で全体の業績をカバーするという構図で成り立ってきたのです。このやり方も今では難しくなってきています。

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──それは新規店を出しても、売上が上がらなくなった、ということでしょうか?

 いえ、そういうことではありません。国内には“新規出店できる場所が相当限られてきた”ということです。新規店を出せるような立地条件のいい場所が少なくなってきているのです。

 こうした小売業の経営者の課題感を如実に物語るような新聞広告が2011年12月に掲載されました。

 スーパーやディスカウントストアなどを展開する某チェーンストアが“出店用地を求めています”という全面広告を日経本紙に打ったのです。この会社は増収増益基調の堅実な事業活動を展開されているところですが、そういう会社でさえ、立地条件のいい場所を探すことが難しくなってきています。業界紙ではなく一般紙に出されたこの広告は、業界的にもかなり話題になりました。

 つまり出店場所を探すのが困難になるほどに小売業のお店が飽和してきているのです。ニュースなどでもよく目にする“オーバーストア”という状況ですね。2000年以降、新規出店のペースは年々落ちてきており、チェーンストアによっては早くも手詰まってしまったところもあります。少子高齢化に加えて、こうした課題感が業界全体にはあります。

 最近では小売業の海外市場への進出も増えていますが、こうした流れも大きな視点で捉えれば、新規店を出して全体の売上を支えるという従来戦略の延長戦上に過ぎません。当然国ごとに細かい戦術の違いはあると思いますが、基本的には出店用地を求めて国外にも目を向けた、ということです。

 さらに近年では、ドラッグストアやディスカウントストアが食品を、あるいはコンビニエンスストアが生鮮野菜を取り扱い始めるなどの動きが出ています。これはスーパーやGMSにとっては大きな脅威です。今まで別の業態だと捉えていた小売業とバッティングし始めている。言い換えれば、業態の垣根を超えての顧客獲得競争が熱を帯び始めているのです。

──少子高齢化、出店場所の減少、曖昧になる業態の垣根。これら3つの大きな課題を現在の小売業は抱えていると。

 そういうことです。これからの小売業は、今までのようなやり方ではもはや通用しなくなってきているといえるでしょう。

【次ページ】“有効な打ち手”を講じている企業はごく限られている
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